麻雀を知っている人だけが観るなら映画の意味がない──『ノーマーク爆牌党』矢本悠馬インタビュー

麻雀漫画の金字塔といわれる片山まさゆき原作の同名作品を実写化した『ノーマーク爆牌党』が、2018年10月27日(土)よりシネマート新宿ほかで公開されます。

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お笑いコンビ・NON STYLEの石田明さんが笑いを封印して、相手の手牌を読み切って余り牌を狙う天才的な打牌「爆牌」で戦う雀士の爆岡弾十郎役に、そのライバルで「爆守備」と呼ばれる堅い打ち筋を戦略とする鉄壁保を矢本悠馬さんが演じる今作。

幅広い役柄をこなす実力派俳優の矢本さんに、麻雀や役どころに関するお話、そして劇中の鉄壁のように自身が勝負をかけたエピソードなどを伺って、今作の魅力に迫りました。

(C) 2018片山まさゆき/竹書房/『ノーマーク爆牌党』製作委員会

──この作品に関わるまで麻雀をやったことがなかったそうですが、どういうイメージを持っていましたか?

矢本悠馬(以下、矢本):不良とかチンピラが雀荘にあつまってタバコをふかしながら、お金をかけてやっている、みたいな…(笑)。ギャンブルだと思っていましたし、麻雀をやったことがない人がもっているであろうイメージそのままですね。僕はまったくギャンブルをしないですし、触れたことのないコンテンツでした。

──では、鉄壁を演じることになったときのお気持ちは?

矢本:とにかく麻雀をやったことがないという不安がありました。ルールだけはネットで調べて顔合わせに行ったんですが、やってるかやってないか手つきでバレると言われて。こういうゲームに作法ってあるの?って思ってたんですが、打ち方とかが独特でそれを覚えることに苦労しましたね。今回に限らず、役づくりはその場でパフォーマンスを見てもらってという感じで、あまり現場で作り込むことをしないので、そういうことよりも麻雀シーンが一番大変でした。

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──ルールを覚えたり、手つきが本物に見えるように。

矢本:強い役なので、ちゃんとできているように見えているといいんですけど(笑)。やっぱり、麻雀をやっている人が見たときに下手に見えたら嫌ですよね。僕はまだ完成したものを見ていないので、不安はありますね。

──では、鉄壁保を演じるうえで大切にしたことはありますか?

矢本:鉄壁はあまり気持ちを言葉にしたり、表現したりする人ではないんです。内向的でひとり心の中で自分と対話してるような人なので、表現を極力抑えるというか、削ぎ落とす作業、引き算の芝居をしました。

──確かに、ヒロインの九蓮宝燈美(長澤茉里奈)に対する鉄壁の気持ちもなかなかわかりづらくて、実は恋愛要素もある作品なんだ、と途中で気づきました。

矢本:何を考えてるのかわからないっていう感じに見えていれば、正解だったんじゃないかと思います。当大介(高崎翔太)からみても、宝燈美からみても、鉄壁って麻雀とか将来のこととか、どう思ってるんだろうっていうくらい見えない人だと思うし、爆岡だけが、麻雀を通して鉄壁の考えていることを何となくわかっていればいいのかな、という気持ちで演じてましたね。

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──ラストの鉄壁と爆岡の対決では麻雀の勝負を超えた葛藤も描かれていて、私のような麻雀のルールがわからない人でも共感するシーンだったと思います。

矢本:麻雀を扱っているので一見特殊な世界のような感じがしますけど、人間ドラマもありますし、実は青春スポ根的な作品ですよね。ギャンブルではなく競技なので、観ている人も作品に入りやすいんじゃないかなって思います。

──ギャンブルというイメージでまったくやらない人もいる一方で、徹夜で遊ぶくらい好きな人もいますよね。実際にやってみて、麻雀の魅力は感じました?

矢本:もともとトランプゲームとかボードゲームが好きなので、そういうもののひとつなんだなと。知能戦プラス心理戦なので、脳みそを使うスポーツのようなところが魅力だと思います。

数合わせゲームの感覚で難しいことを考えなくてもできるものなんだって、麻雀をやってみて最初に思ったんですね。そこから、相手の手牌を読んで、相手が欲しがっている牌や何を捨てようとしているのかを考えたり、山札に残っている牌を把握したりすることで、勝負が見えてくる。さらに、戦略を立てるには相手の性格も把握しなきゃいけなくて、どんどん掘り下げていくことができる緻密で面白いゲームなんです。

──私はルールがわからなかったので、見えた手牌の意味がわかればドラマ部分だけでなく麻雀の勝負という点でも、より興奮しながら見ることができたのかな、という思いもあったのですが、予習はした方がいいと思いますか?

矢本:僕は競技かるたの映画にも出ましたけど、ルールがわからない人も楽しんで観ていたと思うんです。だから、そういうノリで流行ったらなって。W杯だって、サッカーのルールを知らない人がユニフォームを着て盛り上がるじゃないですか。そういう楽しみ方でいいと思います。

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それに、どっちが追い込まれてるとか追い込んでるとか、周りのリアクションからすごい手が来てるんだとか、爆岡ってすごい天才なんだとか、それを見せるのが役者の芝居ですからね。

──その言葉で、麻雀を知らない人のハードルも下がったと思います!

矢本:それでいいと思うんですよ。そもそも知ってる人だけが見るものというスタンスなら、映画にする意味がないし。中には麻雀が大好きで、僕らの悪口をいうような人もいるかもしれないけど、楽しみ方は人それぞれで、まずは観に来てもらいたい。

石田さんが観たいとか、矢本悠馬が観たいとか、そういうきっかけで映画を観てもらって、そこから麻雀もやってみようかな、という気持ちになってもらえたら、麻雀映画として麻雀というものに貢献できたということ。それこそ、この映画をやった意味があったということだと思います。

──ちなみに矢本さんご自身が、これまでの人生で勝負を賭けたできごとは?

矢本:もともと大人計画という劇団にいたんですけど、初めて勝負かけたなって思うのは、そのオーディションかもしれないですね。小さい頃に親から無理やり役者をやらされて、まったく興味がなかった役者の専門学校にいたんです。今思うと意味のあることだったとは思うんですけど、当時は「役者になるために必要か?」と思う授業も多くて。まぁ落ちこぼれだったんです。

それでよく怒られてたし、「お前みたいなやつは俳優になれないよ」とか言われたりもしました。そのときは俳優になりたいと思っていたわけじゃなかったけど、そういう人たちを黙らせる方法を毎日考えていたときに、学校の先輩とか同期が受ける劇団があると聞いたんです。それが大人計画だったんですが、もし俺が受かったら同級生も先輩も先生たちも一発で黙るんじゃないかなって。受かったら本当にみんな黙ったんで、気持ちよかったです(笑)。

──受かるためにどんなことをやったんですか?

矢本:麻雀に通じるところかもしれないんですけど、勝つためには何を準備していくかを考えたんです。芝居やダンスがうまい人は売れてなくても山ほどいる。それが判断基準になる劇団なら面白くないところだろうから、そこじゃないと。大量の人を書類と現場で観るオーディションで目立つためには、と考えたんです。

遠距離恋愛をしてた彼女にフラれたタイミングだったので、書類審査では「将来の自分へ」という課題を過去の自分に切り替えて、「なんで振られたのかな」とか失恋したメンヘラみたいな文を書いて。最後に、書類で落とさずに実際の俺に会ってくれ、ってめちゃめちゃでかい文字で書いて、自分にプレッシャーをかけたんです。そうしたら書類審査が通ったので、正解だったんだなと。

一次審査では、目立つために何をしようか考えた結果、取材では言えないようなことをしましたね。オーディション中に怒られましたし(笑)。人生を振り返ると、大人計画のオーディションが一番勝負をかけたことだと思います。

──それでは、最後に今作の見どころを教えてください。

矢本:やっぱり、石田さんが打つ爆牌のシーンだと思います。僕もまだ見てないんで、どんな映像になっているか気になりますし。それに、お互い麻雀にかけているものがある爆岡と鉄壁の内面性みたいなところが見どころですよね。爆岡はビックマウスで、絶対負けないみたいなことをいうけれど、鉄壁はそうは思いながらも口には出さない。相反して見える攻撃的な男と保守的な男がぶつかり合うんだけれど、突き詰めると根底では共通しているところも多かったりして。戦いの中で垣間見える人間の深い心理にも注目してほしいです。それに、ギャンブル映画ではなく競技映画なので、麻雀のイメージもちょっと変わるんじゃないかなって思います!

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『ノーマーク爆牌党』は2018年10月27日(土)より公開。同日、シネマート新宿にて初日舞台挨拶を予定しています。

http://bakuhai-movie.com/

(撮影:生熊友博、取材・文:大谷和美)

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    ライタープロフィール

    大谷和美

    大谷和美

    高校2年の時に観た「バトルロワイアルⅡ」に衝撃を受け、映画の道を志すも、縁あって雑誌編集者に。特撮誌、若手俳優グラビア誌等の編集・ライター、WEB編集者を経て、現在はフリーランスで活動中。人間の感情や社会の闇を描いた邦画が好きで、気づけばR指定のDVDばかり借りていることも。一方、元々好きだったライダー・戦隊などの特撮作品やコメディ映画も好んで観ます。他、元上司のバカタール加藤が主催するニコ生番組「崖の上の生放送」に準レギュラーで出演中。

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