『EXIT』観客の高評価も納得の「3つ」の見どころ!高所恐怖症の方は要注意!

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突然噴出した有毒ガスが大都市を飲み込んでいく中、上昇拡散する有毒ガスから逃れて大切な人々の命を救えるのか?

この設定を聞いただけでも面白そうな韓国映画『EXIT』が、11月22日から日本でも劇場公開された。

昨年公開された『スカイスクレイパー』とは違い、肉体派アクションスターの主演ではない点も、実に期待させる本作。

すでに観た人の評価やレビューにも高評価が並んでいるだけに、今回かなりの期待を持って鑑賞に臨んだのだが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものだったのか?

ストーリー

韓国のある都心部に、突然原因不明の有毒ガスが蔓延しはじめる。道行く人々が次々に倒れ、街はパニック状態に陥ってしまう。そんな緊急事態も知らずに、70歳になる母親の古希のお祝い会場では、無職の青年ヨンナム(チョ・ジョンソク)が、大学時代に想いを寄せていた山岳部の後輩ウィジュ(ユナ)との数年ぶりの再会に心を躍らせていた。
しかし、彼らにも上昇を続ける有毒ガスの危険が徐々に迫ってきていた。
取り残されたヨンナムとウィジュは、ロープとチョークと山岳部で鍛えたクライミング技術と体力を武器に、地上数百メートルの高層ビル群を命綱なしで登り、跳び、走る!
町の一番高い高層ビルよりも上の出口を目指し、決死の脱出が今始まる!

予告編

見どころ1:想像を超える毒ガスの迫力!

実は本作鑑賞前に一番心配だったのが、大都市を覆って拡散するほどの大量の毒ガスが、どこから来てどうやって町にばら撒かれるのか、という点だった。

例えば、過去の類似作品のように研究施設が襲われて流出したり、輸送中に盗まれたガスがイベント会場などでばら撒かれるのを阻止するという展開ならば、観客側も具体的にイメージしやすいと思う。

だが、本作のようにジワジワと迫ってくるガスから逃げるという設定だと、どうしても設定自体にムリがあるのでは? そう思えてしまうのも事実。

でも大丈夫! 何故なら本作では、このガス拡散の描写と原因説明の重要な部分が非常に丁寧に描かれているからだ。

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例えば、勢いよく噴出するガスで視界が効かないので、噴出している大元を止められない!という状況を納得させるため、まず、ガス噴出の勢いの凄さを観客に見せつけておいてから、更に拡散力と毒性が強いことをテレビのニュースで報道させた上に、ガスを吸い込むだけでなく、接触しただけでも皮膚から吸収されるという毒性の強さがビジュアルで説明されることで、ビルに取り残された人々の切迫した状況と、これから主人公を待つ危険性がより高まることになる。

そのため、大都市のド真ん中で人々が知らない間に毒ガスが拡散するという展開が、観客にも自然と受け入れられることになり、この毒ガスからどうやって逃れて生き延びるのか? 後の展開への期待が倍増するというわけだ。

何しろ本作の敵は、肌に触れただけでも毒性を発揮する強力な毒ガスだけに、ガスが広がるよりも早く高い場所に登るしかない主人公たちの強い見方になるのが、母親の古希のお祝いの会場となるセレモニーホールに設置されていた防毒マスク!

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現在では、日本でも街中で見かけるようになったAEDの器械と同様に、韓国の公共施設や鉄道の駅などに毒ガス用の防護マスクが設置されている! という描写には、確かにお隣の国と地続きで繋がっているだけに、その危機管理体制の凄さの裏にある韓国の置かれた厳しい現実が感じられた。

こうして、街中にガスが拡散し多くの人々が路上や室内で犠牲になる中、主人公たちのいる、セレモニーホールのあるビルにも、ついに毒ガスが入り込んでくることになるのだが、ビル内で役に立ちそうな物資を調達し、一番高い場所”屋上”を目指して移動する彼らが様々な困難に遭遇する展開は、まさに『ポセイドン・アドベンチャー』や『タワーリング・インフェルノ』といった、パニック映画の王道路線を思い起こさせるもの。

ガスというよりも、もはや濃霧や火災現場の煙といった方がイメージしやすい、その拡散力の凄さと毒性の強さは、是非劇場で!

見どころ2:魅力的な主人公と、家族への愛が泣ける!

本作の大きな見どころとなるのは、やはり主人公ヨンナムが披露する危険なクライミングの数々!

もちろんここでも、ヨンナムの置かれた状況や心の内面を丁寧に描くことで、彼を単なるアクションヒーローには終わらせない工夫が施されている。

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映画の冒頭、公園の鉄棒でフリー・クライミングの基礎練習を黙々と続け、集まって来た子供たちに何を言われようと気にせず続けるヨンナムの姿を見せることで、後に見せる彼の超人的な活躍に説得力を持たせるのが、まず上手い。

更に、社会に認められず自信を失いかけていたヨンナムが、何故これほど危険を犯してまで行動するのか? その理由が実に納得できて、観客が感情移入できるように描かれている点も見逃せない。

主人公が警察官や単に正義感が強い人間という設定ではなく、普通の青年が家族や親類縁者という身近な存在を助けるために行動するという設定のおかげで、彼が命綱を捨ててまで危険な行動に出る理由にも、観客が充分共感できることになるのだ。

韓国で問題となっている若者の就職難を反映してか、主人公のヨンナムは面接に落ち続けて無職の境遇。未だに想いを引きずる後輩のウィジュに会うため、彼女の勤めるセレモニーホールをわざわざ母親の古希祝いの会場に選ぶほど、彼女のことを思っている。

立派な社会人として、もう一度ウィジュの前に現れたい。そんなヨンナムの願いも、突然の毒ガス拡散により絶望かと思われたが、そこからついに男としてヨンナムが行動を起こす展開は、まさに主題歌「スーパーヒーロー」の歌詞が描くヒーロー誕生の瞬間に他ならない。

目の前に困った人がいる時、進んでその手を差し出せる男がヒーローなら、この瞬間ヨンナムはまさにヒーローとしてウィジュの目の前に立ったと言えるだろう。

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広範囲に渡る毒ガス被害に対して救助ヘリの数が足りず、救助要請人数の多い避難場所から優先的に救助されると気づいた主人公たちの行動が笑わせてくれるが、その前に家族の救助を優先させてヨンナムとウィジュが屋上に残る描写を登場させることで、観客側も「この二人は助かってほしい!」と思わずにはいられなくなる。

ところが本作では、後半でこの展開にもう一段のハードルが用意されており、この丁寧な作りのおかげで極限状態の人間性が試されると同時に、ヒーローというものの本質が描かれることになるのが見事!

今は役に立たなくとも、地道にやり続けた経験と技術が後に人々の命を救うことになるという本作の内容からは、運悪く努力が報われなくとも、必ず発揮するチャンスや場が巡ってくるというメッセージを強く感じた。

見どころ3:身の回りの品物を使って生き延びる!

本編中、より高い場所を求めてビルからビルへと移動を重ねるヨンナムとウィジュが、次第に上昇・拡散してくる毒ガスからその場にある日用品を使って生き延びるという展開も、本作の見どころのひとつとなっている。

なぜなら、前述した防毒マスクも使用時間が限られているため、一瞬の躊躇が命取りになる切迫した状況下では、こうした日用品をサバイバルキットへと転用するひらめきや判断力が、彼らの生死を分ける重要なカギとなるからだ。

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例えば、家庭用のゴミ袋や黒板用のチョーク、更にスマホのライトなど、普段見慣れた品物が彼らの危機を救う展開は、意外性と面白さに満ちているので必見!

この他にも、夜遅くに学習塾で勉強している多くの学生や若者の就職難、個人レベルでドローンを所有している人間の多さ、親族の距離の近さや両親に対する敬意など、韓国の社会事情が自然に学べる点も、本作の隠れた魅力と言えるだろう。

最後に

上昇・拡散を続ける毒ガスから必死に逃げ続け、より高いビルへと登っていくというストーリーからは、その面白さや凄さが具体的にイメージし難いかもしれない。

だが、昨年公開された映画『スカイスクレイパー』のように、決してハデなアクションが見どころの作品に終わらせない、そのよく練られた脚本と書き込まれたキャラクターの素晴らしさは、絶対に劇場で観る価値あり!

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前述した通り、職に就けず毎日悶々と過ごしているヨンナムが、公園で子供たちに奇異の目で見られながらも毎日の訓練を欠かさない描写からは、この青年が怠け者でも人生の敗残者でもなく、ただその活躍の機会が与えられる日を待ち続けている存在であることが観客にも充分伝わってくるし、今は役に立たないように見える技術でも、それを活かす晴れ舞台がきっとやってくる、そのためには諦めずに続けることだという、強いメッセージを観客に与えてくれる。

もちろんこの時点では、観客だけがヨンナムの隠れた技術とヒーロー性を知っているので、後に直面する危機的状況に彼がどう行動するか? その展開への期待が高まる点も実に上手いのだ。

加えて、広がる一方の毒ガス被害のために、災害救助ヘリが救援要請に対応できないという展開が、もはや生き延びるには自分の力で脱出するしかない! という説得力や危機感を与えてくれるのも見事!

こうした極限状況の中、偶然居合わせた人々を助けるために勇敢な行動を取るヒーローではなく、愛する家族やウィジュを救うため、自分も怖くて逃げだしたい気持ちを抑えてギリギリのところで踏みとどまって超人的な活躍を見せるヨンナムの姿が、観客の共感を生むことになる。

生きて再び家族に会う、そしてウィジュを無事に家族の元に返すため、命綱無しの危険なクライミングに挑むヨンナムの行動に、高所恐怖症でなくとも手に汗握ることは確実な、この『EXIT』。

最後にひとつだけ。あの展開から二人が何故生き延びてクレーンに登ることが出来たのか?

実はその答えはエンドクレジットの最後の方に一瞬映るので、絶対にエンドクレジットの途中で席を立たないことを、強くオススメします!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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