日本オリジナル・アドで怪獣映画として強力プロモーション!「グレートウォール」DVD、BDの大胆な戦略

■「役に立たない映画の話」

日本映画にせよ外国映画にせよ、DVD、BD等のパッケージ・メディアを発売する際、ポスター、広告などは劇場公開時のアド・パターンを踏襲することが多いが、9月6日にNBCユニバーサルがリリースするレジェンダリー・ピクチャーズ製作のユニバーサル映画「グレートウォール」は、そうした慣例を打破し、日本オリジナルのイラストをアドに採用。

劇場公開時の「万里の長城を舞台にした、エピック・ロマン」的イメージを一新。中国古来の怪獣・饕餮(とうてつ)を前面に打ち出し、あたかも怪獣映画であるかのようなプロモーションとアドバタイジング展開を行い、話題を呼んでいる。

そこで同社のマーケティング部アシスタント・マネージャーの浦谷亮さんに、今回のローカライズの理由や発売を目前にした現時点での予約状況などを聞いてみた。

宮路良平による怪獣イラストを、大胆に使用。

──まず「グレートウォール」という作品は、チャン・イーモウ監督が手がけた大作で、劇場公開時のポスター、チラシなどには饕餮の姿が一切開示されなかったことから、今回の“実は怪獣映画です”とのアナウンスに驚いた人も少なくないと思いますが?

浦谷 「グレートウォール」は、本国を含めて大ヒット作とはなっていないことから、比較的自由にアドを変えたりプロモーションが出来ることになりました。例えば『パシフィック・リム』などは興行成績以上にセルDVD、BDが凄く売れています。この種の映画はおたく方面に行けば行くほど売れると言うことでしょうね。

──では最初から、日本独自のアド・パターンを採用するつもりだったのですか?

浦谷 「グレートウォール」のアドを怪獣映画推しにしたのは、そもそもアマゾン限定のアウターケースのジャケットにイラストを使用するつもりで、プロモーションを実行するNEWCONの田部井さんと相談したところ、こういうものが出てきました。このイラストは宮路良平さんによるもので、まあマッド・デザイナーですね(笑)。池袋新文芸坐のオールナイトのポスターなども描かれている、根っからこういうジャンルが好きな方です。

最初から最後まで饕餮で攻める! 東宝東和の人も驚いた!!

──いわゆるメジャー系メーカーの場合、そうしたアド・パターンの変更が日本独自の裁量では出来ない。クローバル・マーケティングを推進するために世界統一のアドを採用することが、昨今では多いようですが。

浦谷 ユニバーサルの場合、権利関係が厳しい一部タイトルではアドの変更は出来ませんが、そうじゃない場合は、イラストを変えたり付け足したりといったことが、けっこう出来るんです。ただし「怪盗グルー」シリーズのようなアニメ作品は、本社サイドが用意したアド以外は使用出来ません。それでも本社が用意してくれるアド・パターンはもの凄い種類がありまして、バリエーション豊富。我々としても充分に選択の余地があります。

──私の周辺でも「『グレートウォール』って、こういう映画だったの?」「怪獣映画と分かっていれば、映画館に見に行ったぞ!!」という声が、少なからず聞こえました(笑)。

浦谷 劇場公開時のアドを変更したことで、まず宮路さんが彼のファンに向かってウェブ上で呼びかけてくれました。すると“こういう映画だったの?”という声が、たくさん寄せられまして(笑)。その後立ち上げたキャンペーン・サイトではもう、頭から最後まで“饕餮”をメインに扱い、怪獣だらけにしてしまいました (笑)。劇場配給された東宝東和の方が、あのアドを見て驚いていました(笑)。

──当初はアマゾン限定のパッケージのカバーにするつもりだったイラストを、プロモーションとして全面的に使用することになったわけですね。そういう試みは、海外のマーケットにおいても行われていることなのでしょうか?

浦谷 「グレートウォール」のパッケージ・メディアは、日本が世界最後のリリースになりますが、世界中どの国でも劇場公開時のアドを採用しています。ですが日本では変えざるを得ないと、我々は判断しました。他の国は、そういうことにこだわらないのでしょうね。

JR大井町駅に巨大饕餮現わる!! そしてお台場大決戦へと-!!

──とにかく「グレートウォール」のパッケージ・メディアは、怪獣映画だという位置づけで、攻めるわけですね。今後のプロモーションとか、広告展開の予定はどうなっていますか?

浦谷 広告展開としては、主にデジタル広告に力を入れ、「映画秘宝」など雑誌広告、そして目玉企画は9月4日から10日まで、東京・JR大井町駅にある日本最長級のエスカレーターを万里の長城に見立てて、エスカレーター壁面に宮路良平さんの、あのアドを用いた広告を掲出します。掲出するのは、JR大井町駅の中央口改札階(地上2階)からりんかい線大井町駅の改札階(地下2階)を結ぶ、長さ約36メートルに及ぶエスカレーターの壁面で、エスカレーターに乗って降りるまでの約90秒の間中、 “TOUTETSU”が向かってくる迫力のビジュアルで迫ります。

浦谷 さらにプロモーション・イベントとして、9月5日にユナイテッド・シネマ アクアシティお台場で「お台場大決戦上映!」を開催します。ここでの『グレートウォール』上映は、大スクリーンに加えて爆音クラスの大音響で行います。それから、劇中に登場する饕餮のネーミング・キャンペーンの結果発表、そして斉藤守彦さんによるトーク(笑)。

──お、お世話になりますっ!!

浦谷 これだけ日本で大きくアド・パターンを変更するのは初めてのケースですが、実際にこの映画のパッケージ・メディアを購入するのは、40代の方でしょう。正直、レジェンダリー作品は、未だブランドになっているとは言えませんので、こうした形で話題性を喚起する方法が正しいと、我々は考えています。

──発売直前のタイミングですが、現状の予約状況はいかがですか?

浦谷 DVD、BDの予約状況は、このイラストのお陰で大変良好です。この種のライブアクションものは、ひと昔前でしたら売れましたが、今や最も埋没しがちなジャンルです。興収3~4億円クラスの映画は、特に微妙な位置にありますね。でも分かりませんよ。最近ですと『トリプルXX:再起動』が『ワイルド・スピード』シリーズの余波にうまく乗って、ターゲットにしっかり訴求し、予想以上の売れ行きを見せていますから。

実を言うと、このコラムで「これは怪獣映画だ!!」と断言していた。

今年4月に大々的に公開された「グレートウォール」だが、IMAX 3Dで試写を見た筆者は、「これって怪獣映画じゃん!!」と。その時のうれしい驚きを、シネマズby松竹の連載コラム「役に立たない映画の話」に書いている。
こちら

このコラムがパッケージ・メディア関係者の目に触れ、「グレートウォール」を怪獣映画としてプロモートすることになった・・・かどうかは分からないが(笑)、とにかく“怪獣映画が大好きな国”の国民にとっては、こうした的を射たローカライズは大歓迎である。

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(取材・文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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