堀田真由ちゃん月間!微熱のような思春期映画『36.8℃』の小さくも可愛い青春

(C)2017 映画24区 

日本映画界全体の製作本数の増加やキラキラ系青春映画の隆盛なども相まって、このところ10代を中心とする若手俳優の躍進は目覚ましいものがあります。

その中で、今回プッシュしたいのは堀田真由。

2015年のWOWOW連続ドラマW「テミスの求刑」でデビューし、2017年度後期のNHK連続テレビ小説「わろてんか」でヒロイン藤岡てんの妹りんを好演。

最近では高橋一生共演「ファブリーズMEN」、ムロツヨシ共演「ミンティア」などのCMでもおなじみの顔となって久しい感があります。

そして2018年7月は、まさに“堀田真由ちゃん月間”と呼びたくなるほどの出演作オン・パレード!

まずは7月6日公開のイケメン・キラキラ映画『虹色デイズ』、13日よりTBS系列でオンエアされるテレビドラマ「チア☆ダン」。

そして……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.317》

7月7日より主演映画東京・新宿K’シネマにて、主演映画『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』が公開!

これがもう、小さくて可愛くて美味しい思春期青春映画なのです!

常に遠慮がちな高校生女子の
ひと夏の家族・友人・彼氏との交流

映画『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』の舞台は、兵庫県加古川市です。

17歳の高校生・若菜(堀田真由)は、共稼ぎの両親(寺脇康文&渡辺真起子)に代わって病弱な弟の面倒を見ていますが、家族仲は良好。

料理の腕もなかなかのものです。

学校では実果(岸本華和)や歩結(西野凪沙)ら気の置けない友人らとともに、何気なくも賑やかで楽しい日々を過ごしています。

ボート部の透(安藤瑠一)という彼氏はいましたが、どうも自然消滅した様子。でも、妙にまた彼のことが気になり始めているような……。

めちゃくちゃ明るいわけでもなければ暗いわけでもない。

でも常に遠慮がちで、友人の誘いを断る術も知らず、今一歩、前を踏み出すことができない。

そんな若菜が唯一相談できるのは、SNSで繋がったOLの“みずほさん”だけでした。

本作は、一見どこにでもいる普通の少女の奥に秘められた繊細で複雑な思春期の想いを、さりげなく優しく慈愛をこめて描出していく青春映画です。

過剰にドラマティックな出来事はなく(後半ちょっとした“事件”は起こりますが、これもアルアルなエピソード)、淡々と流れてゆく日常の中、それでも時間は少しずつ、ゆっくりと彼女を成長させていく。

描かれる時期はほんのひと夏の時期ですが、それが思春期真っ只中の世代にとっていかに大きなものであるかも、かつて思春期を通り過ぎていった世代の胸にまでしんみり染みいらせるものがあります。

何よりも、ここでの堀田真由の文字通り“透明感あふれる”個性が、好もしく映像に定着&開花。

タイトルの『36.8℃』、即ち高熱の病ではないものの、微熱のようなもやっとした状態が続く思春期特有の憂いを見事に体現してくれています。

特に家族や友人、彼氏などとの何げないコミュニケーションを通して、その楽しさと難しさから人は成長していくことが、1時間強の上映時間からさりげなく示唆されていくあたりも唸らされるものがあります。

地域の「食」と「高校生」とコラボした
青春映画制作プロジェクト・加古川編

本作の監督・安田真奈は2006年に『幸福(しあわせ)のスイッチ』で監督デビューを果たして注目された逸材です。

その後は脚本家として活動しながら、育児と仕事を両立させつつ地道にキャリアを積み上げ、近年より演出の仕事も再開。

CM「あなたの街のパナソニックの店〈街のでんきやさんはつづく〉」シリーズも彼女の演出で、毎回好評を博し続けています。

そして久々に手掛けた映画『36.8℃』は、デビュー映画からおよそ一回りの年月を経た安田監督の人生のキャリアが、さりげなくも巧みに込められたものになっています。

特に、この手の作品には珍しいほど、親から子を見据えた慈愛の目線が上手く挿入されており、それがまた思春期を迎えた少女の繊細さをさらに引き立てる結果となっています。

少女たちが語らい、交流し、ときにぶつかりあう光景を少し引き目の長回し撮影でじっくり捉えた映像センスも素晴らしく、美しくもどこか緊張感に満ちたスリリングな情緒までもたらしてくれています。

さらには数々の台詞そのものが実に自然でリアルなのは、やはり脚本家として長年培ってきた杵柄と大いに褒め讃えたいものがあり、まただからこそ1時間強という上映時間に凝縮した感もなければ物足りなさもない、実に適切な長さとして構成されているのも唸らされるところ。

また本作は、地域の「食」と「高校生」とコラボした美味しい青春映画制作プロジェクト《ぼくらのレシピ図鑑》の“ひょうご加古川編”として作られています。

まず「食」として、劇中、加古川の美しい風景はもとより、地元の食材を用いた料理が、ドラマの流れに何ら支障をきたすことなく多数登場するあたりも妙味でしょう。

チーズとハムのイチジクカップ、イチジクとチキンのハーブグリル、あっさりパスタサラダ、米粉のフルーツパンケーキ、かつめし。
(ホームページには、これらの料理のレシピも掲載されています)

次に、このプロジェクトは地元の「高校生」で応援隊を結成してもらい、劇場公開に寄せての宣伝プランを考えてもらうシステムで、さらには市民によるスタッフやエキストラなど、単なるご当地映画の枠を超えた映画作りを目指すユニークな試みも実践されています。

このように小さくも可愛く美味しい映画『36.8℃』。

その象徴として見事に映えた、堀田真由の女優としての今後のステップアップも見守り続けたいところです。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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