問題作『君が君で君だ』、池松壮亮の役者魂が炸裂するランジェリー姿を見逃すな!

(C)2018「君が君で君だ」製作委員会 

映画監督だけでなく、自身が主催する劇団「ゴジゲン」での演劇活動や役者としての映画出演、更にはエッセイの出版など、多方面で精力的に活躍している松居大悟監督。

7月7日より全国公開中の松居大悟監督の新作映画『君が君で君だ』は、主演に池松壮亮・満島真之介・大倉孝二の3人を迎え、更にヒロインには韓国から女優のキム・コッピを招くという、実に期待させるキャストが揃った作品となっている。

その攻めた設定から個人的にも非常に気になっていた本作を、今回は公開初日の夜の回で鑑賞して来た。残念ながら場内は半分程度の入りだった本作だが、果たして気になるその内容とは一体どの様な物だったのか?

ストーリー

大好きな女の子の好きな男になりきり、自分の名前すら捨て去った10年間。
彼女のあとをつけて、こっそり写真を撮る。彼女と同じ時間に同じ食べものを食べる。向かい合うアパートの一室に身を潜め、決して、彼女にその存在をバレることもなく暮らしてきた。しかし、そんなある日、彼女への借金の取り立てが突如彼らの前に現れ、3人の歯車が狂い出し、物語は大いなる騒動へと発展していく??(公式サイトより)

予告編

その攻めた設定に観客騒然の本作!

一人の女性を同時に片思いしたまま10年間、彼女の行動を全て監視し「姫」と呼んで崇拝し続ける3人の男たち。彼女が好きな有名人である、尾崎豊(池松壮亮)・ブラット・ピット(満島真之介)、それに坂本竜馬(大倉孝二)にそれぞれがなりきって、自分の本名さえ捨てて彼女の行動を見守ることを選択した彼らの行動は、果たして愛情か、それとも異常か?

まるで観客の常識が試されるかの様なこの設定を見て既にドン引きされる方には、その内容を受け入れるのは正直ちょっと厳しいと思われる本作。

なぜなら主人公たち三人が肩を組んで笑っているポスターやチラシのビジュアルからは、何か爽やかな青春映画といった印象を受けるだけに、本編を観た時に感じるギャップが結構大きいからだ。

ただ今回は、松居大悟監督の個性と独自の恋愛観を全面に出し切ったかの様な内容だけに、「ゴジゲン」の舞台や松居監督の過去作を追いかけて来た観客には、逆にかなり魅力的な映画に感じられるはずの本作。実際ネットでのレビューや感想も、見事に肯定派と否定派の両方に分かれており、実際自分も序盤はこの三人の行動にかなり拒否反応を持ったが、後半からの展開にはこの三人なりの決意や覚悟が感じられて、それまでの印象が覆されたと言っておこう。

確かに一見異様な愛情表現に見えるが、後述する様に実は意外に恋愛のリアルな本質が隠されているその内容は、是非劇場でご確認を!

(C)2018「君が君で君だ」製作委員会 

一見異様な設定だが、実は恋愛のリアルな側面を描いている?

実はネットのレビューなどで見て気になっていたのが、ヒロインのソンがいまいち美人でも可愛くもないのに、何でこの三人が10年間も追いかけるのか分からない、そんな意見だった。だが、実はこの部分こそが本作の重要な点であり、敢えて言葉の通じない韓国の女優を起用した点と合わせて考えると、そこに本作の描こうとする部分が見えてくることになる。

そもそも実際の恋愛においては、誰もが認める美人と恋に落ちて結ばれることは少なく、むしろ他人から見たら「何であんな人と?」と思ったりする様に、それこそ好きになる相手のタイプは人によって全く異なっているのが現実だ。

本作中の、ヒロインの好きなところを順番に上げて行くシーンでの、この三人の幸せそうな笑顔に象徴される様に、本作で描かれるのは一人の女性の存在をありのまま全て受け入れようとする、男にとっての究極の愛の形なのだ。

こうした松居大悟監督の独特の恋愛観は、彼の恋愛対談集『さあハイヒール折れろ』を読んで頂ければ一目瞭然なので、本作を観て不満や疑問を抱いた方は是非一度こちらをお読み頂ければと思う。

さあハイヒール折れろ

最後に

実際にソンの元カレだった竜馬と、ソンを不良から助けようとして、逆に彼女に助けられたことでソンに惚れてしまったブラピ。

この様に、直接自分からソンとの関わりを持っていた二人に対して、友人のブラピに流される形で、むしろ一歩退いて一番冷静に状況を見ていた尾崎が、最終的に一番ソンにハマっている点や、一人の女性を三人の男性が10年間ストーカーし続け、相手の女性を崇拝し神格化するあまりもはや宗教と化しているなど、恋愛が一種の錯覚や思いこみから始まり、やがては自分が自分にかけた催眠や呪いから覚める時が来る。そんなテーマや独自の恋愛観に拒否反応を抱いたり共感出来ない観客には、もはや理解不能な描写が続くことになる本作。

このまま一般的な恋愛映画のハッピーエンドに着地するのか?という観客の予想を、見事に裏切るラストの展開まで、登場人物が誰一人幸せにならず救われないという内容には、きっと「うわ、予想と全然違った」、そんな感想を抱かれた方も多かったのでは?

ただ本作が描こうとした、男が考える愛し方と女性の望む愛され方との間に存在する絶望的な隔たりには、ここまで極端ではないにしろ多くの観客にとってきっと思い当たる点があるはずだ。

映画の序盤で感じた違和感や拒否反応を、最終的にラストで感動まで持って行ってくれるのは、やはり本作の出演キャストの素晴らしい演技によるところが大きい。特に、今回尾崎豊を演じる池松壮亮の振り切った演技は素晴らしく、女性用の下着姿になったり、ある物を黙々と食べ続けるシーンなど、その役者魂は正に必見!

もちろん、その他のキャストも皆素晴らしく、特に高杉真宙の全く反省の無いクズ男演技と、向井理の突然怒りを爆発させるヤクザ振りも、普段の彼らのキャスティングとは違い非常に新鮮なので、是非お見逃し無く!

(文:滝口アキラ)

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    ライタープロフィール

    滝口アキラ

    滝口アキラ

    滝口アキラ 映画ライターにしてブルース・リー研究家。主な著書に、「ブルースリー超全集」「俺たちのジャッキーチェン」「俺たちの007」などがある。映画のコミカライズや、日本オリジナル映画主題歌などの、「失われた映画カルチャー」にも造詣が深く、TBSラジオ「ウイークエンドシャッフル」へのゲスト出演、今関あきよし監督作品への声優出演、更には「実際に映画に出演する映画ライター」として、現在「毎月1本必ず映画に出る」をノルマに活動中。その抜群の企画力と、交友関係の広さには定評がある。

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