今年の本命は、どの作品になるのか?2017年公開の日本映画ラインナップを検証する!!(前篇)

2016年年間興収は、歴代最高額になることだろう。

君の名は。 メイン

(C)2016「君の名は。」製作委員会

先輩 もう正月も半ばに入ってしまいましたが、本年もこのメンバーであーだこーだと映画のことを語っていきたいと思います。よろしくどーぞ。

爺 こちらこそ、よろしく。で、今日は今年の日本映画のラインナップを品定めするんじゃろ?

先輩 そうです。年賀状にラインナップが載っていたり、ラインナップを送ってくれる配給会社があるので、それを見て今年楽しみなのはどの作品なのかと語り合おうという趣旨です。

爺 その前に、昨年の映画業界はどうだったんだい?

先輩 年間興収がおそらく2300億円台と、歴代新記録を樹立すると思います。このあたりは、今月下旬に発表されると思いますが。

後輩 それは確かに凄いんですが、その2300億円のうち300億円が「シン・ゴジラ」と「君の名は。」の興収なんですよね。

女の後輩 総じて日本映画が好調な年でした。

先輩 年末になって、ちょっと失速したけどね。この正月映画興行は「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」「バイオハザード:ザ・ファイナル」と、外国映画3本がトップになりそうだし。でもやっぱり「君の名は。」の大ヒットがあるから、おそらく日本映画の年間シェアは65パーセントを超えると思うよ。これは2012年以来のこと。

爺 この日本映画の勢いは、今年も続くのかな?

先輩 うーん・・・どうでしょう。ここ数年、確かに東宝配給作品が強い。でもすべてがヒットしているわけじゃないし。

女の後輩 「君の名は。」公開以降、大ヒット作がなかったように感じます。

先輩 そうなんだよ。東宝の作品だったら全部ヒットするというわけじゃないんだよ。でも、ここでは配給会社別にラインナップを云々するけどね(笑)。

観客の「本物志向」に答えるであろう山田洋次監督作品。

©2017「家族はつらいよ2」製作委員会

爺 まずは松竹のラインナップから見てみようか。

先輩 今年の目玉は・・・・。

爺 山田洋次監督の「家族はつらいよ2」だろう。

後輩 早いっ!!

爺 山田監督のような巨匠が、喜劇に挑んでいる。これは注目されると思うんだ。

先輩 確かに「家族はつらいよ」はヒットしました。でも、なぜ「家族はつらいよ2」をそこまで評価するんですか?

爺 評価というか期待じゃな。ひとつには、今、配給会社の人やプロデューサーと話をしていると、「作家主義」という言葉が頻繁に出てくるんだよ。確たる実績を持った巨匠が、その実力を余すところなく発揮した力作。そういう作品がこれから求められるようになるだろうと。

女の後輩 このところ、お手軽な作品が多すぎたという反省もあるんでしょうか?

爺 そうかもしれんが、やはり本物志向という風潮は感じるぞ。公開本数は相変わらず多い。その中で突出するためには、売れ線の俳優を使ったりベストセラーの原作を映画化するという手もあるが、やはり作品の質が高い。監督の作家性が出ている。映画の最大の売りものは、これにつきるんじゃよ。

先輩 それには賛成です。

爺 山田監督は誰もが認める巨匠だが、「男はつらいよ」シリーズが終了して、藤沢周平原作作品などを経て、「家族はつらいよ」という喜劇に行き着いた。というか戻ってきたわけだな。喜劇と言うと軽く思われるかもしれんが、安易にお笑いタレントを使うのではなく、ワンカットワンカット、きちんとリハーサルを繰り返した上で演技をし、それを監督が演出している様は、やはり本物だと思うよ。

女の後輩 まだ作品を見ないと何とも言えませんが、そういう演出をした上で観客が楽しめる作品になっているのならば、たしかに評判になりそうですね。

後輩 それと松竹のラインナップには、「一週間フレンズ。」「PとJK」「ReLIFE リライフ」「ピーチガール」「兄に愛されすぎて困ってます」など前年同様、少女マンガの映画化作品が顔を揃えていますが。

先輩 それについては以前も話したけれど、ここから新しい才能が出てくれば良いと思っているよ。監督にせよ、俳優にせよ。

原作のある映画について、もう一度確認しておきたいこと。

3月のライオン 桐山零 神木隆之介

(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

女の後輩 先輩は今、愛読書である「3月のライオン」の実写映画版が、どういう内容になっているか気になって仕方がないのよ。

先輩 今まで「映画と原作は別」と認識してきたけれど、今回ばかりは、あの原作がどういう映画になっているのか、気になって気になって。正直、試写を見るのが恐い。見るけどさ。

爺 原作と映画は、もちろん別物じゃよ。メディアが違う。

先輩 ただ、こうなって分かったのは、毎月のように公開されているコミック原作の映画には、こういう気持ちを抱いているたくさんの読者が、それぞれの作品にいるんだなあ、ということです。

後輩 それはそうですよ。だからヒットすると思って映画化するわけですから。

女の後輩 原作ものの難しさは、やはり原作のイメージや内容をどう映像にするか。そこにつきますよね。結局はその原作にどういう姿勢で挑むのかという、クリエイターの姿勢が問われるんじゃないでしょうか?

先輩 年末にね、フランシス・フォード・コッポラ監督の「アウトサイダー」のディレクターズ・カット版BDを見たんだよ。あれはS.E.ヒントンが書いたヤング・アダルト小説を映画化したんだけど、その発端というのはコッポラの元にカリフォルニア州ノフレズノの中学校から、荷物が届くんだ。それには「ヒントンの『アウトサイダー』を、ぜひ映画化してください。これはあなたが映画化するに相応しい作品です」と、中学2年生100人の署名が入っていた。それでコッポラは興味を持って「アウトサイダー」を読み、映画化を決める。

女の後輩 そういうプロセスで小説を映画化するというケースもあるんですね。

爺 この場合は、監督が原作に惚れ込んだのではなく、小説の愛読者である中学生たちの熱意に応じてというケースじゃが、確かにそういう例があっても良いね。

先輩 森田芳光監督が「それから」を映画化する時、「原作のどこを映画化したいですか?」と聞かれて「読後感」って答えたんです。これもまた原作を忠実に映像化するというよりも、森田監督というフィルターを通して映画にする。クリエイターの姿勢としてありだと思うんです。

後輩 そうですが、それだと原作をどう解釈するかで、内容が変わったりしませんか ?

先輩 それはそれで、良いんじゃないかな。だから今回も、大友啓史監督の「3月のライオン」になっていればオーケー。でも、魂の部分は羽海野チカが存在してないとイヤだというのが、原作ファンの希望。というかワガママなんだけどね(笑)。

夏休みは東宝配給作品が、マーケットを席巻するだろう。

名探偵コナン から紅の恋歌 ティザー

(C)2017 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

爺 「3月のライオン」の話題が出たところで、東宝のラインナップを見てみようか。

後輩 「3月のライオン」は、アスミック・エース=東宝共同配給ですよね。

先輩 いや、正確には東宝=アスミック・エース共同配給。こういう場合、宣伝と営業を両社で分担するんだけれど、営業をやる会社のほうが先にクレジットされる。そういうルールがあるんだって、僕も最近知った(笑)。

女の後輩 東宝の2017年公開作品は、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「名探偵コナン」「ポケモン」「妖怪ウォッチ」シリーズの新作と、このあたりは例年盤石ですね。

爺 「君の名は。」の大ヒットに隠れた形になったが、昨年は「ドラえもん」がリニューアル以降の興収新記録、「名探偵コナン」も興行記録になった。強いシリーズはとことん強いなあ。

先輩 今年の東宝の夏休み作品は強力ですね。「ポケモン」は20周年を記念して「劇場版ポケットモンスター キミにきめた!」が7月15日から、ワーナーと共同配給の「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」が8月4日から、岩井俊二監督作品をアニメでリメイクする「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」が8月18日、米林宏昌監督の新作「メアリと魔女の花」、それとなぜかラインナップに載っていない「ゴジラ」のアニメ版も夏に公開されるはずです。

後輩 それだけで、もうマーケットがいっぱいになりませんか?

先輩 営業力がものを言うのさ。それと「君の名は。」が8月最終週に公開されて大ヒットしたことで、強い作品に公開時期は関係ないってことが証明された。

後輩 これだけ夏休みに出されると、ハリウッド・メジャー系配給会社は大規模な公開がしづらくなりますねえ。

爺 ただ、昨年東宝は自社資本だけの、所謂プロパー作品として「シン・ゴジラ」を製作して、これも大ヒットしたわけだが、今年はそういう作品がないようだな。

先輩 確かに「シン・ゴジラ2」も怪獣映画も、プロパー作品もありませんね。それだけ「シン・ゴジラ」は特別な取り組みだったんじゃないでしょうか?

女の後輩 私は米林監督のファンですから、「メアリと魔女の花」には期待してるんです。

先輩 僕は大根仁監督の新作が今年も見られるのがうれしいな。9月に公開される「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべてを狂わせるガール」、それと「打ち上げ花火・・」のシナリオも大根監督が手がけているし。

東宝のラインナップから感じられる、微妙な変化。

関ヶ原 書影

爺 テレビ局や出版社がイニシアティヴをとる製作委員会作品が多いのは、東宝の例年の特徴なんだが、それが微妙に変わってきた感じがする。わしだけがそう感じるのかな?

先輩 テレビドラマの劇場版が少なくなりました。まあ「昼顔」が6月にありますが。かつてはテレビドラマがスタートする前に劇場版の公開をアナウンスしたものの、ドラマの視聴率が今いちで劇場版の入りも・・・という例も、他社も含めてありました。それだけテレビ局も企画に対して慎重になっているのかもしれません。

後輩 いやいや、僕は新しい企画にチャレンジしたいのだと思います。やっぱりその言い出しっぺは監督で、彼らがやりたい題材に対して、以前より門戸を開いているのではないでしょうか?

爺 8月28日から公開されるアスミック・エース共同配給の「関ヶ原」は、原田眞人監督がなんとか実現させたくて、ここ数年奮闘していた。それがようやく実ったのはめでたいね。

先輩 先ほどの話ではありませんが、原作ありき、製作委員会主導といったここ数年のパターンから、クリエイターの意向を反映させる姿勢が目立ってきたのは感じますね。これまた繰り返しになりますが、映画が商品として成立している、そのコアにあるものは映画としての面白さ、作品のクォリティの高さなんですから。

爺 今、東宝は大きなマーケットを抱えているわけだから、全国公開を前提にした作品で、なおかつクリエイターのモチベーションが高い企画、ということになってくるだろうが、大きなマーケットを抱えているということは、小さなサイズの作品も充分に上映出来る余地があるわけだからな。そのあたりの多様性というか柔軟性には、期待したいところだ。

先輩 とりあえず、このあたりで休憩をとりましょうか。その後で東映、日活、ワーナー作品について触れましょう。

(後篇に続く)

(企画・文:斉藤守彦)

    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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