『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』/ナタリー・ポートマン、魂の演技

■「〜幻影は映画に乗って旅をする〜」

先日発表された第88回アカデミー賞で、惜しくも敗れはしたものの、ナタリー・ポートマンは最後の最後まで主演女優賞レースのトップコンテンダーとして歩み続けた。

彼女が『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』で演じたのは、世界で最も有名な女性の一人、ジャクリーン・ケネディ。かのジョン・F・ケネディ大統領の妻であったジャクリーンを、ポートマンはキャリア最高とも言える演技で見事に演じ切ったのである。

〜幻影は映画に乗って旅をする〜vol.23:『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』/ナタリー・ポートマン、魂の演技

(C)2016 Jackie Productions Limited

ジャクリーン・ケネディ。かつてのファーストレディであった一人の女性の、ある数日間を描き出したのが、この『ジャッキー ファーストレディ 最後の使命』だ。その数日間というのは、言わずもがな、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された直後の数日間のことだ。

これまで数多く作り出されてきた、「ケネディ暗殺」を題材にした映画たちの中でも、この映画が描き出すものは大きく異なっている。政治的な側面や歴史的な側面を排し、あくまでも目の前で夫を失った一人の妻の物語であり、母親の物語であり、そして自らに課せられた使命を全うするファーストレディの物語として、実に冷静にその悲劇を描き出すのだ。

それはまさに、主演のジャクリーンを演じる女優の力量に、作品のほぼ全てが委ねられていると言っても間違いない。本作の企画段階では、プロデューサーを務めたダーレン・アロノフスキーがメガフォンを執り、ジャクリーン役にはレイチェル・ワイズが候補に挙がっていたのだが、結果的にチリの新鋭パブロ・ララインにバトンタッチし、アロノフスキーの代表作でオスカー女優となったナタリー・ポートマンがジャクリーンに選ばれたのである。

もっとも、実在の人物を演じるという時点で、アカデミー賞をはじめ賞レースで愛されるタイプの役柄であることは間違いない。それでも、高い下馬評を持ったまま、賞レースの最後まで走り抜けていくことは容易なことではない。

しかしポートマンは、ヴェネツィア国際映画祭で作品がお披露目されて以降、それまで以上に評価を伸ばしつづけた。世界中から集めるだけ集めた高すぎる期待にほぼ完璧に応える渾身の演技で、まさに主演女優として最高の務めを全うしたと言ってもいい。

ポートマンといえば、『レオン』でのマチルダ役で鮮烈な登場を果たし、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』でブレイクを果たした。女優としての圧倒的な才を十代の頃から発揮した彼女は、日本でも人気が出るタイプの愛らしいルックスを持ち得たアイドル女優として注目を集めていた。いわば現代に蘇ったオードリー・ヘップバーンのような存在である。

そんな彼女が、それまでのイメージを全て覆して、実力派女優として次のステージに進んだのが、2004年に公開された『クローサー』だ。

クローサー (字幕版)

名作『卒業』で知られるマイク・ニコルズ監督晩年の最高傑作である同作は、ロンドンを舞台にした男女四人のラブストーリーである。印象的な台詞の応酬にただただ魅了される、大人の恋の物語だ。

ジュード・ロウ演じる小説家を志す男が、街の中で運命的に出会う若きストリッパー・アリスをナタリー・ポートマンが果敢に演じている(この二人の出会いの場面がまた最高である)。当時23歳の彼女は、それまでの少女の姿から一変し、エロティックなムードを匂わせる大人の女性へとイメージチェンジを遂げたのである。愛らしさとは異なる、煌びやかな華を持ったこの役柄で、彼女はゴールデングローブ賞を受賞し、初めてアカデミー賞の候補に挙がる。

同作を契機に、彼女のキャリアはより充実したものとなり、年齢を重ねていくごとに落ち着いた役柄からアクション映画への出演などと幅広い。それだけでなく、自らプロデュースを務めたり、短編オムニバス映画で監督を務めたりと、映画界への貢献は著しい。そして2010年に『ブラック・スワン』でオスカーを受賞。いずれも90年代の彼女からは想像できないほど、高い将来性を感じさせてくれる。

今回の『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』での彼女は、脱アイドル女優としての集大成を見せてくれている。むしろ、20年以上のキャリアで最高の演技は、今後彼女がハリウッドの中心人物となることを予感させてくれるのだ。

すっかり実力派女優としての貫禄を携えたポートマンではあるが、最近ではテレンス・マリック監督の『聖杯たちの騎士』や『Song to Song』で、久しぶりにアイドル女優としての愛らしい姿を見せてくれているのだ。この二面性が、彼女の魅力を無限大にさせているのかもしれない。

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(文:久保田和馬)

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