3月3日ひな祭りに 3本のひな祭り映画を

引用元:https://goo.gl/PoL36s

3月3日は桃の節句、ひな祭りの日。いわゆる女の子のお祝いの日ですね。

もともとは奇数が重なる日=説日(せちにち)に邪気を祓うという、中国から伝わった暦上の行事・五節句(1月7日=人日、3月3日=上巳、5月5日=端午、7月7日=七夕、9月9日=重陽)のひとつで、これが平安時代の貴族階級の子女の人形遊びと合わさって、江戸時代の頃には庶民にも普及し、いつしか女の子のお祝いの儀式として人形を飾るしきたりが定着したとのこと。

桃の節句と呼ばれるのは、旧暦の3月3日(大体今の暦では3月末か4月頭くらいになります)がちょうど桃の花の咲く頃で、その時期の行事ということ。また、桃も邪を祓う縁起の良いものとされたことから、いつしかそう呼ばれるようになりました。

この日、女の子のいるご家庭ではひな人形を飾ったり、お祝いの膳をいただいたり、いろいろかとは思われますが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.294》

ひな祭りやひな人形がモチーフになった映画をちょっと調べてみました!

ひな壇が川を下る
寺山修司監督の『田園に死す』

田園に死す
中国では古来より3月3日=上巳の日に川で身を清める禊の習慣があり、もともとはこれが日本に伝わり、やがては川に紙や草木でできた人形を流して厄を祓う“流し雛”の風習が生まれたとされています。

松竹映画の名匠・木下惠介が原作・脚本、その愛弟子の大槻義一監督(大槻ケンヂの親戚です)のデビュー作『流し雛』(62)は、その名のごとく流し雛をモチーフに若い男女の純愛を描いた作品ですが、残念ながらソフト化されてないので、今ではあまり見られる機会がありません。

そうなると、流し雛どころか、ひな壇そのものが川を流れてゆく映画『田園に死す』(74)があります。

これは歌人に俳人、劇作家、映画監督、競馬評論家などなど多彩な才能を発揮し続けた寺山修司(昨年話題になった『あゝ、荒野』の原作者でもあります)が発表した2本目の長編映画で、自身の生い立ちや風土、母への愛憎などを虚構的イメージの洪水で紡ぎあげていく幻想譚で、その中にひな壇が川を流れるインパクトあふれるショットが登場するのです。

その前に母親が藁に包んだ赤子を川に流すシーンがあり、それが流し雛へ、そしてひな壇の川下りへ連なっていくわけですが(この時流れる『惜春鳥』の歌も効果的です)、いかようにも解釈が可能な作品なので、ご自身の感性を試されてみるのも一興でしょう。

ひな祭りの過去がドラマの
カギとなる『時をかける少女』

時をかける少女
ひな人形にはどことなく和のファンタジーを感じますが、大林宣彦の名作SFジュヴナイル映画『時をかける少女』(83)の中には、原田知世扮するヒロイン芳山和子と、彼女がひそかに思いを寄せる深町一夫の幼い日の回想シーンが出てきます。

それは桃の節句の日、ふたりの幼子はひな壇にひな人形が飾られた部屋の中で遊んでいるうち、ふとしたことで鏡を割ってしまい、お互い指に怪我をしてしまいます。

この怪我がクライマックスの大きなカギになっていくのですが、未見の方のためにこれ以上は言わぬが花。

ひな壇の赤、部屋の絨毯の赤、そして血の赤と、そこでの赤を基調とした鮮烈な色彩感覚が、どこかしら幻惑的で少し怖いくらいの情緒を呼び起こしています。

おもちゃ箱をひっくり返したようなポップかつアヴァンギャルドなセンスで“映像の魔術師”と謳われることも多い大林監督ですが、その中には和の情緒を盛り込んだものが多数あり、本作を含む尾道三部作(『時をかける少女』はその二作目にあたります)もその代表格といってもいいでしょう。

なお『時をかける少女』はこのほかにもさまざまな人形が巧みにドラマを盛り上げるアイテムとして登場します、その中には不気味に映えるものもあり、やはり人形ってなにがしかの念みたいなものが籠っているのかもしれません。

桃の精たちが舞い踊る
黒澤明監督作品『夢』

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世界に名だたる巨匠・黒澤明監督が“こんな夢を見た”という8つの夢をモチーフに描いたオムニバス映画『夢』の中にも、ひな祭り……と呼ぶより桃の節句といった響きのほうが似つかわしい素晴らしいエピソード『桃畑』が登場します。

ひな祭りの日、姉の友達が6人来たはずなのに5人しかいない。

不思議に思った“私(黒澤監督自身の幼い日の投影)”は、裏口に一人の少女を見つけ、彼女を追いかけていくと、裏山の桃畑に大勢の男女がひな壇のように集まっていました。

彼らの正体は樹木の精=木霊で、桃の木を切ってしまった“私”の家にはもういられないと、責めますが、そのことを悲しむ幼い彼を見て態度を改め、最後の舞を披露します……。

まさに『夢』のタイトルにふさわしい桃の精=動くひな人形たちの壮麗な舞は、圧倒的映像美をもって見る者をひと時の夢の世界へ誘ってくれるとともに、黒澤監督のノスタルジックな想いが見事に描出されており、全8話のエピソードの中でも傑出したものになっています。
(余談ですが、『夢』のメイキングは大林宣彦監督が務めています)

ひな祭りシーズンの今
見るにふさわしい映画

さて、ひな祭りシーンの今の時期、劇場で見るにふさわしい新作映画は何かないかと探してみますと、やはり女の子がいっぱい出てくる映画か、女の子が大活躍する映画ってことになるでしょうか。

女の子+和の情緒ということでは競技カルタを題材にした大ヒット作の完結編『ちはやふる―結び―』(3月17日公開)が今の季節にぴったりかもしれません。広瀬すずをはじめ、上白石萌音、松岡茉優らの着物姿も大きな見どころの一つでしょう。

©2018映画「ちはやふる」製作委員会 ©末次由紀/講談社

強く美しいララ・クロフトの大冒険を描いた大人気ゲームの映画化『トゥームレイダー ファースト・ミッション』(3月21日公開)は、かつてアンジェリーナ・ジョリーも演じたヒロインを今回アリシア・ヴィキャンデルが演じているのがお愉しみです。

アニメーション映画では何といっても『映画プリキュア スーパースターズ』でしょう。映画プリキュア・シリーズは新旧プリキュアを大挙出演させたオールスターものを毎年春に発表し続けていますが、その華やかさはやはりひな祭りに似合っていますね(というか、小さい女の子たちはやはりこれが一番うれしいかな?)。

(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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