傑作だよ! 『キングコング:髑髏島の巨神』がモンスターユニバースとして最高の映画となったワケ

■「映画音楽の世界」

キングコング:髑髏島の巨神 メイン

(C)2016 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC., LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS, LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED

みなさん、こんにちは。

予告編の段階から怪獣映画ファンの期待を膨らませていた『キングコング:髑髏島の巨神』がいよいよ公開となりました。『パシフィック・リム』でモンスター映画を復権させたワーナー×レジェンダリーが『GODZILLA ゴジラ』に続き、アメリカが誇る「怪獣王」を再び蘇らせた本作。謎に満ちた「髑髏島」とそこに棲む人智を超えた存在が、現代屈指のVFXによりド迫力の映像で描かれています。

今回の「映画音楽の世界」では、そんな『キングコング:髑髏島の巨神』を紹介したいと思います。

キングコング映画の新たな到達点!

新鋭監督のジョーダン・ボート=ロバーツが立ち上がらせた今回のコングは過去最大スケールで描かれ、これまで作られてきたキングコング映画よりも、よりアクションアドベンチャーそしての作品に仕上がっています。これは今後製作される、いわゆるギャレス版ゴジラ(体長108m)とのクロスオーバーとなるVS映画として成立させるための布石と思われますが、ロバーツ監督は史上最大級に巨大化したコングだからこそ、まさに神々しい存在として描いています。

その「神」に対する敬意は圧倒的な美しさを誇るビジュアルで表現され、夕陽を背に戦闘ヘリの編隊を待ち受けるシルエットやけたたましい咆哮、胸を打ち鳴らすドラミングなど、これまでのコングを凌駕するインパクトを映画に与えました。そんなコングが当然のごとくカッコいい!

「自分の庭」を荒らされたことに対する敵=人類への排除・報復行動はまさに野性そのもの。投げる、掴む、叩きつける。巨猿というよりもこれぞ本来のモンスターとしての驚異的なパワー。怪獣映画としての醍醐味を、いきなり序盤で見せつけることで今回の「キングコング映画」の方向性をはっきりと示していきます。

そんな巨神たる巨猿の棲む髑髏島に、無謀にもずかずかと乗り込んでしまう一行にトム・ヒドルストン、ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・グッドマンと豪勢なキャストを配し、『地獄の黙示録』にオマージュを捧げた導入部からのコングとの遭遇はまさに因果応報の結果に。

いかに人類側が「無知」であったかを、立ち向かうことすら不可能なパワーによって見せつけられる訳です。バラバラになったチームは島を彷徨う中で、さらにコング以外の生物の急襲に遭い、次々とメンバーが餌食に。この辺りまでくると、『地獄の黙示録』と言う映画の枠を超えて、(映画の時代背景もあって)もはやベトナム戦争でベトコンによるゲリラ戦によって敗退した米国の縮図でもありますね。

コング以外の未確認生物は2005年のピーター・ジャクソン版(以下PJ版)のような生理的な気持ち悪さはない代わり、より獰猛な生物が多く登場します。

PJ版は昆虫や恐竜など原作に近い「ロスト・ワールド」の生態環境であり、ロバーツ版は蜘蛛や牛、トカゲなど現実の動物を空想的に進化させたような「パラレル・ワールド」のスタイル。しかし髑髏島という閉鎖的な世界の中で食物連鎖の構図がはっきりしているのも特徴で、そのおかげで髑髏島の生態ピラミッドの頂点に立つのがコング、最下層に人類というパワーバランスが明確に示されていきます。戦争に直面する世界観でもあり、リアルな弱肉強食の世界でもあり。歴然とした怪獣映画でありながらそれだけではない行き届いた世界観が魅力にもなっています。

などと堅苦しいことは置いておいて、とにかく質を伴なった新たな「お祭り映画」(表現が正しいかは解りませんが)の誕生であることは間違いありません。

筆者はIMAX3Dで鑑賞しましたが、コング仕様のIMAXカウントダウンから既にテンションが天井を突き破る勢いのハイセンス。コング無双に加え劇中には多くの名&迷場面や台詞があり、例えば近年話題の絶叫上映にも完全にフィットした作品です。某キャラが発する「不名誉よりも死」は間違いなく名言。シューティングゲームを思わせるような銃撃シーンも胸が高まります。

そしてサブカルチャーに精通したロバーツ監督の趣向をちりばめたオマージュシーンを探っていくのも、今後のロバーツ作品を楽しむ上で参考になるかも知れません。

キングコング:髑髏島の巨神 場面写真

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戦闘ヘリに70‘s音楽は魅惑のエッセンス

本作の音楽を担当したのは『キック・アス』『キングスマン』シリーズなどのヘンリー・ジャックマン。デジタル曲、オーケストラ曲どちらにも精通した作曲家ですが今回は髑髏島での過酷な戦況を現すように厚みのあるオーケストラでトーンを整え、そこにコングの野性感を被せるようにエレキギターが差し込まれます。

ただし『パシフィック・リム』(以下パリシム)のラミン・ジャワディや『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のジャンキーXLの劇伴といった、絶叫上映案件のようなヒロイックメロディというよりはスペクタクル映画としての音楽に徹している印象です。今回のコングは「神」であってヒーローではない、という捉え方なのでしょう。作曲のアプローチとしてはアレクサンドル・デスプラが作曲した『GODZILLA ゴジラ』と同じと言えます。

Kong: Skull Island - Original Motion Picture Soundtrack

一方で本作は1970年代の時代設定にあり、イギー・ポップが所属したザ・ストゥージズの[Down On The Street]やブラック・サバスの[Paranoid]、デヴィッド・ボウイの[Ziggy Stardust]など70年代を代表する楽曲がさまざまな場面で使用されていることにも注目です。スコアがスペクタキュラーならば、楽観的に流れ続けるヴォーカルナンバーは髑髏島に向かう最中、あるいは踏み込んでなお「人類こそ王者だ」と錯誤する価値観がことごとく踏み潰されていく“ミスマッチ”感を効果的に演出しています。残念ながらサウンドトラックには劇伴のみの収録ですが、使用楽曲を拾い集め歌詞を眺めてみるとなぜその楽曲が選ばれたのか、本編とのリンクも見つかるかも知れませんね。

キングコング:髑髏島の巨神 サブ

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まとめ

パシリムが起こした特撮怪獣映画復権の流れにギャレス版ゴジラ、本家『シン・ゴジラ』、そして本作と、長年辛苦を飲み続けてきた怪獣ファンにとってようやく大声で快哉を叫びたくなるようなムーブメントがまさに今巻き起こっています。

今後『GODZILLA 2』とコングVSゴジラ映画を控えモンスターユニバースは拡大していきますので、来たるべきその時に備え本作も絶対に見逃すことは出来ない作品となっています。

そして本編エンドロール終了後には筆者鑑賞時に拍手と歓声が沸き起こるほどの「おまけシーン」もありますので、絶対に最後の最後まで席を立たないように。映画館でなければ体感することのできないと迫力を、そして新たな「キング・コング」の勇姿と咆哮をぜひ目に焼き付けてください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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