コロナ感染拡大の今こそ観たい、オススメ韓国映画『FLU 運命の36時間』の「3つ」の見どころ

第2回:『FLU 運命の36時間

多くの映画館が長期休館に入り、劇場での新作映画公開も延期になっている中、配信作品をご自宅で楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。

そんな方たちのために、Amazonプライム・ビデオで鑑賞可能な韓国映画の中から、特にオススメの作品を紹介する、この連載。

今回取り上げるのは、今だからこそ観ておきたい韓国の感染パニック映画『FLU 運命の36時間』です。

2013年に日本でも公開された作品ですが、世界中がウイルス感染の脅威に晒されている今観ると、もはや映画の中のフィクションを超えた、リアルな現実として迫ってくる本作。

感染から24時間以内に発症し、遂には死に至る殺人ウイルスに襲われた韓国郊外の街・盆唐。

急速にウイルスが蔓延していく危機的状況の中、果たして主人公たちは治療法を見つけ、感染の世界的拡大を止めることができるのか?

その魅力と見どころを、ご紹介したいと思います。

ストーリー

郊外の街・盆唐に到着した、ベトナムからの密入国者たちを運ぶコンテナ。ところがコンテナ内で鳥インフルエンザH5N1の変種ウイルスが蔓延し、一人を除いて全員が死亡してしまう。
生存者が市内へと逃亡してから24時間もしないうちに、市内の病院で似た症状の患者が続出し、次々と命を落としていく。爆発的な勢いで拡散するウイルスに対し、韓国政府は国家災難事態を発令して盆唐の完全封鎖を敢行。住民たちが感染の恐怖に暴徒と化す中、救急隊員ジグ(チャン・ヒョク)は愛する女医のイネ(スエ)の娘ミル(パク・ミナ)を守るため、街に残された全ての人々をたった一人で助け出そうとする。しかし、地球規模の感染を恐れたアメリカ軍は、空軍によるミサイル攻撃で町ごと消滅させようと動き出していた。

見どころ1:アっという間に蔓延するウイルスの恐怖!

この映画で韓国の街・盆唐を感染の恐怖に叩き込むのは、ベトナムからの密入国者を運ぶコンテナ内で蔓延した、変種の鳥インフルエンザウイルス。

コンテナ内の密入国者たちが犠牲になる中、ただ一人の生存者が盆唐の街に逃げ込んだことから、この殺人ウイルスが街中に拡散されることになります。

感染者の症状から、過去にベトナムで発生した鳥インフルエンザに似ていることが判明するのですが、コンテナ内で突然変異を遂げた、この新種のウイルスの進行は驚くほど早く、最初の感染から24時間後には街中に感染者があふれかえるほど!

しかも感染を重ねる毎に、発症から死亡までのスピードも速まっていくため、医療チームや政府の対応も後手に回り、短時間のうちに盆唐の街全体にウイルスが蔓延してしまうのです。

治療法が判明しない中、世界規模のウイルス感染を食い止めるため、都心部から15キロしか離れていない人口47万人の都市・盆唐を封鎖するかどうか?

この急を要する決断に対し、対策会議で医療関係者と政府の意見が真っ向から対立する描写は、現在我々が置かれている状況で観ると、実にリアルに感じられて見事!

加えて、これから起こるパンデミックへの危険性を訴える医療関係者に対して、目前に迫る国際的な行事を優先させたくて封鎖に消極的だったり、過去の事例でも大丈夫だったと楽観視する政治家たちのいい加減さは、重大な対策会議中にも関わらず、自分たちの食事の注文を優先させるという描写にも、よく表れています。

こうして、殺人ウイルスに対する政府の初動の遅れが、後のパニックや悲劇的展開を招いてしまうのですが、薬局や学校の教室、バスの中など、飛沫感染によって急速にウイルスが広がる描写や、咳の症状から一気に血を吐いて倒れる感染者の姿は、予防する間もなく人間を襲うウイルスの恐怖を観客に実感させてくれるもの。

特に、多くの人々が突然街中でバタバタと倒れる中、状況の分らないまま救助に走るジグの姿や、道路を走るバスや車が交差点で激突炎上し、一気に街中がパニックになるスピーディな展開は、ラストに向けての危機感を盛り上げてくれるのです。

こうした状況を見て、初めてウイルス感染の重大性に気付いた政治家たちが態度を急変させ、自分たちの家族に向かって「今すぐ町を出ろ!」と一斉に電話をかける描写には、身近に危険が迫らないと重大さに気付かない、人間の驕りや傲慢さが込められています。

街全体の封鎖・隔離の混乱に巻き込まれ、非感染者でありながらキャンプに隔離されてしまったジグと、イネ母娘はどうなってしまうのか?

感染拡大を喰い止めるために盆唐の住人をまとめて隔離した結果、隔離キャンプ内でウイルスが蔓延していく様子は、以前ニュースで報道されたクルーズ船の状況を思い出させるもの。

まるで将来を予見したかのようなその内容は、必見です!

見どころ2:ミルを演じるパク・ミナの名演技に注目!

主人公ジグを演じるチャン・ヒョクの不屈のヒーローっぷりが見どころの本作ですが、何と言っても影の主役は、殺人ウイルス治療の切り札となるミルを演じる子役、パク・ミナの名演技でしょう。

他人に対して横柄で、自分勝手な性格に見える女医のイネですが、その後の娘に対する接し方や良い母親ぶりで彼女の好感度が上がるのも、やはりパク・ミナの抜群の演技力があればこそ!

例えば、性格的に好対照なイネとジグを繋ぐ大切な役割に加え、映画終盤に用意された「感染拡大を止められるかどうか?」の重要なシーンで主役を担うなど、子役ながら他の出演キャスト以上に重要な役柄を見事に果たしてくれているのです。

もちろん彼女の他にも、名前に覚えが無くても顔を見れば「ああ、この人ね」と思い出す、韓国映画には欠かせない名脇役のユ・ヘジンや、今や韓国映画にとって”信用できる主演男優”となったマ・ドンソクも出演しているなど、今見返すと非常に豪華な出演キャストの顔ぶれも、本作の大きな魅力と言えるでしょう。

主人公ジグの危機に絶妙のタイミングで現れる、救急隊の先輩役のユ・ヘジンも良いのですが、何といってもマ・ドンソクの悪役ぶりが見られるのは、現在のブレイク前の姿を知る上では貴重かもしれません。

魅力的な出演キャストが繰り広げる、極限状況下の人間ドラマが素晴らしい作品なので、全力でオススメします!

見どころ3:韓国の政治家と大統領の対比に注目!

前述した極限状況下での人間ドラマに加えて、実際に感染の最前線で闘う医療チーム側と、様々な思惑や駆け引きで動く政治家たちの対立が描かれる本作。

例えば、過去の似たような事例を持ち出して、今回も大丈夫だろうと楽観的に構えていた政治家たちが、ウイルスが盆唐の街中に蔓延し始めたことを知るや、自分たちの家族の安全を第一に考えて、一斉に町を離れるように電話し始める描写や、アメリカの言いなりになって市民の犠牲を黙認する行動に走る総理の姿など、政治家たちに対する辛らつな描写が随所に登場することになります。

更には、アメリカから派遣された医療チームや政治家が、韓国内でウイルスを封じ込めるため、隔離地域から感染者が出たら発砲するよう韓国軍に要請するのに対し、韓国の総理も独断で軍による民間人への発砲や、アメリカ空軍による隔離地域への空爆を許可する始末。

こうした周囲の行動に対して、最後まで国民の安全と治療法の発見に全力を尽くそうとする、韓国大統領の姿は必見!

何故なら、政治や外交上の駆け引きに走り、国民を犠牲にしようとする総理とは真逆に、国民の安全を第一に考え、アメリカの無謀な要求に対しても、毅然とした態度で断固抵抗する大統領の姿は、まさに理想の指導者と呼べるものだからです。

アメリカという大国の都合や、世界的感染阻止のために犠牲にされる一般市民の姿が丹念に描かれることで、単にウイルス感染の恐怖を描いた作品に終わることなく、強いリーダーシップや国民を第一に考える大統領といった、理想の政治家の姿を観客に教えてくれる本作。

国家的危機に対しては、これくらいの指導力を発揮して欲しい、観客にそう思わせる韓国大統領の姿を、ぜひお見逃し無く!

最後に

猛スピードで爆発的に感染が拡大していく殺人ウイルスの恐怖と共に、必死で治療方法を探しながら娘を助けようとする主人公たちの姿が描かれる、この『FLU 運命の36時間』。

今の状況で見返すと、誰がいつ感染するか? のサスペンスだけでなく、実際にウイルス感染が起きた際のシミュレーション映画としても、実にリアルな内容に仕上がっていることに気付かされます。

ただ、いくら治療法や感染源が特定できない段階とはいえ、隔離キャンプ内での感染確定者と非感染者の扱いが非人道的すぎたり、マ・ドンソク演じる悪役の目的が分かりにくいなど、詰め込みすぎた人間関係や設定を上手く処理できていない部分が多いと感じたのも事実。

とはいえ、映画の後半から急激に大パニック映画へとシフトしていく展開も含め、そのスケールの大きさとウイルス感染の脅威が観客を圧倒するのは見事!

中でも観客に強烈な印象を残すのは、あまりに大量な感染者の遺体処理方法が明らかになる後半のシーンでしょう。

感染が始まってから24時間あまりの間に、これほどの犠牲者が出ていた!

このウイルスの驚異をビジュアルで観客に理解させる、文字通り”地獄絵図”というしかないその光景は、もはや感染を食い止める手段が残されていないギリギリの状況にあることを、見事に表現しているからです。

近づいてくる人間を軍が撃つか撃たないか? 終盤に用意されたサスペンスが、『新感染 ファイナル・エクスプレス』のラストを連想させる、この『FLU 運命の36時間』。

実際に世界中が感染の脅威に晒されている今だからこそ、ぜひ観て頂きたい作品です!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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