『アナ雪』『風立ちぬ』と競ったフランス・アニメ映画 『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』

■「キネマニア共和国」

アニメーションは日本やディズニーだけではなく、世界各国それぞれ独自の文化に根付きながら製作され続けています。

というわけで……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.17》

『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』、フランスが生んだ長編アニメーション映画の秀作です。

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技術的に難しい水彩画タッチのアニメ映画

貧乏な音楽家であるクマのアーネストは、ゴミ箱をあさっているときにねずみの女の子セレスティーヌと出会い、彼女にお菓子屋さんに潜り込む道を教えてもらったことから、親子のような恋人のような不思議な交流が生まれてゆきます。
しかしクマとネズミ、全く異なる生き物であるがゆえに、お互いの世界は大騒動に発展してしまい……。

といったお話の『くまのアーネストおじさんとセレスフィーヌ』ですが、原作はベルギーのガブリエル・バンサンによる絵本。
その淡くシンプルかつどこか風刺画的な水彩の絵柄の魅力を損ねることなく、バンジャマン・レネール監督は忠実に再現しながら、アニメーションならではの躍動感をもって映画化しています。
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水彩画タッチのアニメというところでは、高畑勲監督の『ホーホケキョ となりの山田君』などを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこのタッチをアニメーションで再現するのは並大抵のことではなく、かなりの技術と、それに時間と労力が必要とされますが、そういった労苦を感じさせないのも、やはり水彩画タッチ作品ならではの良さでもあるでしょう。

お国柄が如実に出る海外アニメの愛らしさ

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なお本作は、『アナと雪の女王』『風立ちぬ』とともに第86回アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネート。また2012年度のカンヌ国際映画祭では監督週間特別賞を受賞しています。
これだけで作品のハイレベルを理解していただけることでしょうが、それ以上に本作が内包する本質的な愛らしさや、フランス映画ならではのエスプリなどを気さくに堪能していただきたきたいので、ここではあまりアーティスティックな魅力を訴えることは控えたいと思います。

実際、世界的にアニメーションといえば子供向きか、もしくは芸術作品として製作されることが圧倒的に多く、日本だけが例外的に芸術性と娯楽性を両立させたエンタメ作品を普通に発表し続けているわけですが、だからこそ逆にこういった海外作品は日本人の目から新鮮に映えるわけで、その伝でもアニメーションの道を志したいかたは、なおさらこういった海外作品に着目しておいたほうが後々得策となることでしょう。
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私自身、かつて国産アニメに魅力を感じられなくなった時期があり、その間ずっとこういった海外アニメばかり見ていました。結果として、その時期を得たことで国産アニメをより面白くとらえることができ、同時に海外アニメならではの芸術性などを楽しく拝見する術も身に着けることができたように思います。

その意味では今回、少し残念なのは日本語吹き替え版オンリーでの上映ということで、一見それはディズニー映画の例に倣った当然のことのように思われますが、アニメーションこそお国柄が醸し出されるものであり、その国の言葉で鑑賞してこそ真の味わいを得ることができるでしょう。
真のエンタテインメントには、接する人々を啓蒙させてくれるものがあります。簡明に接することのできる日本語版そのものを否定はしませんが、やはり少し背伸びした形での原語(フランス語)版上映も用意していただきたかったものですし、いずれはそれによる鑑賞も叶うことを願いつつ、今はその映像技術の粋を楽しく堪能しておきたいと思います。

『くまのアーネストおじさんとセレスフィーヌ』公式サイト
http://ernest.gaga.ne.jp/

(C)2010 Les Armateurs – Maybe Movies – La Parti – Mélusine Productions – STUDIOCANAL – France 3 Cinéma – RTBF

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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