『この世界の片隅に』がトトロ以来の快挙!キネマ旬報ベスト・テン発表!

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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

今年で第90回目を迎えるキネマ旬報ベスト・テンと個人賞が1月10日、発表された。
アメリカのアカデミー賞よりも長い歴史を持つこの賞は、日本で最も信頼性の高い賞といえよう。今年も実にバラエティに富んだ、それでいてバランスのよい20本が選出された。日本映画と外国映画それぞれのベスト・テンを順にチェックし、今年の受賞結果を総括してみようと思う。

<日本映画ベスト・テン>

1位『この世界の片隅に』
2位『シン・ゴジラ』
3位『淵に立つ』
4位『ディストラクション・ベイビーズ』
5位『永い言い訳』
6位『リップヴァンウィンクルの花嫁』
7位『湯を沸かすほどの熱い愛』
8位『クリーピー 偽りの隣人』
9位『オーバー・フェンス』
10位『怒り』

 まずは日本映画のベスト・テン。1位に輝いたのは、11月の公開から大ヒットが続く『この世界の片隅に』。本作の1位に異論を唱える者はほとんどいないだろう。64館でのスタートから、圧倒的なクオリティと、ゆるやかに心に突き刺さっていくテーマ性に打ちのめされた観客の口コミによって、連日満席が相次ぎ、今では177館まで上映館を増やした。ミニシアター作品としては極めて異例となる、全国映画動員ランキングのベストテンに9週連続で入り、興行収入は11億円を突破した。
 アニメ映画が1位に輝くのは、第62回(1988年度)の『となりのトトロ』以来28年ぶりのことだ。あの『もののけ姫』(第71回・2位)や『千と千尋の神隠し』(第75回・3位)ですら為し得なかった快挙を達成しただけでなく、アニメ映画としては史上初となる監督賞も受賞した。まさに〝アニメの当たり年〟と言われた2016年を象徴する結果となったわけだ。
 
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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

 さらに、夏休み映画として公開されながら、現在もロードショーが続き、興行収入81億円を突破する大ヒットとなった『シン・ゴジラ』が2位にランクイン。娯楽色が取り沙汰される特撮映画がベストテン入りを果たすのは、第69回の『ガメラ 大怪獣空中決戦』以来のことで、意外なことに〝ゴジラ〟映画では史上初のベストテン入りとなった。

(C)2016 TOHO CO.,LTD.

 また、前回は濱口竜介と冨永昌敬の若手監督が大きくフィーチャーされたが、今年はさらに若手監督の台頭が目立った。
 3位に入った『淵に立つ』の深田晃司を筆頭に、4位にはテン年代最注目の作家・真利子哲也の『ディストラクション・ベイビーズ』がランクイン。同作は主演男優賞(柳楽優弥)と新人男優賞(村上虹郎)、新人女優賞(小松菜奈)の三冠も達成した。そして、7位にランクインした中野量太の『湯を沸かすほどの熱い愛』は、主演女優賞(宮沢りえ)と助演女優賞(杉咲花)のW受賞と、とくに個人賞で気鋭の若手監督たちの作品が台頭したのである。

 そんな中、9位にランクインした『オーバー・フェンス』の存在を見逃してはならない。山下敦弘監督は、第79回(2005年度)の『リンダリンダリンダ』から11年の間で、7作目のベスト・テン入りを果たしたのである。まだ40歳ながら、作品を発表するたびに高評価を獲得し続ける山下監督は、間違いなく今後の日本映画界を支える存在になるに違いないだろう。

 そして、2月初旬には恒例の読者投票ベスト・テンの結果が発表となる。2016年を代表する作品でありながら、今回のベスト・テン入りを果たせなかった『君の名は。』がランクインするのかどうか、気になるところだ。

<外国映画ベスト・テン>

1位『ハドソン川の奇跡』
2位『キャロル』
3位『ブリッジ・オブ・スパイ』
4位『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
5位『山河ノスタルジア』
6位『サウルの息子』
7位『スポットライト 世紀のスクープ』
8位『イレブン・ミニッツ』
9位『ブルックリン』
10位『ルーム』

 一方、外国映画ベスト・テンのほうは、大きなサプライズもなく、例年通りバランスの良いラインナップとなった。
 特筆すべきは、クリント・イーストウッドが2年ぶり8度目の1位を獲得したことだろう。第67回(1993年度)に『許されざる者』で1位を獲得して以来、ベスト・テン入りを果たすこと15作品目。外国映画監督賞の受賞も8度目と、もはやイーストウッド作品なくしてキネマ旬報ベスト・テンは語れないといったところか。

(C)2016 Warner Bros. All Rights Reserved

 他の常連監督たちも危なげなくランクインを果たした。第56回(1982年度)に『E.T.』で1位を経験したスティーブン・スピルバーグは、上半期に公開した『ブリッジ・オブ・スパイ』で8度目のベストテン入り。第81回(2007年度)に第1位を獲得した『長江哀歌』のジャ・ジャンクーも、一昨年の『罪の手ざわり』から2作連続4度目のベスト・テン入りとなった。
 
 ベスト・テンに入った10作品中、第88回アカデミー賞の作品賞候補作は4本(同賞候補の8作品中7作が2016年に日本公開)。その中での最上位こそ譲ったものの、作品賞受賞作『スポットライト 世紀のスクープ』は7位に入り、面目を保った。
 同じく作品賞候補だったジョン・クローリーの『ブルックリン』と、レニー・エイブラムソンの『ルーム』、そして外国語映画賞を受賞したネメシュ・ラースローの『サウルの息子』と、こちらでもまた若手監督の台頭が目立つ結果となった。

<個人賞>

主演女優賞 宮沢りえ『湯を沸かすほどの熱い愛』
主演男優賞 柳楽優弥『ディストラクション・ベイビーズ』
助演女優賞 杉咲花『湯を沸かすほどの熱い愛』『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』
助演男優賞 竹原ピストル『永い言い訳』
新人女優賞 小松菜奈『溺れるナイフ』『ディストラクション・ベイビーズ』『黒崎くんの言いなりになんてならない』『ヒーローマニア -生活-』
新人男優賞 村上虹郎『ディストラクション・ベイビーズ』『夏美のホタル』
監督賞 片渕須直『この世界の片隅に』
脚本賞 庵野秀明『シン・ゴジラ』
外国映画監督賞 クリント・イーストウッド『ハドソン川の奇跡』

個人賞はこのような結果となった。

また、『2016年 第90回 キネマ旬報ベスト・テン第1位映画鑑賞会&表彰式』は2月5日(日)に文京シビック大ホールにて開催される。

(文:久保田和馬)

    ライタープロフィール

    久保田和馬

    久保田和馬

    久保田 和馬 1989年生まれ。映画評論家/映画ライター/映像作家。フランス映画とアジア圏の映画をこよなく愛する。大学時代からの自主制作の延長で映像制作を行い、2013年から文筆業を開始。「図書新聞」へ映画評の寄稿、「リアルサウンド映画部」への寄稿など。

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