『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のメンバーはノリだけで宇宙を救っているわけではなかった話

■「映画音楽の世界」

(C)Marvel Studios 2017

ジェームズ・ガンという監督ほど、作品の質と“オタク心”がバランス良く成立した人はいないのでは? と思えるほどのエンタメ気質。ウルトラマンをこよなく愛し、ホラー畑のクリエイターながら一気にマーベルスタジオが抱える監督の筆頭の1人に躍り出た姿は、どことなく「ノリで宇宙を救う」ガーディアンズメンバーと重なるような気がします。

アベンジャーズチームとは現状繋がりのない、独立した作品としてスクリーンデビュー。オシャレすぎるオープニングで一気に観客のハートをわしづかみにすると、そのまま放すことのないテンションで終幕まで飛ばし続けた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、クリス・プラットという新たな魅力をも発掘したのでした。

あれから3年。ガーディアンズのメンバーはあの時と何ら変わることのない姿でスクリーンに戻ってきました。ちっちゃくなっちゃったのもいるけれど。今回の「映画音楽の世界」では、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス』を紹介したいと思います。

大切なことは全部父さんが教えてくれた

マーベル作品のヒーローといえば何かしらの“正義の原動力”のようなものがあって、そこに意義があるからこそ悪と闘うものですが、ガーディアンズのメンバーは正直なところ「そんなもの」はおかまいなし。結局は宇宙を救う結果になりつつ、それでも根っこにあるのは「遊び心」のようなもので、ジェームズ・ガンは的確にその精神でキャラクターをスクリーンの中に描きます。

前作のオープニングやラストのダンスバトル、本作のオープニングなどはその演出が顕著で、ヒーローたちの熱いバトルシーンを期待する観客を良い意味で裏切っていきます。同時に初めてガーディアンズという集団に触れる観客に「この映画はこんな感じだかんな、振り落とされんじゃねえぞ」とワンシークエンスで無駄なく説明してしまうのだから、上手い。

さて、そんな映画でも結局前作と同じことを描いても意味はありません。ノリはそのままに、けれど新しいものを。本作では新キャラクターを多数登場させ、よりキャラクター個人にフォーカスを当てることで1の続編であり1とは差別化を図っています。特にキャラをまとめて描くのではなく、コンビやチームを組ませることでセットでストーリーを運ばせるあたり、脚本に工夫が凝らされています。

そんな中、今回の物語で一番重要な立ち位置となったのは間違いなくヨンドゥでしょう。本作は「父と子の物語」として描かれている部分が大きく、ピーターを中心にして2人の父親、カート・ラッセル演じるエゴとヨンドゥの存在を明確なテーマとして扱っています。実の父親と育ての父親、この構造をピーターに与えることで、より観客の感情をヒーローとしてではなく1人の“人間”としてピーターに向けやすくしているわけですね。

中でも育てのヨンドゥとの関係性は前作で触れている部分をさらに拡大してなぞっていくので、ピーターとヨンドゥの関係がさらに深く観客に提示されます。父親としての自覚を持ち、ピターの前に立つヨンドゥの姿に胸を打たれた人も多いのではないでしょうか。

この“親子”以外にも、ガモーラとネビュラ、ロケットとベビー・グルート、ドラックスとマンティスのペアリングなどで本作に見せ場を用意するだけでなく続編へのタスキの役割を持たせたり、往年の映画ファンならその姿を見るだけでも思わず胸が熱くなるスタカー=シルベスター・スタローンやガン監督の実弟、ショーン・ガン演じるクラグリンもどう絡んでくるのか。

しっかりと前作を意識した続編であり、次作へのパイプともなる本作。これだけの大作で体裁を整え、なおかつ自身の持つさまざまな“愛情”を詰め込むだけ詰め込んだジェームズ・ガンという監督の才気には驚かされるばかりなのです。

(C)Marvel Studios 2017

音楽だって、ノリだけじゃない

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス オーサム・ミックス・VOL.2(オリジナル・サウンドトラック)

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の持ち味といえば、音楽。特にガン監督自らチョイスしているヴァリアス・アーティストの選曲は1曲1曲が見事なほど映画の中で映像と共存しています。

前作では頭の中が「ウガチャガウガウガ」でいっぱいになった人も多いと思いますが、とにかく撮影に入る前から脚本の準備段階でガン監督は音楽をイメージしているということで、ガン監督ますます恐るべし。ここまで純粋に映像と音楽をセットでクリエイトしていく監督は滅多にはいないのではないでしょうか。

予告編から使用されていたSWEETの「フォックス・オン・ザ・ラン」の軽妙なポップス感は今やさわりを聴いただけでも「あ、ガーディアンズ」と直結するようになってしまったし、映画の方向性を印象付ける大切なオープニングで使用されたエレクトリック・ライト・オーケストラの「ミスター・ブルー・スカイ」など、映像と不思議なくらい完璧な化学反応を起こす選曲が散りばめられています。他にもグレン・キャンベルの「サザン・ナイツ」やジョージ・ハリスンの「マイ・スウィート・ロード」、チープトリックの「サレンダー」など幅広いジャンル・年代から本当によくぞここまで集めてきたものだと驚かされます。

ノリの良い楽曲が並ぶ中、音楽がセリフ以上にエモーショナルな役割を果たしたのがキャット・スティーヴンスの一曲、タイトルもズバリ「父と子」ではないでしょうか。重要なネタバレになってしまうので詳細は伏せますが、映画を一度鑑賞した上で聴いたり二度目の鑑賞でこの音楽が流れてくるだけで込み上げてくるものがきっとあるはずです。

劇伴は前作と同様、タイラー・ベイツが担当しています。ヴォーカルナンバーがポップス調で演出しているならばこちらは壮大なスペースオペラにぴったりなオーケストラサウンド。ロック要素を取り込みながらズンズンとリズムを刻む明瞭なメロディに知らずボルテージを上げられている場面が多かったのではないでしょうか。前作では輸入盤のデラックスエディションにセットでスコア盤が収められていましたが、今回は残念ながらデジタルダウンロードのみ。劇伴も気になった方はチェックされてみては。

(C)Marvel Studios 2017

まとめ

既にジェームズ・ガン監督が3作目への登板を約束している本作。それぞれのキャラクターに“答え”が示されることになるのか。もちろんそのためにはキャストには全員再登板していただいて、ついでに黄色いくちばしのあのキャラクターも活躍の場面を作ってもらえれば。音楽の選曲はどうなるのか。そしてアベンジャーズとの合流など、とにかく今後の展開に期待ばかりが膨らむ本作。その時もまた、なんだかんだでノリで宇宙を救ってほしいものです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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