『セラヴィ!』監督インタビュー、ウェディングプランナーの仕事が映画作りと似ている理由とは?

(C)2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE 

7月6日より映画『セラヴィ!』が公開されます。本作が描いているのは、結婚式の“舞台裏”。それも部下がことごとくポンコツで、彼らのせいで起こったトラブルに右往左往するベテランウェディングプランナーの悲哀がたっぷりと描かれた、クスクスと、時にはゲラゲラと笑える愉快なコメディ作品に仕上がっていました。

監督は世界中で大ヒットを遂げた『最強のふたり』のエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ。今回の『セラヴィ!』も高い評判を呼び、先日に横浜で開催されたフランス映画祭2018では一般投票による“エールフランス観客賞”を受賞しました。劇中で描かれた仕事での奮闘の面白さと、そこから起こる笑い、そして感動は万国共通と言えるでしょう。

ここでは、監督の1人であるエリック・トレダノへのインタビューをお届けします。読めばきっと、“映画監督とウェディングプランナーの仕事が似ている”理由がわかりますよ。

1:“結婚式あるある”が満載? 実体験を元にした出来事があった!

──監督のお二人とも、駆け出しの頃にイベントでのウェイターのアルバイトをしていたとお聞きしました。何か実際の映画に反映されていたことはありますか。

たくさんありますよ。例えばカメラマンの行動や、たくさんの方がビッフェを食べているシーンなどにその頃の体験を強く反映していますね。ライブ演奏をしていた男性も、「本当はコンサートで活躍する音楽家になりたかったんだけど、こういうところでアルバイトをしている。自分はもっと偉いのに!」という態度だった実際の人物を参考にしています。彼は練習の時も他人に止められないようにしていて、少し高慢なところがありましたね。その他にもたくさんの結婚式に取材をしていて、この映画の終盤に起こる出来事も本当にあったことを参考にしています。私たちが作る映画はいつも実際の出来事を取り入れていて、その実際の出来事が私たちの想像を上回って来ることがありますね。

──出会い系アプリを使うシーンが面白かったです。こちらも実体験を参考にされたのでしょうか。

私たちの事務所にいる若者に聞くと、やはり彼らは出会い系アプリを使っていると言っていましたね。映画は、時代背景をも反映するというものだと思うんです。劇中の出来事で言えば、みんなが携帯電話で写真を撮っているために、カメラマンの仕事が軽んじられてしまうというのもそうですね。現代的なテクノロジーや文化は10年か15年ほど経った時、その時代の記録としても重要になると思いますので、積極的に映画に取り入れています。

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2:映画監督としての苦労が劇中の物語とシンクロしていた?

──映画を観ていて、ウェディングプランナーという仕事は、映画監督と似ていると感じる部分がありました。監督ご自身も、スタッフの失敗のおかげで苦労したり、現場が大混乱してしまった経験などはありますでしょうか。

そりゃあ、ありますよ(笑)。今回の映画では特に俳優が多いですから、これだけの人数を動かす上で問題がないというのは絶対にありえないです。学校の先生のように「静かにしてください」や「ちゃんと聴いて下さい」や「しっかりセリフを覚えてください」などと言っていましたよ。俳優の皆さんは現場に集まると興奮しちゃって、その為の調整をするのもすごく大変でしたね。また、撮影を夜にも行っていたので、午前3時ぐらいになるとみんな疲れてきちゃって、今度は彼らを「一生懸命やろう!」と励まさなくてはなりませんでした。土砂降りになった時には、もう本当に参りましたね。撮影は50日間行われたのですが、51日目では「もう声を出したくない」と本気で思いました。その場その場で対応して行かなきゃいけなかったというのも含め、劇中で描かれたことは僕の体験そのものかもしれません。まぁ、働く現場というものは大体そういうものですけどね。

──それは大変……! そうであるなら、監督はウェディングプランナーの主人公にすごく感情移入されますよね。

もちろん、すごく感情移入しましたよ。映画の中の彼も私も、部下たちをお互いに意気投合させたり、それぞれの才能に合わせて仕事の采配をしていくといった努力をしていますから。仕事をされている方がそれぞれ、いろいろな立場で本作に感情移入されると思いますね。仕事において「これ以上続けるのか、それともあきらめるのか」という選択を迫られることも、多くの人の心の琴線に触れると思います。最終的には、前向きな考え方ができる物語になっていますしね。

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3:結婚式に限らず、ストレスなく誰かと付き合う工夫とは?

──様々な国籍・人種の方がスタッフとして登場していることが、多民族国家であるフランスらしいと思いました。

私たちは“現実をそのまま現している”と言っても良い映画を作っています。実際にレストランなどの調理場に行くと、スリランカやパキスタンや黒人の人の他、不法滞在をしている人がすごく安いお金で雇われているということもよくあります。私たちが以前に手がけた『サンバ』もそうですけど、実際にそういう人たちがいるということを、映画を通じて知って欲しいです。

──監督のお二人が友好な関係を続けている、ストレスなく誰かと付き合う為の秘訣などがあったら教えてください。

私たちは“補完関係”にあると思うんです。映画を3年間も作り続けるのは多大な労力を伴うことですし、広く公開することも勇気がいりますし、完成しても多くの批評にさらされるわけですから、私たちはたくさんのストレスを抱えています。その過程で対立するのではなく、客観的または相対的に物事を見て、お互いに意見交換をすることで、なんとか友好的な関係を続けられているのだと思います。

──日本は生涯未婚率がどんどん高まっています。もちろん結婚だけが幸せへの選択肢というわけではありませんが、結婚または結婚式に対して臆病になってしまっている方もいると思います。そう言った方に向けて、何かアドバイスはありますでしょうか。

それは知らなかったですね! 私はサーカス場を借りて結婚式をしたのですが、実はその時のことはあまり覚えていないんですよ。それまでの準備は大変だったのに思ったより本番があっさりと終わってしまって、しかも15年も前のことですからね。そんな私でも1つアドバイスできるのは、もっと自信を持って、自分を愛するところから始めて欲しいということです。容姿がどうだとか、賢いかどうかなんてほとんど関係なくて、自分と相手の間にある境界を超えていくためには、自分が重要な人物だと思うことが1番大切なんです。自分が価値ある人物だと信じること、そして誰かを愛することは誰もが持っている権利ですからね。また、やはり一人でいるよりも、二人の方が楽しいということが多いですよ。オリヴィエ・ナカシュとは夫婦ではありませんが、これからも大切なパートナーとして、一緒に映画を作って行きたいです。

まとめ

この映画が製作されたきっかけは、2015年にパリで発生した同時多発テロでした。人々の間に不安や悲しみが広がる中、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュは「こんな時だから、お祭り騒ぎのような映画を作りたい」と考えていたのだそうです。

エリック・トレダノは、世にある多くの映画では世界がいかに過酷で、暴力的で恐ろしい場所であると描いていることを踏まえ、「“そんな世界で楽しむことをいかに忘れないでいるか”ということを投げかけている作品だと思う」とも語っています。本作『セラヴィ!』は、結婚式で奮闘する人々を描くことによって、“楽しむこと”そのものを肯定していると言ってもいいでしょう。

劇中では結婚式での新郎新婦の幸せを願うことだけではなく、そこで働く人々の苦労、家族の関係も描かれており、「しょうがない、人生こんなものさ(セラヴィ!)」というエスプリに溢れつつも、普遍的に響く優しいメッセージが込められています。結婚式の裏側を観るというのはそれだけで楽しいですし、辛いときに観ると誰もが前向きになれることでしょう。ぜひぜひ、映画館でご覧ください!

(取材・文:ヒナタカ)

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