『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』アナ雪ファンも必見の理由とは?

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本日2019年3月15日より公開の映画『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』が実に面白い映画でした!

一見すると“お堅い歴史もの”のような印象もあるかもしれませんが、現代にも通ずる男性社会や政略結婚の浅ましさを描きつつも、従姉妹どうしの尊い関係性が描かれたドラマでもあり、スリリングなサスペンスとエンターテイメント性も存分に用意されていた作品だったのです。

その魅力を以下にたっぷりとお伝えします!

1:魑魅魍魎がはびこる男性社会の中で強い女性が孤軍奮闘!
これは王室権力バトル映画だ!

まず、本作のあらすじを簡単に説明しましょう。15歳で結婚し18歳の時には早くも未亡人となったメアリー・スチュワートは母国であるスコットランドに戻ってくるのですが、そこで勢力を拡大していたプロテスタント教徒は「女性君主など神の意志に反する!」と主張し、国務大臣もカトリックであるメアリーのことを快く思ってはいませんでした。一方、隣国のイングランドにもメアリーが戻ってきたという知らせが届き、25歳で即位したエリザベス1世は周りから早く結婚して世継ぎを産むように迫られることになります。

このメアリーとエリザベスはいわば「生まれた時から王位継承を争う」という間柄。彼女たちは望むと望まざるとにかかわらず、自らの王位を守るための“政略結婚”をしようとします。そこに当時の男尊女卑的な差別感情や宗教的な価値観も加わり、ふたりは理不尽とも言える圧力をかけられるばかりか、自らの権力を守ろうとする者たちによる卑劣な策略に巻き込まれることになるのです。

本作が切ないのは、「王位のための政略結婚を余儀無くされる」「そのために不幸の歯車が回っていく」ということ。言うまでもないことですが、結婚は本来であれば愛し合うふたりが一生を添い遂げるための幸せな行為……のはずなのに、本作の物語における政略結婚は“王位継承のため”という目的ばかりを優先し、最も大事なはずの“愛”は二の次になっている、または最初に愛があったとしても権力争いのせいで真っ当な感情までもが脅かされる事態に陥ってしまうのです。加えて、その政略結婚がさらに周りの嫉妬や浅ましい策略を生み、彼女たちは女王という立場であるのにも関わらず(だからこそ)、精神を病んでもおかしくない様々な悲劇に見舞われてしまう……そんな“権力があるがゆえ”の切なく苦しい物語が紡がれていくのです。

その王室内での権力争いの構図はサスペンスとして“スリリング”でもあり、複雑な関係性や感情が入り混じるドラマとしても間違いなく“面白い”です。そうした形容は残酷でもある物語に対しての言葉としては適切ではないのかもしれませんが、「男性社会の中で孤軍奮闘する女性」の姿が勇ましく描かれている、登場人物に思いっきり感情移入して応援したくなるという要素もあるのも事実。ここにこそ、本作を多くの方にオススメしたい一番の理由があるのです。

もっと下世話な感じに表現するのであれば、「畜生どもが跋扈する男性社会で女性が戦う政治劇!」「女性が王位の座につくことを快く思っていない輩の陰謀や内乱に巻き込まれてしまう王室権力バトル映画!」とも言えます。そのようなエンターテインメント性を期待しても、裏切られることはないでしょう。

2:ジェンダー論やLGBTへの言及も!
現代にも通ずる間違った価値観が描かれていた!

本作がユニークかつ誠実であるのは、16世紀を舞台にしながらも現代にも通ずるジェンダー論やLGBTへの理解(または不理解)も描かれるということです。例えば、長髪で髭を生やし屈強な肉体でありつつも女装好きで侍女たちとキャッハウフフと楽しく遊んでいる男性の部下が登場したりもするのです。彼の見た目は女装パフォーマーかつプロレスラーであるレディビアードさんみたいでした。

さらに、メアリー・スチュアートの2番目の夫となるダーンリー卿はバイセクシャル(ゲイ)であったという説があり、今回の映画ではそこにも焦点を当てています。彼は性格イケメンなプロポーズをして、しっかり愛情を持ってメアリーと(はじめは)接していたことも事実ではある(だろう)けれども、実は本当は男性が(も)好きであり……ということも、切ない物語を加速させていくことになります。

そして、本作は前述したように男尊女卑的な差別感情や宗教的な価値観もはびこる中、女王として精神的に強くあろうとするふたりの姿をひたすらに追うことになり、そこにはフェミニズムの精神も表れています。事実、監督のジョージー・ルークは「これは男性優位の時代が舞台ですが、ある意味で今の時代の話でもあります」という文言に続き、以下のようにも語っていました。

「この映画は女性の力についての話であり、また重圧の中で女王として多くを犠牲にしたふたりの女性についての話でもあります。今の女性の生き方に影響を与えるには、歴史的人物を語ること、感情的、歴史的、政治的に、女性の生き方についての真実をうまく伝えるところから始めなければならないと思いました」

この言葉通り、本作における政治の世界で生きる女性の姿は現代に通じています。政略結婚を優先する同調圧力がはびこる一方で、女性が君主になること自体が批判的にみられるという男性社会の構図は浅ましく、不幸の歯車が回っていく物語そのものも辛く苦しいもの。それは現代の女性もいかに辛苦を背負わされているのかという暗喩とも、普遍的な女性の気高さや精神的な強さをも示していると示しているとも言えるのです。これは故・高畑勲監督によるアニメ映画『かぐや姫の物語』にも通じていますね。

そうした“現代にも通ずる”要素はジェンダー論やLGBTについても同様です。16世紀という時代には言うまでもなく現代のような知見は流布しておらず、不理解があったことも取り返しのつかない悲劇に繋がっていくのですから。本作は総じて“古くて間違った価値観”を描くことで、それから脱却しつつある現代がいかに幸せであるのかを説いている、あるいはまだ問題が完全に解消されていない現代の皮肉にもなっているとも言えます。

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3:『アナと雪の女王』を彷彿とさせる要素とは?
尊い従姉妹同士の関係性があった!

本作でさらに重要であるのは、従姉妹同士でもあるふたりの女王がお互いに顔を合わせることなく、それぞれが孤軍奮闘しているということ。“終盤のある1シーン”を除いて、彼女たちは見聞きした情報だけでお互いを意識したり嫉妬したりしており、物理的な距離だけでなく“心の距離”に置いても、ふたりは離れ離れのままなのです。

この「血の繋がっている王位継承者の女性ふたりがお互いにずっと顔を合わせない」という要素をどこかで聞いたことがないでしょうか。それは「戴冠式までお互いにドアを隔てて距離を置いていた王家の姉妹ふたり」を描いていたあの有名なアニメ映画……そう、『アナと雪の女王』を彷彿とさせるではないですか!

その劇中における「雪だるまつくろう」を歌っていた切ないパートが、本作『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』では全編に渡って続くと言っても過言ではないのです。「ふたりを早く会わせてあげて!」「ふたりとも本当はお互いに大好きなんだから幸せになって!」と願わずにはいられなくなることも、両者で共通していました(もちろん良い意味で)。

また、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』のふたりの女王は全くと言っていいほどに愚かしい存在として、はたまたまた単純な悪人、または善人として描かれることはありません。お互いが常に“最善手”を打ち続けているような論理的な思考を持ち、どこか斜めに構えて客観的に問題を捉えているようなところもあり、“感情に流されない”冷静さをも持っていたはずのふたりが、“激情をついに表に出す”瞬間が訪れた時……涙を流してしまうという方はきっと多いことでしょう。“似た者同士”でもあるふたりの女王が、それぞれ書き割りでも記号的でもない、人間味のある魅力的なキャラクターとして感じられると言うことも『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』の大きな魅力。これもまた『アナと雪の女王』に通じていますね。

ちなみに、邦題は『ふたりの女王』となっていますが、原題は「Mary Queen of Scots」となっており、あくまで主人公はメアリーのほうであることが暗に示されています。エリザベスの出番はそれほど多くなく、もっと言えば脇に追いやられているかのような印象すらあるのですが……これもむしろ重要な意味を持っているとも言えます。詳しくはネタバレになるので書けないのですが、エリザベスが“物語の主軸にはいない”こともまた、本作がいかに切ない物語であるかを際立たせているのです。

余談ではありますが、2010年になってから、エリザベスがメアリーに対して女王の同志として好意を感じていたことがわかる新たな手紙が発見されたのだそうです。その内容は、エリザベスが同じ島でメアリーと共に統治を行うことに想いを巡らせ、ふたりを分断させた争いや嫉妬に対して悔い、メアリーが土壇場で和解を求めたために対話を求めるように使いを送ってほしいとまで願ったことが書かれていたのだとか。しかも、映画本編で描かれた“終盤のある1シーン”も(それ自体は史実にあったと言う根拠はなく、ほぼ創作ではあるのですが)ふたりがお互いに送った手紙のやり取りをもとに構築されていたそう。このふたりの尊い関係性は、れっきとした事実と言って良いでしょう。

さらに余談ですが「Cousin」を単に「いとこ」とするのではなく、「お従姉様(おねえさま)」と訳した字幕が、メアリーからエリザベスへの敬意と、切なく気高くもある関係性をよく表していて感服しました!やはり尊い!尊いです!

さらにさらに余談ですが、メアリーとエリザベスの関係をマンガ『ジョジョの奇妙な冒険』で知ったという方も多いのではないでしょうか。こちらではエリザベスが明確に卑劣な手を使う悪女として描かれている(その他の作品でもメアリーとエリザベスはライバルとして妬みあう女同士とされることが多い)ので、本作との尊い関係性とのギャップに良い意味で驚けるのかもしれませんよ。

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4:シアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビーの豪華共演!
その役作りも尋常じゃない!

本作のさらなる目玉は、『ハンナ』や『レディ・バード』のシアーシャ・ローナンと『スーサイド・スクワッド』『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のマーゴット・ロビーが豪華共演しているということでしょう。

シアーシャ・ローナンの役作りへの意気込みは半端なものではありません。

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シアーシャ・ローナン 

役に挑むまでの5年間はエリザベス1世や宮廷についてみっちりと勉強し、“終盤のある1シーン”の撮影のためマーゴット・ロビーとはリハーサルの時でも顔を合わせることをせず、フランス語以外は全編を通してスコットランドアクセントで話しているなどなど……そのアカデミー賞ノミネート常連女優の実力と執念は、スクリーンからも存分に伝わってくるでしょう。同時に、シアーシャ・ローナンは侍女役の女優たちと劇中と同様に実際に楽しく交流していたそうで、自分たちのことをルネサンス時代のスパイス・ガールズだと思って“ワナビー”を歌ったりして遊んでいたほか、ミュージックビデオを撮って遊んでいたこともあったそうです。

マーゴット・ロビーは、もっとも崇拝している女優のケイト・ブランシェットが『エリザベス』(1998年の映画)でエリザベスを最後に演じていたこともあり、その期待値の高さにたじろいでいたそうです。

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マーゴット・ロビー 

しかし、ジョージー・ルーク監督から「ただの若い女性としてエリザベスを演じてほしい」と頼まれたことをきっかけに、エリザベスに親近感を持って理解できるようになったとも語っています。その甲斐あって、彼女の一挙一動と表情には普遍的な悩みを持つ、親しみやすくも愛おしいひとりの女性としての魅力を大いに感じることができました。前述した通りその出番は決して多くはないのですが、マーゴット・ロビーが登場するシーン1つ1つに強烈なインパクトがあるため、全体の存在感は決してシアーシャ・ローナンに引けを取りません。

さらに面白いのは、ジョージー・ルーク監督は本作の構想に当たってマイケル・マン監督の『ヒート』についてよく話していたそうで、いくつかのシーンでその影響を受けていたと明言していること。『ヒート』のアル・パチーノとロバート・デ・ニーロの姿は、本作のシアーシャ・ローナンとマーゴット・ロビーに重なるところもあるのかもしれませんよ。

その他、『ダンケルク』のジャック・ロウデン、『女王陛下のお気に入り』のジョー・アルウィン、『メメント』のガイ・ピアース、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のデヴィッド・テナントなど、脇を固める男性陣も豪華です。英国王室のイケメン(でも中身はヒドい男かも……)および美女たちにうっとりしたいという方も必見ですよ。

5:アカデミー賞ノミネート納得の豪華絢爛さ!
眺めているだけで楽しめる!

本作は映画としてのルックも格段に優れているということにも触れなければなりません。それもそのはず、第91回アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞と衣装デザイン賞にノミネートされています。しかも、『エリザベス:ゴールデン・エイジ』で衣装デザインを受賞し、エリザベス1世の衣裳を熟知しているアレクサンドラ・バーンが今回も担当しているのです。その荘厳な王室の内装、豪華絢爛な衣裳の数々を眺めるだけでも存分に楽しめるでしょう。

なお、メアリーのヘアメイクには、エリザベスとの対比のために燃えるような赤色を選んでいたそうです。はじめはペールブルーであったその衣裳は映画が進むにつれて色を濃くしていくことで、美しく変化していくメアリーの“旅”をも演出していったのだとか。言うまでもなくエリザベスのほうの衣裳にも細部までこだわりがあり、そこには当時に存在が信じられていた海の怪物も縫い付けられていたそうです。

さらに、音楽を『メッセージ』や『女神の見えざる手』のマックス・リヒターが務めています。荘厳かつ、華々しさだけでなく寂寥感も入り混じったような劇伴は、映画の物語への没入感をさらにさらに高めてくれることでしょう。

何よりも重要であるのは、こうした見た目(と音楽)の豪華絢爛や荘厳さが、気高いふたりの女王を追った物語とは不可分であるということ。ただ美しいというだけでなく、その衣裳はともすれば彼女たちの内面(または強くあろうとする毅然とした態度)をも示しているのですから。これは映画という映像の媒体でしか成し得ない面白さと奥深さであることは言うまでもありません。ぜひ、このふたりの切ない戦いと、尊い関係性を劇場でこそ堪能してほしいです。

(文:ヒナタカ)

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