『ある日本の絵描き少年』は、主人公の成長に合わせて絵が変わる画期的アニメ!

 (C) 2018 Nekonigashi Inc.

2019年度の国産アニメーション映画はかなりの激戦が予想、いやもう既に必至の状況を呈しています。

新海誠をはじめ、原恵一、湯浅政明など錚々たる顔ぶれによる期待の新作群や、この春の『ドラえもん』『おそ松さん』映画もかなりのハイクオリティ、また深夜アニメの劇場版などでも『コードギアス 復活のルルーシュ』などの秀作がすでに多数輩出されているのです。

その一方、インディペンデント方面の作品でも、それらに負けず劣らずの快作が3月2日より東京・下北沢トリウッドで公開されます……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街365》

『ある日本の絵描き少年』、主人公の絵の成長に合わせてヴィジュアルを変化させながら、漫画家を目指す男の半生を描いた20分の見事な野心作です!

絵が好きな少年が
漫画家をめざす過程

『ある日本の絵描き少年』は、母親の目線で息子しんじくんの成長が綴られていきます。

このしんじくん、絵の才能があるようで、本人も絵を描くことが大好き。やがては漫画家を目指すようになっていきますが、小学校に入り、中学、高校と進学し、思春期の頃には哀しいかな周囲からキモオタ的に捉えられるようにもなってしまいます。

一方、しんじくんには同じく絵が好きで覆面レスラーの絵ばかりを描いているまさるという友人がいて、家族ぐるみの付き合いをしていましたが、学年が上がるごとに環境が変わり、ふたりは疎遠になっていきます。

やがてしんじくんは美大に合格し、本格的に漫画家の道を歩んでいくのですが……。

本作はひとりの絵描き=漫画少年の生い立ちをモキュメンタリー・タッチで描いたものですが、赤ん坊のころの落書きから始まり、年齢を重ねるごとに徐々に絵らしきものになっていき、学校に上がるころには周囲も認める上手さのものへと化していくという、要は映される絵がさまざまなタッチでめまぐるしく変動していくところが何といってもユニークなのです(後半は実写映像まで登場します)。

 (C) 2018 Nekonigashi Inc.

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それは若手クリエイターならではのエネルギッシュで野心的映画技法の実践にほかならず、しかもその技法を駆使することで主人公の少年の繊細な心情の揺れまでも見事に描かれているのには驚嘆させられます。

意欲次第で面白いものを
いくらでも作れる時代

監督の川尻将由(まさなお)は1987年生まれの新鋭。大阪芸術大学時代、原恵一監督作品などに影響を受け、アニメスタジオ勤務を経て映像制作会社を立ち上げ、本作は第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)コンベンション部門で準グランプリ、ジェムストーン賞(日活賞)を授賞。

ほか、第12回小田原映画祭シネマトピア2018グランプリ、第10回下北沢映画祭グランプリ、第65回TOKYO月イチ映画祭グレンプリ、第13回那須ショートフィルムフェスティバル2018準グランプリ&観客賞を受賞と、国内の各インディペンデント映画祭で絶賛。

そして3月2日から、短編映画の聖地でもあり、かつて『ほしのこえ』で新海誠を世に送り出し(思えばこの作品も20分強の長さでした)、今年開館20周年を迎える下北沢トリウッドにてロードショーが始まります。

またまた現れた才能ある新鋭の先物買い的観点もさながら、映画そのものの面白さをまずは第一に、とくとご堪能していただければと思います。

それにしても、特にアニメーション映画の場合、独り(もしくは少数編成)で作れてしまう時代が到来しているわけですが、作る側の意欲次第でいくらでも画期的なものを世に送り出すことができるという、実に面白い世の中になってきたようです。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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