「虹色ほたる」「ポッピンQ」2本立てに託した思い。西暦2017年。シネコンは名画座を目指す!?

(C)東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016

「男の子の夏休みの話と、女の子の春休みの話」

後輩 ここんとこ、先輩の熱心な営業活動が話題に上ることが多いんですが。

先輩 ごく限られた範囲内の話題だろ(笑)。原稿書くだけじゃなくて、色々やらないと行けないんだよ、個人事業者は。

後輩 それにしても、このところトークだ社内報の原稿書きだと、節操なく仕事を受けているあたり、先輩らしいかと(笑)。

先輩 多角経営と言いなさい。まあ多くはこっちから営業したんじゃなくて、日頃お付き合いのある方からのオファーによるものだがな。

後輩 それにしても、名画座の番組編成にまで絡んでいるとは。

先輩 それもお付き合いの範囲内だよ。キネカ大森でオレが考案した2本立てを上映する件な。君も見たほうが良いぞ。「虹色ほたる ~永遠の夏休み~」と「ポッピンQ」の2本立て。4月22日から1週間上映する。

後輩 なんでまた、この2本なんですか?

先輩 この2本に共通しているのは、出来が良いにも関わらず、興行は不振であった。「虹色ほたる」は5年前の5月に公開されたアニメ映画だけど、当時新宿バルト9で見て、「なんでこんなに場内ガラガラなんだ?」と思ったさ。

後輩 「ポッピンQ」は比較的新しいですよね。今年の正月に公開された新作じゃないですか。

先輩 まあこの映画も、ヒットしたとは言いがたい。でも長く上映した映画館では徐々に客足が良くなってきたそうだ。

後輩 なるほど。でも、よくそういう番組が組めましたね。

先輩 キネカ大森を運営している東京テアトルの人と、雑談のつもりで「『虹色ほたる』、やりたいよね」と話していて、「もしキネカでやるとしたら、何と2本立てにしますか?」「そうだなあ・・『ポッピンQ』かな・・」「そのココロは?」「『虹色ほたる』は男の子の夏休みの話。かたや『ポッピンQ』は女の子の春休みの話」「それだっ!!やりましょう!!」という展開になって、配給会社と折衝してOKが出たというわけさ。

後輩 ちょくちょく映画館の番組編成に口を出しているのは知っていましたが・・。

先輩 おうよ。あちこちでうるさがられているぞ(笑)。

後輩 まさか、興行コンサルタントまでやるようになるとは(笑)。

先輩 コンサルなんかであるもんかね。だいいち結果責任は負えないから(笑)。お客が来なくても、オレのせいじゃないもん。

(C)川口雅幸/アルファポリス・東映アニメーション

デジタル導入で、名画座が活性化している。

先輩 知り合いの映画評論家が先日雑誌の依頼で、都内9つの名画座を取材したというんだよ。そこで「もう経営が苦しくてたまらないから、すぐにでもやめたい」と答えたのは、9館のうち1館だけだったそうだ。

後輩 名画座って、最近けっこう人気ありますよね。

先輩 だって、デジタルを導入したわけだからな、都内の名画座の多くは。そうなれば、上映出来る作品も増えるし、上映素材もフィルムに加えてDCP、ブルーレイ、DVDとこちらも増えている。名画座が今、活性化するのは当たり前のことなんだよ、オレに言わせれば。 
後輩 確かに上映作品の幅が、以前より広がった気がします。

先輩 BD上映も増えているんだよ。それはお客さんが納得すればそれで良いことだしね。そもそも映画館に設備投資をすることは大賛成で、よく「設備投資こそ最高のサービス」と言っているんだよ。

後輩 分かります。ハードをパワーアップすれば、全ての観客へのサービスになりますからね。

先輩 そうそう。特定の観客だけじゃなくて、入場者皆がその恩恵を受けるわけだから。映画館が入場料金の代償として観客に提供出来ることって「ハード」「ソフト」「サービス」。この3つだからな。

後輩 先輩、たまに良いこと言いますね。

先輩 「たまに」は余分だ。とにかく名画座は今、上映作品の多様化で活性化している。むしろシネコンのほうに手詰まり感を感じたりするがなあ。

(C)東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016

「お客さんは、映画館で上映する作品は、支配人が選んだと思っていますよ」

後輩 シネコンの場合は、全国チェーンだと本部が一貫して上映番組を決定するんでしょう?

先輩 それは興行会社によって異なるんだよ。イオンシネマズなどは、可能な限り現場の支配人の意向を重視して、その希望を番組に反映させるようにしているというし、逆に「現場の支配人は、試写を見なくてよろしい」と通達している会社もある。

後輩 でも、お客さんはその映画館で上映する作品は、支配人や経営者が選んだものだと思っていますよ。

先輩 それが大きなギャップなんだよ。

後輩 シネコンの場合だって、作品の多様性という意味では、確かに問題がありますね。同じ作品を複数のスクリーンで上映していたり。

先輩 そのあたりは配給会社の戦略に呼応せざるを得ないんだが、お客さんの立場に立って考えれば、もっと上映作品にバリエーションがあって良い。

後輩 先輩がよく、「映画に新作も旧作もないんだ!! 初めて見る映画は、みんな新作なんだよ!!」と言い放っているでしょ。あれもよく分かります。だから旧作の類いをもっと上映して欲しいと思いますね。

先輩 オレもそう思う。もしそういうことをするのであれば、支配人や経営者が自分で作品を選んで、そういうアナウンスをして欲しい。「この映画はオレが選んだんだから、つまんない時はオレに言ってくれ!!」と(笑)。

後輩 これからの大きな課題ですね。映画館独自の個性化と、それをどう広めて行くか。一部の映画館の支配人たちが、自分の名前でアカウントをとってTwitterとかやってたりするでしょう。そうすると、映画館や興行会社が決めた番組でも、その支配人が決めた感じがして、なんか映画館との距離が縮まる感じがするんですよ。

先輩 お前、たまに良いこと言うなあ。

後輩 「たまに」は余分でしょう!!

先輩 それは今、オレがあちこちの興行会社の人に勧めていることだよ。会社や作品のアカウントで情報発信しても、これだけ情報が多い世の中だから、すぐに流されてしまう。それよりも自分の氏名素性を明かした上で、「こういう映画をやりますから、ぜひ観に来て下さい」と書き込む方が、信憑性があるってもんだよ。

後輩 先輩も、今度の2本立ての件、早速Twitterでつぶやいていましたけど、成果はどうだったんですか?

先輩 フォロワーの少ないオレにしては、けっこうな数のリツイートや「いいね!」をもらったよ。ただ本来、こういうことは映画館サイドがやるべきだよな。今回はオレが矢面に立ったけど。

後輩 じゃあ、この「虹色ほたる」と「ポッピンQ」の2本立ては、そういう意味でも先輩の思いというか祈りが籠もっているわけですね。

先輩 そうだなあ。シネコンも名画座も、こういうことをやってもっともっと活性化して行って欲しいと思うぞ。

(企画・文:斉藤守彦)

    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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