今こそシネコンで旧作2本立てを!「虹色ほたる」「ポッピンQ」上映で感じたこととか。

■「役に立たない映画の話」

(C)東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016

初日、2日目、共に初回から満席!!

女の後輩 先週からキネカ大森で始まったんですねえ、先輩入魂の「虹色ほたる 〜永遠の夏休み〜」と「ポッピンQ」の2本立て。

先輩 うん。ただ「入魂」ってほどではない。

女の後輩 この2本立てに賭けた思いがあるそうじゃないですか。

先輩 おれが見たかったんだもん。それだけさ。

女の後輩 はあああ?

先輩 「虹色ほたる」を久々に映画館で見たい。で、周囲の人に言ってみたら「あれ、いいよねえ」とか「もう一度見たいですねえ」という声があって、その中に「キネカでやるとしたら、何と2本立てにしますか?」という声があって、それで「ポッピンQ」と答えたんだけど、これまた思いつきだからさあ(笑)。

女の後輩 あの、つくづく思っていることですが、あなたは思いつきだけで世の中渡っているのですね・・・。

先輩 まあな。でもいーじゃん。おれと同じように「虹色ほたる」も「ポッピンQ」も見たいって人がいたんだから。

女の後輩 お客さん、入ったんですか?

先輩 よくぞ聞いてくれた。初日、2日目ともに初回から満席だぜ!!

女の後輩 ほほお。それは素晴らしい。


先輩 まず最初に「虹色ほたる」の上映から始まったんだが、この時点で既に満席。で、ここが2本立ての難儀なとこなんだが、次の「ポッピンQ」を見たいお客さんが入って来るのだけれど、「虹色ほたる」を見終わったお客さんは微動だにしないから、空席が出ない。

女の先輩 そら2本立てですからねえ。

先輩 支配人も言ってたけど、「『ポッピンQ』目当てに来たお客さんでも、それだけで帰る人は、まずいませんよ」と。しかたなくお立ち見を入れたり座布団を支給して床に座ってもらったり。まあそういう光景も久々に見たんだけど。

女の先輩 自分がそうなると怒り出すくせに(笑)。「経営者の姿勢がなっちょらーん!!」とか言って。

先輩 まあまあ。でも1回目の「ポッピンQ」の上映が終わって、初回からいたお客さんが退場したことで空席が出来た。それでも整理券入場するというので、おれもチケット買って整理券番号17番をゲット。

女の後輩 ちゃんとお金払いましたか?
先輩 あたぼーよ。そもそも自分が見たくて組んだ番組だからな。で、最前列に陣取って、後ろを見たら、そうさなあ。場内7割の入りってとこかなあ。

涙腺を刺激された「虹色ほたる」フィルム上映。

先輩 5年ぶりに見た「虹色ほたる」は、最初に見た時よりも涙腺を刺激されてなあ・・。


女の後輩 最近涙もろさパワーアップしてますからねえ、先輩。

先輩 それと、今回「虹色ほたる」だけ上映素材がフィルムだったんだよ。それを劇場スタッフが開けて見たら、もうピカピカの。ニュープリントに近いキレイな状態のフィルムが入っていたらしい。つまり、それだけ上映されていないわけで。Twitterに書き込んだら、宇田監督が「(涙目)」とリアクションしてくれた(笑)。

女の後輩 でもまあ、キレイなフィルム映像が見られたわけだから、良しとしなくては。あっちはどうだったんですか? 入場者プレゼントのポストカードのほうは。

先輩 うん。「虹色ほたる」はおれのコレクションから120枚放出したんだけど、日曜にはなくなったらしいよ。「ポッピンQ」のほうは、もっと多く確保したから、まだ在庫ありとのことだ。

女の後輩 お客さんはやっぱり、「ポッピンQ」お目当ての人が多いようですから、若い人たちメインですか?

先輩 そうだねえ。20代から30代メインってとこかな?でも支配人によると、通常キネカ大森の客層の中心は40代から50代だと言うんだよ。それで今回の上映を告知したら、とにかく問い合わせの数が凄かった。それで支配人が「これはキネカに初めて来るお客さんだな」と判断して、キネカの名画座システムとルールについて、バナーを作ってTwitterに流したんだよ。

女の後輩 いつもと違うお客さんが来ちゃったってことですね。良かったじゃないですか。

(C)川口雅幸/アルファポリス・東映アニメーション

「作品に付加価値をつける」のは、映画館の役目。

女の後輩 で、そろそろ本音を聞きましょうか。

先輩 な・・・なんだそれは。本音も何も、自分の見たかった映画を自分のコネクションとコレクションを利用して、さも「ここに隠れたニーズがある!」とばかりに騒ぎ立てて、2本立て上映を実行した。それだけのことさね。

女の後輩 それだけじゃないでしょ。何かの実験とか検証とかに繋げようとしているでしょ? おねいさんに素直に言ってご覧。

先輩 ずっと考えていたことで、新作だけで商売やっていくのはどーなんだろう?という疑問はあるよ。しかも今、シネコンを見ると営業力の強い配給会社の新作だけがズラっと並んでいるだけで、バリエーションに乏しい。そういう品揃えしていれば、飽きられるのも早いと思うんだ。

女の後輩 確かにそうだけど、だからと言って旧作を2本立てにして上映するのはリスクが伴うでしょ。なんたって旧作だから、配給会社が宣伝してくれる新作ほどの知名度もないし、昔の映画というだけで敬遠する人だっている。

先輩 そーかあ?おれは自分の生まれる前の映画でも抵抗なく見られるけど。

女の後輩 自分を基準にしない!!

先輩 だってさあ、もったいないと思わない?今、配給会社の倉庫にはたくさんの作品が眠っているのに、稼働しているのはその一部。そうじゃなくて、もっと色々な作品に付加価値をつけて上映すれば、ちゃんとお客さんは来てくれると思うんだけど。

女の後輩 そんなに甘くないんじゃないですか。都内の名画座が今、デジタル化のおかげで活性化しているとは言っても、それは東京という人口の多い都市だから成立することで、地方都市では無理ですよ。

先輩 いやいや、むしろ地方都市のほうが旧作のニーズはあると思うがなあ。だって新作はまだ宣伝している最中なんだから、そっちのほうが知名度はないよ。それよりもタイトルが知られた作品を上映したほうが良くないか?

女の後輩 そこまで来ると、映画館サイド、興行者の決断次第ですね。

先輩 うん。だからさっき言った「作品に付加価値をつける」役割は映画館にある。単に旧作を2本並べてもダメ。その2本にどんな共通点があって、その裏にどんなドラマがあるか。それをイメージさせるようなパブリシティをやること。幸いにして今はSNSが発達しているから、これを活用しない手はない。だから今回の「虹色ほたる」「ポッピンQ」の2本立てのアナウンスやらパブリシティは、すべてTwitterでやってみた。

女の後輩 何か面白いことをしようとすれば、面白がってくれる人がいる。そういう人の姿が見える時代になったんですね。

先輩 「自分が騒ぎ立てることで、振り向いてくれる人がいるのならば、それをしようと思う」。これはある人の書いたことだけど、今度の2本立てをやるに当たって、このフレーズが背中を押してくれた。

女の後輩 誰の言葉ですか? 有名な人ですか?

先輩 いや、まあ、これもまた興行者なんたけどね、知り合いの(笑)。

女の後輩 なあんだ。

ちょっと前に終わった「ポッピンQ」の評判力は?

先輩 たかだか名画座の2本立てを扇動した程度のことだけど、色々とやってみて、気づくことはたくさんあったよ。
女の後輩 例えば?

先輩 よくあるじゃん。新作映画が公開されたけど、どーも出足が芳しくない。ところが少しずつ映画の評判が立って、お客さんが増え始めようという時に、肝心の映画が終了してしまう。

女の後輩 ありますねえ。特に日本映画に多い気がします。

先輩 映画の話題が国民の隅々にまで行き渡るのには時間がかかるのだから、その分計算に入れて公開規模を決めろというのに、全国一斉スタート、一斉撤収みたいなことやってる映画会社がまだ多い。

女の後輩 私の周囲でも「あの映画、面白そうね」「あ、先週で終わっちゃったわよ」ってなやりとり、ちょくちょくありますよ。まったく何のためにシネコンがあるんだか。

先輩 だから今回実験してみたのは、両作品とも上映終了後に評判が高まった作品をカップリングしたことさ。特に「ポッピンQ」な。これ、まだ公開されて4ヶ月しか経ってないし、そういう意味ではホットなんだよ。それに4月28日にはオフィシャルブックも出るというし。

女の後輩 正月に一斉公開されて、確かにオープニングの成績は良くなかったようですが、多くの映画館が上映を打ち切る中、続行した渋谷の映画館などでは、徐々にお客さんが増えて来たとも聞いています。

先輩 こうなると、映画とお客さんの持久戦だな。ただ、映画を上映する映画館としては、ただ単に映画を続映するのではなく、それを周囲にアナウンスする必要がある。そういう努力が興行の人たちには、すっぽり抜け落ちている。配給会社が打つTVスポットやタイアップ広告ばかりをあてにして。

女の後輩 「クチコミで客足がよくなった」と、よく言いますけど、それって自然にそうなるわけじゃないんですよね。どこかで誰かがその作品のことを知らしめるべく努力している。

先輩 そう!!だからこの間まで上映していた「ポッピンQ」の集客力、いやこの場合は「評判力」だな。それがまだ有効かどうか試してみた。所謂「従来の商慣習」ってヤツに、ささやかながら、異議申し立てをしてみようというわけさ。残念ながら「虹色ほたる」には、もうその力はない。さすがに5年前の作品だからね。

女の後輩 さすが先輩。そこまで目配せしてましたか。で、どうでしたか?「ポッピンQ」の評判力は?

先輩 これは成功だった。とはいえキャパ69席のキネカ大森2を土日埋めるぐらいの力が合ったというレベルだけど、それだってちゃんとお客さんは来てくれたわけだし、中にはもう何回も見たような熱狂的なファンらしい人たちもいた。そういう潜在層を顕在化したという意味で、意義のある興行だったと思う。

「名画座」「リバイバル」という言葉を使わないほうが良い。

女の後輩 名画座と言っても、ただ単に旧作を2本立てにして上映しているだけじゃないんですねえ。

先輩 キネカ大森の場合は、ちょっと特殊で3スクリーンのうち新作をロードショーするのと、名画座番組を上映するのと、両方やってる。「虹色ほたる」「ポッピンQ」をやってる時は同時に一番大きなスクリーンで「名探偵コナン」の新作をやってたし、並行して「クレヨンしんちゃん」の新作もやっていた。正直、僕が「シネコンの中に名画座を作ればいーじゃん!!」と言い始めたのは、ここをイメージしてなんだよ。

女の後輩 確かに新作と旧作が両方観られる映画館として、重宝ですよね。

先輩 もう閉館しちゃったけど、三原橋にあった銀座シネパトスもそうだった。3スクリーンのうち1スクリーンで名画座番組をやって、かなり濃密な特集上映をやってた。セガールの新作アクションと森繁久弥特集を隣り合わせでやってたんだよ(笑)。

女の後輩 それは凄い!! でも、そういうのが本当のシネコン=複合映画館というんじゃないですかね? 観客が求めるのは、「あの映画館に行けば、何か面白い映画をやっているかも」という期待感で、それは新作でも旧作でも関係ないんですよ。

先輩 おっしゃる通り。だから「名画座」とか「リバイバル」という言葉を使わないほうが良いと思うんだよ。新作であろうと旧作であろうと、上映する価値があるからやっている。「名画座です」と言い切ると、旧作しか観られないようでイヤだよな。

女の後輩 とにかく今回の先輩の企みは、色々な成果があったようですから、それを今後の執筆活動に活かされることを期待していますよ。

先輩 おう! まかせておけいっ!!

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(企画・文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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