『亜人』 ワールドプレミア舞台挨拶

■「キネマニア共和国」

10月28日夜、TOHOシネマズ六本木ヒルズにおいて、第28回東京国際映画祭パノラマ部門にてワールドプレミア上映されたアニメーション映画『亜人 第1部―衝動―』の舞台挨拶が開催され、声優の宮野真守、細谷佳正、櫻井孝宏、平川大輔、小松未可子、洲崎綾、瀬下寛之総監督、安藤裕章監督が登壇した。
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本当に苦しくて痛かった
アフレコ=プレスコ現場の充実感

『亜人』は、決して死ぬことのない(死ねない)新人類=亜人と、彼らを追う政府の攻防を描いた桜井画門の人気コミックを原作に、3部作としてアニメーション映画化したその第1弾である。

今回は画に先行して台詞を録るプレスコ方式が採用されているが、声優陣にとっても通常とは異なる新鮮な体験だったようだ。

瀬下「画のない状態でキャストのみなさんが作り上げてくれたキャラクター像が、今回は映像作りにものすごく反映されています。最初に聞いたとき、まるでラジオドラマを聞いているかのようなクオリティでしたし、そんなみなさんの迫力ある演技に対して恥ずかしくない映像を構築すべく、僕たちも頑張りました」
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安藤「今この場で言いたかったことを、すべて瀬下さんに言われてしまいましたが(笑)、死ねない主人公を通して、生きたキャラクタ-を描かなくてはいけない。その意味でも今回は出演していただいた方々の演技力に助けられた想いですし、またそれに負けない映像を作ってくれたポリゴンピクチュアズにもお礼を言いたいですね」
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主人公の亜人・永井圭を演じた宮野真守は、苦しくて、痛くて、本当にやめたいと思えるほどの収録現場でもあったという。

宮野「亜人になってしまったことで、何度も何度も実験を繰り返されていくシーンなんて、もうずっと苦しかったし、痛かったし、またさまざまな人からも狙われてしまう精神的な痛みもかなりのものがありましたが、そのくらい全神経を注いで携われる作品に出会えて幸せでもあります。完成した作品も、あまりの面白さに圧倒されました。そもそも映像化できるのかというみんなの不安に、瀬下総監督と安藤監督が立ち向かっていったような“攻め”の作品になっています。ギリギリの演出に全く逃げがない」
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細谷佳正は、窮地に陥った圭を助ける友人・海斗役。本作でもっとも人間臭いキャラクターである。

細谷「今回、監督さんたちは『ドキュメント風に描きたい』とおっしゃっていたのですが、それを受けて僕ら役者たちの芝居もいろいろ攻めていました。そういったところが巧みに融合して、完成した作品を拝見したときは、まるでハリウッドの実写映画を見ているような感覚でした」
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櫻井孝宏は、亜人管理委員会の責任者・戸崎(トサキ。トザキと呼ばれると憤慨する⁉)

櫻井「僕は原作も読んでいましたが、想像を上回る映像美の中から、優れたエンタテインメント性とともに『生きるって何だろう?』といった、人間の本能に訴えかけるような深い作品に仕上がっていると思います」
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小松未可子は戸崎の部下兼ボディガード・下村泉。一見謎めいたキャラの奥に秘められた秘密とは?

小松「今回はプレスコと同時にカメラも目の前にあって、私たちの表情まで撮られていたんです。おそらくはそれも映像に反映されるのだろうと思いましたが、私が演じた泉は寡黙な女性なので、あまり表情は変わらないかなと(笑)。でも、お芝居からついた映像の演技というものも、いっぱいあるのではないかと思っています」
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平川大輔は日本で2番目に発見された亜人・田中役。人間を激しく憎んでいる。

平川「田中が何であんなに人間を憎むようになってしまったのかという点で、彼が泣きながら怒りが込みあげるシーンがあるのですが、そこは収録まで長いこと考えましたし、今でも印象に残っています。バトル・シーンなども文字情報だけで想像しながら、映像と共有できるよう試みましたが、こういう風になるのかと驚かされました」
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主人公のクズなところが大好きです(笑)

洲崎綾扮する圭の病弱な妹・慧理子は、兄のことを嫌っている設定だ。

洲崎「みなさんおっしゃるようにプレスコでしたので、画がない分いつもと入り込み方が違いましたね。その中で慧理子は、お兄ちゃんのことをクズと思っていまして、またそういう台詞もあったのですが……(笑)」
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宮野「……どうですか、宮野真守をクズと言った気分は?」

洲崎「⁉ いや、現場ではお兄ちゃんとしか思っていませんので、宮野さんのことではないです!」
宮野「そうですか……。僕はショックでした(笑)」

なお、この日登壇者の多くが黒ベースにしたシックな装いだったのに対し、洲崎綾は花柄の衣裳であった。

洲崎「私だけ、ちょっと変な色の服を着てきちゃったんですけど(笑)。小松未可子ちゃんに黒のワンピースを借りようかと思ったのですが、サイズが合わず……(笑)」

このとき瀬下総監督が絶妙のフォロー。

瀬下「僕と安藤さんはスタジオから直接やってきたものだから、こんな格好です(笑)。まさか、こんなにフォーマルなイベントとは思っていなかったもので、緊張が倍になっております(笑)」

安藤「さっきまで働いておりましたので(笑)。私たちはみなさんにお届けするために作品を作っているわけですから、本日こうして見に来ていただいた観客のみなさんにもお礼を申し上げたいです」

宮野「お話を伺っているうちに、より『亜人』に対する心持ちが楽しくなってきました。僕は圭のクズなところが大好きです(笑)。なぜか、とても共感してしまうのが、彼には嘘がないところなんですね」
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瀬下「主人公の圭はあくまで普通の男の子です。人にとって実は最後の救いでもあるかもしれない“死”を奪われた彼が、文字通り“必死”になって生きる意味を見出していくさまを感じていただけたら嬉しいです」

宮野「この作品がみなさんの心に大きな何かを残してくれるとしたら、本当に嬉しいです」

『亜人 第1部―衝動―』は11月27日より2週間限定上映。

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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