映画コラム

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2018年03月15日

若い人も観るべき!吉永小百合主演『北の桜守』が素晴らしいワケ

若い人も観るべき!吉永小百合主演『北の桜守』が素晴らしいワケ



©2018「北の桜守」製作委員会




こんにちは、八雲ふみねです。

今回ご紹介するのは、現在公開中の『北の桜守』。
吉永小百合120本目の出演作です!


八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.147



1945年5月、南樺太の江蓮家の庭にある桜の木に待望の花が咲いた。夫と2人の息子と幸せに暮らす江蓮てつが大切に育てたその花は、やがて家族の約束の花となる。

しかし8月、ソ連軍が樺太に侵攻。
出兵する夫と別れ、てつは子どもと一緒に命からがら北海道・網走まで逃げ、凍てつく寒さと飢えの中、必死に生き延びるのだった。

時は過ぎて1971年、アメリカで成功を収め日本初のホットドックストアの日本社長として帰国した次男の修二郎は、15年ぶりに網走へ。

そこには夫の帰りを待ち、侘しい生活をしている、年老いた母の姿があった…。




©2018「北の桜守」製作委員会



サユリスト世代だけじゃない!若い世代の心にも刺さる一大巨編。


『北の零年』『北のカナリアたち』に続く“北の三部作”最終章として制作された『北の桜守』。

多くの名作が生まれた北海道を舞台に、第二次世界大戦末期から高度経済成長期という激動の時代を生き抜いた親子の物語は、三部作の集大成とも呼べる一大巨編となりました。

主演の吉永小百合が演じる江連てつは、桜守として桜を育む江蓮家の母。戦地に赴いた夫に代わり、子どもを守り家を守り、戦後の壮絶な苦難の中でも強くたくましく生きた、“日本の母”の象徴のような役どころです。その姿は1959年に『朝を呼ぶ口笛』で映画デビューして以来、日本映画界を牽引して時代を駆け抜けてきた“トップ女優・吉永小百合”を彷彿させるものがあり、まさに“吉永小百合の吉永小百合による吉永小百合のための映画”と言えるでしょう。

そんな母の背中を見て育ち苦難を乗り越えて成功を収めた息子・修二郎役に堺雅人、修二郎の妻・真理役に篠原涼子。

樺太時代から、てつたちを知る山岡役に岸部一徳、てつの夫・徳次郎役に阿部寛、てつ親子を助ける菅原役に佐藤浩市。

ほかにも笑福亭鶴瓶、中村雅俊、高島礼子、永島敏行らが作品に華を添えるという、超豪華なキャストが揃いました。

戦争の悲惨さと生きることの尊さを伝える重厚なストーリーは、サユリスト世代だけでなく若い世代の心にも刺さることでしょう。



©2018「北の桜守」製作委員会



一大巨編でありながら前衛的。制作者のチャレンジ精神が新たな邦画の世界を切り開く!


吉永小百合にとって通算120本目の出演作となる本作は、大河ドラマ的なスケール感を持つ一方で、非常に前衛的な側面もあるのが特徴。中でも、ケラリーノ・サンドロヴィッチが演出を手がけた演劇パートは、これまでの邦画にはない斬新さが観る人を引き付けます。

「悲惨な戦争の表現を抽象化することで、より多くの人に伝わるように」という発案から生まれたこの舞台劇は、8人のパフォーマーが車輪になったり、ソ連兵になったり、看護師になったりと、瞬時に姿を変えて展開していく抽象劇。

当時の樺太で起きた出来事の残酷さや戦争に巻き込まれた人々の悲しみや苦しみがリアルに伝わってきて、作り手のチャレンジ精神も窺えます。

白を基調とした舞台装置の真ん中に立つ吉永小百合…という姿は、映画ファンにとって“見たことがない光景”なのではないでしょうか。そして小百合サマの美しい歌声を堪能できるのも、これまた一興です。



©2018「北の桜守」製作委員会



吉永小百合のヒロイン性と美貌は永遠に不滅です。


これまで何度か、私がパーソナリティーを務める番組に吉永小百合さんをゲストにお迎えさせていただいたことがあるのですが、間近で見る吉永さんは本当にチャーミング。

同行した番組スタッフ(男性)が「自分の母親ほどの年齢の女性に会って、可愛い!と胸がときめいたのは初めて」と興奮気味に話していたことが、強く印象に残っています。

その場にいる人を和ませ虜にしてしまう魅力は、やはり天性のものなのでしょうか。

本作でも30代から70代まで、ひとりの女性の壮絶な人生を生々しく体現しており、その表情の美しさには思わず見とれてしまうほど。桜色の着物に身を包んだ愛らしいてつさんもステキですが、私は白い喪服姿のシーンに特に鮮烈なインパクトを受けました。凛とした強さと美しさ、吉永小百合が持つヒロイン性と美貌は永遠ですね。



©2018「北の桜守」製作委員会




作品情報


北の桜守
2018年3月10日から全国東映系にて公開
監督:滝田洋二郎
脚本:那須真知子  
舞台演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ 
出演:吉永小百合、堺雅人、篠原涼子、岸部一徳、高島礼子、永島敏行、笑福亭鶴瓶、中村雅俊、阿部寛、佐藤浩市 ほか
©2018「北の桜守」製作委員会
公式サイト http://www.kitanosakuramori.jp/

八雲ふみね fumine yakumo


八雲ふみね

大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
八雲ふみね公式サイト yakumox.com

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