『存在のない子供たち』ほか、いまだから観たい<レバノン映画>4選

中東映画と聞いて、思い浮かべる作品はなんだろうか。『桜桃の味』(97)でパルムドールを受賞した巨匠アッバス・キアロスタミ監督作や同じくイラン人のアスガー・ファルハディ監督作『別離』はべルリン国際映画祭<金熊賞>やアカデミー外国語映画賞を受賞。最新作『誰もがそれを知っている』はハビエルバルデムとペネロペ・クルスの夫婦共演作として話題を呼び活躍の場を広げている。

そんな中東映画の中でも、 <レバノン>発の映画が近年立て続けに日本で公開されている。<レバノン>という国にフォーカスして見えてくるのは、その地で生きる人々の風習や直面している問題、抱える想い。それらが距離、人種を越えてわたしたちの心に響く珠玉の作品をピックアップした。

『存在のない子供たち』(7/20(土)、シネスイッチ銀座ほか全国公開)

是枝裕和監督作『万引き家族』とともに昨年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門で 並び称され審査員賞・エキュメニカル審査員賞の2冠、アカデミー賞で外国語映画賞にノミネート。両親を告訴するという衝撃的なオープニングから心を鷲づかみ、物語をひと息に過去へと遡らせ、その理由と経緯をつぶさに描き出し、世界を揺るがした衝撃作。

戸籍がなく学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で朝から晩まで働き暮らしていた少年ゼイン。 唯一の支えだった大切な幼い妹が強制結婚させられ、怒りと悲しみから家を飛び出すが ゼインを待っていたのは、さらに過酷な“現実”だった。果たしてゼインの未来とは―。

苛烈なまでの中東の貧困と移民の問題に一歩もひるむことなく果敢に挑んだのは、レバノン出身のナディーン・ラバキー監督。3年のリサーチ期間を経て、主人公のゼイン他ほとんどがストリートキャスティングで見いだされリアリティを追及し撮影が行われた。世界的にも高い評価を受け、全世界へと広がり続ける絶賛の波がついに日本へ押し寄せる。

『セメントの記憶』(日本公開:2019 年)

シリア政府軍を抜け、レバノンに亡命した映像作家ジアード・クルスームが、ベイルートの超高層ビルの建設現場で働くシリア人移民労働者の受難を映したドキュメンタリー。監督自身が、映画は終わらない戦争による破壊と再建、そして 自分たちが住む世界と同じ地平の中に戦争で故郷を失い国外で傷つき労働している人々の現実を伝える。

移民労働者の姿と建設ラッシュに沸くベイルートの美しい街並み、戦争で破壊された労働者の祖国の映像を交互に映し出し、戦争と建設のイメージ、破壊と創造の概念、喪失と悲しみの記憶を詩情豊かに描く。これまで世界60カ国100以上の映画祭に正式招待され、34の賞を受賞している。

『判決、ふたつの希望』(日本公開:2018年)

判決、ふたつの希望(字幕版)

ふたりの男のささいな口論が国を揺るがす法廷争いに―。人間の尊厳をかけ、彼らが見つけた新たな一歩に世界が震えた感動作。長編4作目となるレバノン出身のジアド・ドゥエイリ監督が、自身の体験に基づいて描く、第90回アカデミー賞でレバノン映画として初めて外国語映画賞にノミネートされた。

主演のカエル・エル・バシャが第74回ベネチア国際映画祭で最優秀男優賞を受賞するなど、国際的に高い評価を獲得。キリスト教徒であるレバノン人男性とパレスチナ難民の男性との口論が裁判沙汰となり、やがて全国的な事件へと発展していく―。どこにでもあるような一般人同士の小競り合いが裁判に発展し、やがて国をも動かしていくさまをサスペンスフル&エモーショナルに描いた注目の人間ドラマ。

『キャラメル』(日本公開:2009 年)

キャラメル [DVD]

10年前の作品になるが『存在のない子供たち』のナディーン・ラバキー監督の長編初監督作品『キャラメル』も紹介したい。監督のほか脚本・主演の3役務め、長編デビュー作ながらカンヌ国際映画祭<監督週間>で上映される快挙を遂げた作品で、レバノンで生きる女性たちを繊細かつユーモアで包み描いたヒューマンドラマとなっている。

不倫の恋に悩むラヤール、フィアンセに過去を隠すニスリン、美しい女性に心惹かれるリマ、女優志望のジ ャマル、人生を諦める初老のローズ。ニスリンの結婚式を前にそれぞれ5人の人生が動き出す。

『存在のない子供たち』:(C)2018MoozFilms
『セメントの記憶』:(C)2017 Bidayyat for Audiovisual Arts, BASIS BERLIN Filmproduktion
『判決、ふたつの希望』:(C)2017 TESSALIT PRODUCTIONS – ROUGE INTERNATIONAL – EZEKIEL FILMS – SCOPE PICTURES – DOURI FILMS PHOTO (C) TESSALIT PRODUCTIONS – ROUGE INTERNATIONAL
『キャラメル』:(C) Les Films des Tournelles – Les Films de Beyrouth – Roissy Films – Arte France Cinema

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