『22年目の告白』大ヒット。逆リメイクは戦略か?

(C)2017 映画「22 年目の告白-私が殺人犯です-」製作委員会

国内興行収入ランキングで快進撃を続けていた『美女と野獣』を止めた藤原竜也・伊藤英明競演作『22年目の告白-私が殺人犯です-』。実は韓国映画のリメイクであることはあまり知られていません。

リメイクの“普通”

リメイクというと一般的には二パターンのどちらかになります。

一つは古典のリメイク。
日本のいちばん長い日

オリジナルへのリスペクトが強い人からは反発もありますが(この辺りは原作モノと同じですね)、当時の技術では創ることができなかったもの、表現できなかったことができることもあります。

古典=古めかしい映画ということで敬遠されていた作品にスポットライトが当たり、その頃の監督・俳優への再評価にもつながったりする効果もあります。ヒットはもちろん批評の面でも成功したものでいえば、邦画でいえば三池崇監督『十三人の刺客』、原田眞人監督『日本のいちばん長い日』などがあり、洋画で直近の作品だと『荒野の七人』をリメイクした『マグニフィセント・セブン』などがあります。(『荒野の七人』自体が黒澤明監督の『七人の侍』のハリウッドリメイクなのですが)

もちろん映画史に燦然と輝く『ベン・ハー』のリメイクに挑んだ2016年版のリメイク版のように大爆死してしまい日本では劇場未公開になってしまったものも映画史の暗部には死屍累々と転がっていたりもしますが…。

もう一つがいわゆる“ハリウッドリメイク”。
パワーレンジャー ポスタービジュアル

(C)2016 Lions Gate TM&(c) Toei & SCG P.R.

もうすぐ公開の『パワーレンジャー』も日本の“スーパー戦隊”シリーズの映画化ですし、スカーレット・ヨハンソンの『ゴースト・イン・ザ・シェル』も押井守監督のアニメーション『攻殻機動隊』のリメイクです。少し前の話ですが『リング』や『呪怨』等々Jホラーのリメイク百花繚乱の時期もありましたね。

これは“非英語圏”のものでクオリティが高く、秀逸なアイデアだと思われたものを、英語圏でリメイクして世界に広く知らしめようというパターンです。使われている人口でいえば中国語のほうがはるかに上ですが世界に広く頒布しているということで言えば、英語がやはり強くまずは英語圏版となります。『GODZILA』もそうですし、マーティン・スコセッシ監督が念願のアカデミー賞を獲得した『ディパーテッド』も香港映画『インファナル・アフェア』のリメイクです。こう書くとアイデアの原産国がハリウッドに“いいところだけ”持っていかれているような気がしますが、これでオリジナルのクリエイターが注目を浴びることもあります。実際に『リング』シリーズの中田秀夫監督や『呪怨』シリーズの清水崇監督はこれをきっかけにハリウッドで監督デビューを飾りました。

逆リメイクは戦略か?その意外な答え。

自国の古典のリメイクであっても、ハリウッドのリメイクであっても、新しい市場、広い市場の開拓という点では同じです。生々しい話ですがお金の流れの事情を考えるとそういう話になるのもわかります。ところが『22年目の告白』などのように市場規模のことから考えると逆パターンのように見える作品があります。

先日ワーナー・ブラザーズ映画のマーケティング本部 部長に話を聞く機会がありまして、『22年目の告白』の公開直後ということもあってその逆パターンのリメイク企画についての質問を直接ぶつけてみました。

22年目の告白―私が殺人犯です―

(C)2017 映画「22 年目の告白-私が殺人犯です-」製作委員会

というのもワーナー・ブラザーズは『22年目の告白』以外にも韓国のカン・ドンウォン主演の『超能力者』をリメイクした『MONSTERZ モンスターズ』、イーストウッドの名作西部劇をリメイクした『許されざる者』と逆リメイク企画を続けて発表しているからです。

ところが答えを聞くと意外な答えが返ってきました。続いたことで戦略があるように見られ、そう聞かれることも多いとのことでしたが、実際にはまず企画として十分に成り立ち・通用するかどうかを重視していてリメイクになったのは結果論ということでした。

だから、宣伝の上でも直接的に謳うことは少なかったのですね。

外野からいろいろと穿って見てしまいましたが実際にはそういうことではなく、あくまでもアイデアの部分を重視しての企画進行ということで、そこから考えると基本的な考え方は古典のリメイクやハリウッドリメイクと同じなようですね。ちなみに『許されざる者』のリメイクは非常に友好的にスムーズに企画が進んだそうです。イーストウッドと渡辺謙との信頼関係もあったのかもしれませんね。イーストウッドのブレイク作『荒野の用心棒』は黒澤明監督の『用心棒』を勝手にリメイクして後々になって大揉めに揉めたことなんて言うトリビアを知っているとなんとも不思議な感じもします。

オススメ逆リメイク。

そういうことなので、オリジナルの映画のことをそこまで意識していない作品もあるとのことですが、ここでいくつかおすすめの逆リメイク作品をオリジナル映画とともに上げていきましょう。

『22年目の告白‐私が殺人犯です‐』は韓国映画『殺人の告白』をもとにしていますが、オリジナルのほうを見ていてもあっと驚くリメイクアレンジがあって楽しめます。藤原竜也VS山田孝之の演技合戦が楽しめる『MONSTERZ モンスターズ』は カン・ドンウォン主演の『超能力者』のリメイクですが、山田孝之のキャラクターの属性についてはリメイク版の方がはっきりと描かれていてモンスター“ズ”という複数形のタイトルになっている意味合いが強くなっています。日本に限らずアジア各国でリメイクされたのが『怪しい彼女』。オリジナル版、多部未華子主演の日本版に続いてベトナム版も日本で公開されました。

あやしい彼女

巡り巡ってすごい展開になったのが日本でも大ヒットした『私の頭の中の消しゴム』。これはもともと『Pure Soul~君が僕を忘れても~』という日本の連続ドラマを基にした映画でしたが、映画のヒットを受けて同じタイトルのスペシャルドラマ化として日本で放映されました。ドラマが海外で映画にそれがまた日本でリメイクされてそれがさらにドラマにリメイクされなおされました。

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韓国を中心にアジア圏の作品のリメイクが多いのですがハリウッド映画のリメイクもあります。先ほどの『許されざる者』や『ゴースト・ニューヨークの幻』をリメイクした『ゴーストもう一度抱きしめたい』、日米ともに芸達者俳優が集まった『サイドウェイズ』やオリジナル同様疾走感あふれる『ヘブンズ・ドア』(オリジナルはドイツ映画『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』)。フレンチノワールの傑作を日本に置き換えた『死刑台のエレベーター』などもあります。どれもオリジナル作品にも触れやすい作品なので見比べてみるのもいいですよ。

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もう一つのリメイク方法に翻案というものがあります。原典を意識しつつアレンジという言葉の範疇には収まらないほど時代やキャラクター社会的背景を大きく変えたものというのが単純な定義だと思います。そのなかで日本はもちろん全世界的に最も翻案されている人といえばイギリスが世界に誇る大劇作家ウィリアム・シェイクスピア。なんだか急に大きな話になってしまいましたが黒澤明監督の『乱』は『リア王』、『蜘蛛の巣城』は『マクベス』の翻案作品だったりします。

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また三谷幸喜に舞台作品の代表作『12人の優しい日本人』はタイトルからも見てわかる通りアカデミー賞作品賞・監督賞にノミネートされた名作『12人の怒れる男』から。そしてパニック映画ブーム真っただ中に作られた『サブウェ・パニック』を基に作られたのが“踊る大捜査線シリーズ”のスピンオフ映画第一弾『交渉人真下正義』。地下鉄ジャックという設定からラストのもどんでん返しで危機を脱するラストまで全面的にオマージュという名の愛をささげた作品となっています。

交渉人 真下正義

リメイクというとネタ不足、アイデア不足のわかりやすい証拠のように見えてしまい、何かとネガティブな言われ方をされがちですが、その一方でオリジナル作品のアイデア・クオリティが時代や国境を越えて通用すると惚れ込んだ人たちの思いも感じ取ってもらえるといいのではないかなと思いました。基本的に映画を分け隔てなく愛する人たちの選んだ道の先にリメイク作品はあります。

(文:村松健太郎)

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    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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