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『あの夏のルカ』傑作ジュブナイル映画になった「5つ」の理由を全力解説

(C)2021 Disney/Pixar. All Rights Reserved.



現在、Disney+ (ディズニープラス)にて映画『あの夏のルカ』が独占配信されています。結論から申し上げれば、 ディズニーおよびピクサーのアニメの技術力、物語の構築力が、またも創作物における到達点に至っていると思うばかりの傑作でした。

そして、ほぼほぼ北イタリアの港町(とすぐそばの海の中)だけで展開する、舞台がとてもミニマムなのも特徴です。加えて、主人公たちは10代前半の少年少女であり、ひと夏のかけがえない体験を綴る「ジュブナイル」もの。中年男性を主人公とし、メッセージもほぼ大人向けになった『ソウルフル・ワールド』(20)とは好対照の内容とも言えるでしょう。

同時に、『あの夏のルカ』は子どもだけに独占させておくのはもったいない、大人こそが涙腺を決壊させてしまう要素もあります。その理由は、「あの頃にこういう友だちがいたなあ」ノスタルジーに浸らせてくれることがひとつ。そして分断や差別が大きな問題となっている現代社会への警鐘にもなっていて、さらに友だちとの関係はもちろん人生においても大切な価値観に気づかされるという、意義深さにもあったのです。以下より、たっぷりと解説していきましょう。

1:差別や迫害を恐れて身分を隠す人々の物語



主人公のルカは「シー・モンスター」である13歳の男の子。彼は生まれてからずっと海の中で暮らしていましたが、ある夏にアルベルトと名乗る少年に出会い、地上の世界へと足を踏み入れることになります。

重要なのは、地上の人間とシー・モンスターが、お互いにお互いを恐れているということ。街ではシー・モンスターを倒すことを良しとする価値観がまかり通っており、海に住むシー・モンスターも地上とのつながりを完全に絶ってひっそりと暮らしているのです。そして、シー・モンスターは身体が乾くと人間の姿になれる性質を持つため、ルカたちは「人間のふり」をして港町に潜り込むことになります。

逆に言えば、ルカたちは水に濡れると本来のシー・モンスターの姿になってしまうということ。それは「バレないように気をつける」というハラハラドキドキのサスペンスとしても存分に機能していると同時に、現実の世界にいる「差別や迫害を恐れて身分を隠す人々」のメタファーとしても読み取れるのです。

これ」は日本においても他人事ではありません。例えば、実在の精神科医の人生を追ったドラマおよび映画『心の傷を癒すということ』(20)では、主人公が幼い頃に在日韓国人であるのに日本人の名前を名乗っていたのは「息子たちが差別や偏見に悩まされないようにするため」という親の配慮が理由であると描かれていました。

『あの夏のルカ』におけるシー・モンスターであるルカの両親が、息子に頑なに地上の世界に行かないこと、興味を持つことすら禁じようとしていたのも、差別や迫害のみならず、命の危険すらあることを恐れていたからでしょう。実際のシー・モンスターは全く危険な存在ではない、それどころか人間の姿になれば(ならなくても)人間と全く変わらない存在なのに、「思い込み」で世界が断絶されているというのも切なくなります。

これは、多種多様な動物たちが共存する理想郷を描いた『ズートピア』(16)の発展系でもあり、世界が分断されてしまう悲劇を描いた『ラーヤと龍の王国』(21)にも通じるテーマです。現実の社会で起こっている問題を、子どもにもわかりやすいフィクションのアニメ映画で提示し、そして観る側に解決のためのヒントを与えるということ……最近のディズニーおよびピクサー作品に通底するその志の高さは、賞賛するしかありません。

ちなみに、エンリコ・カサローザ監督によると、シー・モンスターはカラフルで観客が受け入れられるようなデザインにしていると同時に、ルカのおばあちゃんはちょっと怖いデザインで、両親はその怖さが少し減って、ルカはさらに減っているというバランスにもしているそうです。時代が移り、かつては敵対していた人間とシー・モンスターは、実は友好に共存が可能になるのだという変化(もしくは実は変わっていないという皮肉)も、そのデザインからも読み取ることができました。

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