クラシカルな雰囲気の中に“今”を描出する海洋パニック超大作『ザ・ブリザード』

■「キネマニア共和国」

『ポセイドン・アドベンチャー』『パーフェクト・ストーム』など海難パニック映画は多数作られてきていますが、また新たにこのジャンルの代表作が誕生しました。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.111》

『ザ・ブリザード』、これは実話の映画化です。

ザ・ブリザード

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1952年に実際に起きた
海難事件の映画化

『ザ・ブリザード』は、1952年2月18日未明、アメリカ、マサチューセッツ州ケープコッド沖を襲うブリザードによって船体が真っ二つに裂けて大破した大型タンカーの乗組員の決死のサバイバルと、小型救助艇で彼らの救出に向かった4人のアメリカ沿岸警備隊チャタム支局員の運命を描いたパニック・スペクタクル大作です。

主人公の警備隊隊員ウェバーに扮するのは『スター・トレック』シリーズで若き日のカーク船長や『エージェント・ライアン』で新たなジャック・ライアンを演じて注目株のクリス・バイン。

大破した大型タンカーの仲間たちをとりまとめるシーバートには『ジェシー・ジェームズの暗殺』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、現在は監督業にも進出しているケイシー・アフレック。

ウェバーの恋人ミリアムには、『シンデレラ』でヒロインをいじめる義妹を演じていたホリデー・グレンジャー。

その他、エリック・バナやベン・フォスターなど芸達者が揃えられています。

監督はホラー『フライトナイト/恐怖の夜』からヒューマンドラマ『ミリオンダラー・アーム』まで手掛けるクレイグ・ギレスピーで、その演出はハリウッド映画のオーソドックスかつ良き典型の実践に徹しています。

1950年代を体感させる
さまざまな仕掛けの巧みさ

本作の見所はもちろんCGを駆使した海洋パニック・スペクタクルとそのサスペンスフルな描写の数々にあり、中でもあんな小さな救助艇で嵐の夜に救出に向かうという当時の時代ならではの無謀さなども巧みに描出されています。

一方でユニークなのはそういったリアリティの中、舞台となる1950年代の空気感を意識したのかのように、まるで当時のハリウッド映画に顕著だったスクリーンプロセスの合成手法を彷彿させる古き良き味わいを湛えていることで、これによってどこかしら懐かしさを体感させるものにもなっています。

先に述べたキャスト陣にしても、どこかしらクラシカルな雰囲気を佇ませた者たちのオーラによって、これが1952年に起きた実話の映画化であることを巧みに示唆しています。

一方で、主人公の帰還を待つ恋人ミリアムを単なるお飾りにすることなく、堂々と男たちと対峙しては自己主張を繰り返す”熊の毛皮を着た女”として存在感を際立たせつつ、見る者に心地よく刻印させてくれるあたり、過去を舞台にしたクラシカルな佇まいの中に“今”の映画であることを見事に訴え得ているようにも思えました。

ちなみに今回は3Dで鑑賞しましたが、ナイト・シーンが多い割に見やすく、立体視映像技術の進歩がうかがえるものにはなっています。

ただし立体視を強調した演出はさほどなされておらず、奥行き重視に終始していますので、良くも悪くも見ている途中、3Dメガネをかけていることを忘れてしまうほどのリアルな映像は具現化されているものの、3D鑑賞のためのプラス料金に毎度悩みがちな向きには、2Dでも十分楽しめるかと思われます。

(本作に限らず、最近は3Dで鑑賞してメチャ得した! と思える作品が『ザ・ウォーク』を除くとちょっと少ないかなという気もしますね。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』にしても『白鯨との闘い』にしても立体視がさほど効果的には思えなかったし、たまには画面からピュンピュン何かが飛んでくるようなハッタリをかましたものにもお目にかかりたいものです)

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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