『ギャングース』を絶対に観てほしい!とことん誠実なエンタメ映画になった「5つ」の理由!

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

公開中の『ギャングース』が実に素晴らしい映画でした! 詳しくは後述しますが、本作はR15+指定がされていながら、陰惨な内容になりすぎることもなく、青春映画として、犯罪映画として、そしてエンターテインメント作品として完成されている、万人にオススメできる内容になっていたのですから。とくに、若い人(高校生以上)にこそ心の底から観て欲しい! その魅力を以下にたっぷりとお伝えいたします!

1:社会の最底辺で生きる3人組を心から応援したくなる!

本作の最大の特徴は、3人の主人公たちの境遇にあります。彼らは少年院を出所した後、まともに仕事に就くことも困難で、次の食事にありつけるかどうかもわからないほどの“社会の最底辺”に身も心も置くことを余儀なくされています。そんな3人が生き抜くために選んだ仕事は、警察に被害届を出せない犯罪行為だけをターゲットにしたタタキ(窃盗または強盗)でした。

ただし、彼らは被害者の元へお金を送り届けたりする“義賊”ではありません。あくまで彼らは自分ためにタタキを繰り返しており、それは許されるはずもない犯罪行為かつ“横取り”にすぎません。客観的に見れば、彼らはとても正義と呼べる者ではないのです。

そうであるのに、劇中では彼らにたっぷりと感情移入でき、そして心から応援したくなる要素が満載になっています。彼らの壮絶な過去および、今の過酷な境遇を知ると「幸せになってくれ!」と願わずにはいられなくなるはず。そして最底辺から這い上がろうとする向上心を持ち、時には絶望的な出来事に逢うも光明を見失うことなく、「絶対に無理だろ!」と誰もが思うほどの巨悪に立ち向かっていく……彼らのそんな姿と行動はそれだけで面白く、三者三様の価値観が交錯した人間ドラマも盛り込まれ、とんでもない作戦のサスペンスも展開し、気づけば「頑張れ!お前ら頑張れ!」とエールを送っている……繰り返しになりますが、本作はとにかく、感情を揺さぶる青春映画、ハラハラドキドキする犯罪映画、何より“面白い”エンターテインメント作品として、申し分のない内容になっているのです。

もっと端的に表すのであれば、本作は最高の“負け犬たちのワンスアゲイン映画(命名:ライムスター宇多丸)”でもあります。人生でくすぶり続けていた負け犬たちが、最大のチャンスを逃さないよう一念発起をし、いかなる困難や絶望に阻まれても努力と研鑽を重ねていく………古くは『ロッキー』、少し前であれば『少林サッカー』、最近で言えば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『SING/シング』などにあった「負け犬の俺たちがやってやるぜ!」な面白さを期待するのであれば、絶対に『ギャングース』も楽しめると保証します。

ちなみに、タイトルの「ギャングース」とは、“ギャング”と“マングース”が由来で、犯罪者だけをターゲットにする主人公たちを、毒蛇を食うマングースになぞらえたものです。やっていることはギャングそのものであると同時に、“その状況に身を置かざるを得ないが”“可愛らしさもあり”“ナメていると食われてしまうほどの凶暴さもある”という主人公たちを表すタイトルとして、これ以上のものはないでしょう。

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

2:原作マンガの面白さと精神性を見事に受け継いでいた!

本作が原作としているのは、雑誌の読者アンケートで常にベスト5をキープし続けたという同名の人気マンガです。この原作マンガを読んだ方であれば、とにかく劇中の詐欺や窃盗の手口が“リアル”であることに驚き、そして現代の日本における貧困および“犯罪の加害者にならざるを得なかった少年少女がいる”という現実を突きつけられ、暗澹とした気持ちになるのではないでしょうか。

この原作マンガの原案およびストーリー共同制作は、貧困や少年少女の犯罪などについて綿密な取材をしてきたルポライターの鈴木大介氏が務めています。物語そのものはフィクションではありますが、描かれる“少年少女の境遇”は実際の出来事に基づいたものなのです。マンガに収録されている鈴木氏の柱(コマの外)の一口解説やコラムを読むと、その根深い問題の一端を知ることができるでしょう。

今回の映画では、原作マンガにあったそれらの貧困や犯罪行為の“リアルさ”および、前述したような魅力的な負け犬の3人組が次々と巨悪と立ち向かっていくエンターテインメント性は全く失われていません。しかも、16巻にもおよぶ長編でありエピソードが分割されている原作の内容を、約2時間で展開するダイナミズムのある物語に昇華するという、映画という媒体に適した見事な再構成も行われていました。

そして、(詳しくは後述しますが)監督と原作マンガとの相性の良さ、誰もがハマり役となったキャスティング、低予算でも決して手を抜くことはない最高のスタッフたちによる画作りなど、もはや奇跡的とも言っていいほどの“巡り合わせ”が本作にありました。マンガの実写映画化のアプローチとしては、これ以上はもう望めないのではないでしょうか。

余談ではありますが、原作マンガの各巻の冒頭には「このマンガは事実を基にしたフィクションです。ただし犯罪の手口は全て実在しますので、ぜひ防犯にお役立てください」という文言があります。映画を観て「犯罪に巻き込まれたり、詐欺に騙されないように気をつけよう!」と思いを新たにできた方という方は、ぜひマンガも読んで勉強してみることをオススメします。

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3:入江監督と原作マンガとの相性が最高!
“甘やかさない”ことも誠実だった!

本作が、『SR サイタマノラッパー』でインディペンデント映画界に新風を吹き込み、『ジョーカー・ゲーム』や『22年目の告白 -私が殺人犯です-』などメジャー公開の娯楽作も手がけている、入江悠監督の最新作であるということも重要です。その監督の“作家性”がこれ以上なくプラスに働いた例が、この『ギャングース』と言えるのではないでしょうか。

入江監督の作家性を一言で表すのであれば「オラこんな村イヤだ」です。田舎もしくは閉鎖的な価値観で凝り固まっている場所で生きるしかなくなっている者たちの葛藤、またはそこからの脱却を描くことがほとんどで、彼らを“搾取”する側の者たちがハラワタが煮えくり返るほどの醜悪さで描かれていたりもするのです。入江監督の前作『ビジランテ』では、そのしんどさと閉塞感が映画という媒体で可能なMAX値に到達していると言っても過言ではなく、本当にゲンナリとさせられました(もちろん良い意味で)。

『ビジランテ』はこちらの記事でも紹介しています↓
□2017年の“良い意味で超イヤな気分になれる”映画ベスト10

そんな入江監督が、リアルな犯罪が描かれた、社会の最底辺で生きる負け犬たちが奮闘するマンガ『ギャングース』の実写映画化を手がけるなんて……映画を観る前から「これ以上の人選は考えられないだろう」と思っていたら、もうそれ以上!劇中では負け犬たちの惨めさや悔しさを見せつけられ、考え得る限り最悪の“搾取”も描かれ、とことん主人公たちをいじめ抜くので、「もうやめてくれ!いいから彼らを幸せにしてやって!」と願いたくなりました。

しかしながら、この“主人公たちを決して甘やかさない”ということも入江監督が持っている誠実な作家性です。最底辺から這い上がることはカンタンじゃない(それどころか客観的には誰もがどう見ても無理)、それでも「やるんだよ!」と立ち向かう主人公たち……彼ら“弱者”に対するまなざしは厳しくもあると同時に、優しさを感じます。こうしたことも、原作マンガの根底にある精神性と全く一緒なのです。もう、“監督と原作マンガとの相性が抜群”という点においては、全ての映画作品のトップと言えるのではないでしょうか。

また、この『ギャングース』の主人公たちが“3人組の負け組の若者チーム”ということは『SR サイタマノラッパー』とも共通しています。他にも“人工的な空間が冷たく無機質に描かれる”や“女性が性的な意味でも酷い目に遭う(だからこそフェミニズム的な視点もある)”や“長回しでスペクタクルや役者の演技をじっくりと映す”など、全体的な雰囲気はもちろんのこと、随所に入江監督の作家性がとことん込められている内容になっているのです。

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

4:高杉真宙とMIYAVIに震えろ!
豪華俳優陣の演技がとにかくスゴい!

ここまで書いてきても、本作『ギャングース』の最大の魅力をまだ申し上げておりませんでした。それは、豪華キャストによる演技! 誰もがハマり役かつ、これ以上のない熱演を見せ、果ては「こいつらは現実のどこかに生きているのかも」と思わせるほどの“実在感”さえもあったのですから!

主人公の3人組の中でも特に(特徴的な顔という意味でも)目立つ加藤諒は、原作マンガにあった不遜さや空気の読めなさは後退し、純粋無垢かつ過度なまでにポジティブなキャラにベストマッチ。妙なタイミングで披露する“変顔”は愛らしいと同時に(安いギャグにとどまらず)物語上で重要な意味を持ち、誰もが大好きにならざるを得なくなります。28歳という実年齢にも関わらず、過去の小学生時代を演じても違和感がない(!)というのも凄すぎる!

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

高杉真宙は“可愛い”というイメージをかなぐり捨てたかのような、“狂犬”のいようなギラついた目で魅せてくれます。コンプレックスの塊のような彼は、劇中でもっとも感情移入ができる人物と言えるでしょう。もちろん“イケメン担当”であった原作とのイメージともぴったりでした。

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

高杉真宙の魅力は以下の記事でも紹介しています↓
□『プリンシパル』は高杉真宙のかわいらしさと“ギャップのある”魅力が全開!原作ファン納得の理由を全力で語る!

『勝手にふるえてろ』でイケてないダメ男にハマりまくりだった渡辺大知は、今回は加藤諒の役を超えて純粋無垢、マスコットキャラクター的な可愛らしさもあってほっこりと笑顔になれました。

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

そして、忘れてはならないのは悪役の魅力。MIYAVI演じる最凶の敵は、とにかく目つきと雰囲気がヤバすぎる(語彙力低下)! 

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

その一挙一動および一言一句には「あっこれガチの人だ」「全力で近寄りたくない」と思うほど。クライマックスではとんでもないアクションも披露しており、もう彼以外の役は考えられなくなります。

さらに素晴らしいのは、そのMIYAVIの部下を演じた金子ノブアキ。

白眉となるのは“振り込め詐欺について社員に演説するシーン”で、「俺たちはジジババを相手にオレオレ詐欺してもいいんだよ!別に心痛まねえし!」という最低な論理を力説! 『SR サイタマノラッパー』のように“ラップっぽくちょっと韻を踏んでいるようにも聞こえる”のも笑ってしまいました。長回しでこれをやりきった金子ノブアキは、今回のMVPに認定していいんじゃないでしょうか。

※以下のわかりやすい振り込め詐欺の解説動画の5分25秒ごろからも、その金子ノブアキの長ゼリフの演説が見られます。

5:実は勇気がもらえる、爽やかな映画だった!

原作でも映画でも『ギャングース』という作品が素晴らしいのは、綿密な取材に基づいた現代日本社会にある問題提起をした上で、その社会に抑圧されてしまっている若者が救われてほしいという切なる願いが込められていることでしょう。それが、映画(もしくはマンガ)といエンターテインメントでしかできない方法で訴えられていること、全く説教くさくないというのも美点になっています。

その“映画でしかできない方法による訴え”の最たるものが、本作のラストシーンでしょう。具体的にはもちろんネタバレになるので書きませんが、入江監督は「(社会からドロップアウトせざるを得なかった子どもたちの苦悩や、特殊詐欺の実態を描くことで)スクリーンの向こう側には、こうした現実を生きる人々が確かに存在していると伝えたかった」と語っており、その想いが最も現れているのが、このラストと言えるのですから。(前述した通り豪華俳優陣の演技が真に迫っていることもあり、彼らのような人が本当に現実にいるように思えてくる!)

また、主人公たちは確かに応援したくなる、感情移入ができる人物たちなのですが、彼らが決して褒められるような生き方をしていない、道義的には決して許されない犯罪行為をしているといった“フラットな視点”も十分に持てるようになっています。ラスト付近にある“サラリーマンの心無い言葉”も、原作からある“あえて”の不謹慎かつ客観的な視点であり、観客の気持ちを一点に集中させない(恣意的に観客を誘導しない)ための工夫とも言えるでしょう。

さらに、入江監督は本作を「今という時代に生きづらさを感じる人の背中を押せるんじゃないかと思っています」とも語っています。主人公たちの境遇や犯罪行為は特殊ではありますが、そうではない市井の人々にも届くメッセージや、勇気付けられる要素があり、爽やかな気分で劇場を後にできるということ……これもまた、『ギャングース』の大きな魅力なのです。

あえて本編のダメ出しをするのであれば、ラストバトルの展開がやや説得力に欠けることでしょうか。入江監督はクライマックスについて「アメリカンニューシネマみたいな行き当たりばったり感を出したかった」と語っており、これも“あえて”そうしたところもあるようですが、さすがに「おかしいぞ?」とツッコミたくなったことも事実です(その後のとあるシーンも「車を一旦停めればいいんじゃね?」とツッコミました)。入江監督はクライマックスでやや勢い任せの展開をすることが多く、今回も気になってしまったのが惜しい!

その他にも、篠田麻里子の出番がいくらなんでも少なすぎるなど、小さな不満点はなくはないですね。でもそんなのは100点満点マイナス1点くらいのこと! とにかく、万人向けの青春映画、犯罪映画、そしてエンターテインメント作品を期待して、『ギャングース』を観てください!

©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社 

おまけ:『ハード・コア』も合わせて観て欲しい!

『ギャングース』の公開日(11月23日)と同日、かなり似た特徴を持つ日本映画が公開されていたのをご存知でしょうか。そのタイトルは『ハード・コア』。

 ©2018「ハード・コア」製作委員会

原作はカルト的な人気を誇ったマンガです(このマンガの原作を手がけた故・狩撫麻礼は、映画『オールド・ボーイ』の原作者である土屋ガロンの別名義でもあります)。

その共通点を箇条書きで挙げると、こんなにたくさんある!

『ギャングース』と『ハード・コア』の共通点

・マンガが原作

・原作と監督との相性が良すぎ

・R15+指定の犯罪映画

・豪華キャスト

・メインの登場人物が社会の底辺のダメ人間(佐藤健は違うけど)

・主人公チームは3人組+1人(しかもそれぞれの役割分担もちょっと似てる)

・負け犬たちのワンスアゲイン映画(命名:ライムスター宇多丸)

・超面白い

・同日公開

・興行収入は苦戦気味(みんな観よう!)

『ハード・コア』で監督を務めた山下敦弘監督は、『もらとりあむタマ子』や『オーバー・フェンス』など、社会に迎合できないダメ人間を描く手腕が半端ないお方。今回はその監督作の多くにある「なんだこの状況?」なシュールな雰囲気、『苦役列車』にもあったネチッこい性描写も最高にハマっていました。

山田孝之と荒川良々はダメ人間にベストマッチ、一方で佐藤健はどこからどう見ても上流サラリーマンのクズ野郎にしか見えなくて最高です。ロボットの見た目も含めてバカバカしいのに、ちょっホロリと泣かせて、ブッ飛んでいるようで実は必然性もあるラストなど、見所は満載です。ぜひぜひ、『ギャングース』と合わせてご覧あれ!

(文:ヒナタカ)

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