『センターライン』はAIによる犯罪をめぐる画期的なSF法廷劇だ!

(C)プロダクションMOZU

現代社会においてAIは今や欠かせないものであり、その技術も日進月歩の勢いで進化し続けています。

しかし、そのAIが心を持ち、犯罪を犯すようになったとしたら……?

本作『センターライン』は、そんなAI犯罪をめぐる裁判の模様を描くという、実に大胆かつユニークな試みのSF法廷サスペンス映画ですが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街375》

やはりこの作品、インディペンデント映画界から発信されたという事実にも、未来の希望をつなぐことが可能でしょう!

もしAI自身が殺意を
抱いたとしたら……?

『センターライン』の舞台となるのは、AI技術の躍進によって自動車の自動運転が普及した未来社会“平成39年”(え、令和9年じゃないの? などと突っ込まないように!)。

そんな中、車同士の正面衝突による死亡事故が発生しました。

安全であるはずのAI自動車がなぜ、このような事故を?

交通部配属の新任検察官・米子天々音(吉見茉莉奈)は自動運転を制御していた人工知能のMACO2(声/上山輝)を過失致死罪で起訴しようとします。

しかし、彼=CACO2は「誤作動ではなく、わざと殺しました」と供述。

AIは殺意を抱くのか? そもそも心を持っているのか? 

やがて裁判の幕が開けるのですが……。

このように秀逸なアイデアで進む『センターライン』ですが、本作は『菊とサカツキ』(13)『N.O.A.』(15)とインディペンデント映画界で活動中の下向拓生監督が2018年に制作したものです。

メジャーでも十分通用するモチーフのエンタテンメント的題材のものが、インディペンデント映画界から登場したという事実には大いに着目すべきでしょう。

メジャーを凌駕する勢いの
インディペンデント映画界

昨年の『カメラを止めるな!』の異例の大ヒットは、メジャーを凌駕するに足る才能が今や日本中に存在している事実と、そんな彼らの可能性を広く知らしめてくれましたが、下向監督もそのひとりで、そもそも学的考察を踏まえたリアルなサイエンスフィクションを得意としているあたり、今後の飛躍も大いに期待できるものがあります。

また見ていただければ一目瞭然ではありますが、本作は普段SF映画に必須な多額の予算がかけられている節はほとんどなく(CGとかも使われていたかどうかあやふやなほど)、あくまでも現代の延長線としての近未来社会を描いています。

その意味ではインディペンデントならではの知恵も駆使されたSF映画ととらえることも大いに可能でしょう。

実際、高齢化に伴って自動車運転免許証を返上するなど、自分で運転することが叶わなくなったお年寄を多数抱く地方では、実験的にAI自動車の導入も始まっています。

その意味では本作が描いていることはあながち空想の世界と言い切れないものもあり、その意味でもなおさら興味が湧いてきます。

AIと人間の関係性を法的立場から対峙していくヒロイン検察官の存在もユニークで、彼女を主人公にした“米子天々音、AI犯罪を裁く!”シリーズが作られても面白いのではないかと思えるほど。

本作はすでに国内のインディペンデント映画祭で8冠を達成し、その勢いに乗せての一般公開となります。

ぜひ未来の希望溢れるインディペンデント映画界の才能に触れてみてください。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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