『ライオン・キング』以外にも!夏から秋にかけて海外アニメ映画が多数公開!

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今年の夏は超実写版(要するに実写と見まがうほどにリアルなフルCGアニメ)『ライオン・キング』やイルミネーションの新作『ペット2』といった海外作品が、『天気の子』などの国産アニメ映画群と真っ向からぶつかり合いながら大ヒットしています。

もっとも、こうしたハリウッドのメジャー作品ばかりでなく、今の日本ではさまざまな国のアニメ作品が見られるようになって久しいものがあり、この夏から秋にかけても実にユニークかつ秀逸な作品が公開されます……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街402》

それぞれのお国柄も大いに反映させたそれらの作品群、せっかくですから見逃す手もないでしょう!

ベル・エポックを背景とする
『ディリリとパリの時間旅行』

 (C)2018 NORD-OUEST FILMS – STUDIO O – ARTE FRANCE CINEMA – MARS FILMS – WILD BUNCH – MAC GUFF LIGNE – ARTEMIS PRODUCTIONS – SENATOR FILM PRODUKTION

まずはフランス&ベルギー&ドイツ合作の『ディリリとパリの時間旅行』(8月24日よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開)。

これは20世紀初頭のベル・エポック時代のパリを舞台に、ニューカレドニアからやってきた少女ディリリが連続少女誘拐事件の謎を紐解いていくといったもの。

もっともこれは単なるミステリではなく、デイリリと彼女に協力する青年オレルの捜査(?)に伴いながら、ピカソやモネ、ロートレック、キュリー夫人、パスツールなど当時の著名文化人が何と100人以上も登場!

またエッフェル塔やオペラ座などパリの美しい街なみを背景に据え(写真を加工して構築されたもの)、舞台劇のようにキャラクターを行き来させつつ、いざアクティヴなシーンになると、あたかもジブリ作品を彷彿させるほどの躍動感あふれるものへ転じていくカタルシス!

監督は『キリクと魔女』などで知られるフランス・アニメ界の鬼才ミッシェル・オスロですが、華やかなタッチの中に今回も人種や宗教、性差別などの問題を巧みにドラマに盛り込みながら、見る側の意識を啓蒙しつつ高めてくれる真のエンタテインメントを構築し得ています。

『ベティ・ブルー/愛と情熱の日々』『イングリッシュ・ペイシェント』などで知られる名匠ガブリエル・ヤレドの音楽も出色の素晴らしさです。

往年の東映動画を彷彿!
『ロングウェイ・ノース』

(C)2015 SACREBLEU PRODUCTIONS / MAYBE MOVIES / 2 MINUTES / FRANCE 3 CINEMA / NORLUM. 

続いてフランス&デンマーク合作の『ロングウェイ・ノース 地球のてっぺん』(9月7日より東京都写真美術館ほか全国順次公開)。

舞台は19世紀ロシアのサンクトペテルブルグから始まります。

14歳の貴族子女サーシャは、1年前の北極航路の探険に出たまま帰ってこない祖父の身を案じ、やがて自ら捜索の旅に赴きますが、北方行きの船に乗り込もうとしたものの上手くいかず、港の食堂で住み込みで働き、慣れない仕事に従事。しかし、それが認められて、ついに船に乗ることが叶いますが……。

ひとりの少女の壮大な冒険を極めてシンプルにデザインされたキャラクターや背景などでスタイリッシュに描出し、独自の世界観を構築することに見事成功。そのタッチは『わんぱく王子の大蛇退治』など1960年代東映動画作品を彷彿させるものがあります。

現にこの作品、東京アニメアワードフェスティバル2016でグランプリを受賞した際、東映動画出身でもある高畑勲監督から絶賛され、強く日本公開が望まれていた傑作でもありました(アヌシー国際アニメーション映画祭では観客賞を受賞)。

少女が船に乗り込んでからの北方で遭遇する危険な冒険の数々はまさに圧巻ながら、一貫して詩的な抒情が同居していますので、見ていて気持ちの良いことこの上なし!

監督のレミ・シャイエはトム・ムーア監督の『ブレンダンとケルズの秘密』の助監督兼ストーリーボードを担当したのち、本作で監督デビュー。現在はアメリカ初の女ガンマン、カラミティ・ジェーンの少女時代を描いた作品を2020年完成を目指して制作しているとのことです。

スノーマン作者の両親を描く
『エセルとアーネスト』

(C)Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A.,The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016 

イギリス&ルクセンブルグ合作の『エセルとアーネスト ふたりの物語』(9月28日より岩波ホールほか全国順次公開)は、『スノーマン』や『風が吹くとき』などでおなじみの英国絵本作家レイモンド・ブリッグズが、自身の両親の人生を描いた絵本を映画化したものです。

1928年のロンドンで若き日の両親は出会い、愛し合い、やがて結婚するも第二次世界大戦が勃発。戦後もめまぐるしい世界政情の中、しかしながらふたりの製かてゃどこにでもある、ごくごく普通の日々。

しかしながら、その普通であることの大切さや愛しさなどがひしひしと胸にしみわたる作品に仕上がっています。

監督は『スノーマンとスノードッグ』を手掛けてレイモンド・ブリッグズの信頼も厚いロジャー・メイヌッドが担当していますが、ここでも原作のタッチを巧みに活かした作画により、まさにブリッグズの動く絵本とでもいうべき雰囲気に包まれた良質な作品に仕上がっています。

その時代時代の生活品など細かいアイテムにも気を配っているので視覚的な楽しさもある一方、両親を決して理想的な善人として描いていないあたりも逆にリアルで好感が持てるところです。

音楽は『フランス軍中尉の女』『チャンピオンズ』などの巨匠カール・デイヴィスが担当し、エンディング曲はブリッグズ直々の依頼を快諾したポール・マッカートニーが歌っています。

以上、いずれも必見の海外アニメーション映画ではありますが、この原稿を書いているたった今、11月29日より新宿シネマカリテなどで公開予定の台湾映画『幸福路のチー』の試写状が送られてきました。

お話は、アメリカで暮らす主人公が祖母の死を機に、疎遠にしていた台北郊外の故郷「幸福路」に帰ってくるというもの。

アニメ制作の土壌に欠ける台湾で、実写映画監督ソン・シンインが自らアニメスタジオを立ち上げて制作した意欲作で、2019年度アカデミー賞長編アニメーション映画賞候補25本の中にエントリーされています。

ノスタルジックな抒情に包まれるとの世評を聞くに1980年代のホウ・シャオシェン作品など台湾映画ニューウェ-ヴを彷彿させるものかもしれません。拝見するのを楽しみにしたいと思います。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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