映画コラム

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2018年04月25日

激情型も良いけど、薄情型ラブストーリーも良い!『スイートリトルライズ』

激情型も良いけど、薄情型ラブストーリーも良い!『スイートリトルライズ』

松竹芸能で芸人やらせて頂いてます、じなんぼ~いずのシギハラです!何とかここまで数回、チマチマと駄文を書かせて頂き、マチマチな感想頂いております!感謝です!

力、技術、知識と三大栄養素不足を露呈しまくってるんですが、懲りずにいけしゃあしゃあとまた書かせて頂こうと思います!

今回は夫婦について考えさせられた作品をご紹介していこうと思います!

『スイートリトルライズ』


スイートリトルライズ



前回あろう事か駆け落ち&恋愛映画について、しゃあしゃあしゃあ書かせて頂きましたが、今回はなんと夫婦、人との距離、生き方について考えさせられた映画『スイートリトルライズ』(2010)という作品です!

江國香織さん原作の同名ベストセラー小説を映画化。監督は『三月のライオン』(92)、『ストロベリーショートケイクス』(2006)、『無伴奏』(2015)等の矢崎仁司監督。

主演は、連続ドラマ『ケイゾク』(99)、『壬生義子伝』(2002)で日本アカデミー賞助演女優賞、『嫌われ松子の一生』(2006)で個性的な演技も注目された中谷美紀さん。

そして、出演作品をあげればキリがない大森南朋さん。

その他、池脇千鶴さんや安藤サクラさん、小林十市さん、大島優子さん、黒川芽以さん等実力派揃いです!

ストーリー概要


テディベア作家の瑠璃子(中谷美紀)は、夫の聡(大森南朋)と結婚して3年になる。お互い日常に不満はなく、仲も悪くないが、お互いどこか寂しげで上の空。瑠璃子は聡に「この家には恋が足りないと思うの。」と告げると聡はどうしていいか分からずにいる。瑠璃子に、自分の作ったベアを欲しいという青年、春夫(小林十市)が近づき、聡は大学時代のダイビングサークルの後輩しほ(池脇千鶴)と再会して、二人の関係が次第に変化していく。秘密と嘘、愛と孤独が日常に渦巻く夫婦の物語。

他の恋愛映画と一線を画すのはその温度!


恋愛映画をあまり見ないのと、見てもどこか感情移入が出来ない自分なのですが、なぜこの映画に惹かれたのかちょっと熟考してみました。

この映画全体に流れる幻想的で神秘的、荘厳さ溢れる空気感が、人間の話、夫婦の話を、まるでおとぎ話かギリシャ神話の類に、知らず知らず差し替えられている様な浮遊感があります。

そして、その空気感を支える登場人物が、かなり個性的であるにも関わらず熱からず、存在感と透明感が相反して忙しいです。

一番不思議は所は、そんなふわりふわりとした絵空事のような物語なのに、登場人物からはまるで息を吐く様に、哲学的、詩的な言葉がこぼれ落ちます。

そして、この言葉達が譫言、戯言と言って決して流させてくれない。

男女問題だけではなく、現実世界で私達が今抱えている問題のヒントになるような、考えさせられる言葉達がいつの間にか自分の体の先端まで染み渡ってしまい、「非現実的」な物語だったはずが突然血がたぎる「現実的」な物語へと進化していくのです!

逆に木訥とした登場人物だからこそ、そのさらりと出た言葉が名言として浮き立ってくるのでしょうか!

日本人は「今、名言言ってるぞ!」的なシーンが好きな感じありますが、ぽろっと、ぼそっと言った言葉がじんわりとボディブローの様に沁みてきます!

本来の日常の名言は、ただそこにある!


そして、突然思い出したんですが『かもめ食堂』(2006)のエンディングでサチエ(小林聡美)とミドリ(片桐はいり)とマサコ(もたいまさこ)がお店で「いらっしゃい」の聞こえ方について話し合うんです。

結局、サチエの「いらっしゃい」が一番良いという話になって、来客がきて振り向き様にサチエが「いらっしゃい!」を言うシーンあるんですが、これもありきたりな台詞が名言になるなーと当時に思いました!

脇道それたついでに、普通の言葉が名言になると言えば『サッドティー』(2014)を始めとする今泉力哉監督作品にも通ずるなーと思いました!

この映画の「ちゃんと好き」への考察もとても面白いです!

一押しなのでぜひです、はい!

気を取り直して、正気を取り戻して、本題に!


特に瑠璃子は日頃から名言ノートがあるのかってぐらい、澄ました顔で名言をさらりと吐きまくります!

いや、名言ノートあるよ彼女絶対!ルーズリーフタイプ!七冊!

名言は沢山あるのですが、今回は自分が思わずぐっときた名言を紹介して映画の雰囲気をお伝えしようと思います!

「あなたといると時々寂しくなる」
これは、瑠璃子がえも知れない寂しさから、一緒にいる聡に放った言葉。

人は他人と一緒にいることで寂しさを紛らわす事が出来るのに、愛する人と一緒にいる時にこんな事を言われたらと想像するとぞっとしますね!

どちらが悪い訳でもなく、埋めようのないぽっかり開いた穴。闇、空虚。絶望すら感じます!

「窓は好き、窓のこっちは安全だから」

「聡は私の窓なの」
これは瑠璃子が浮気相手の春夫に言った言葉。

窓があるという事は家がある。家族の象徴。外とは違うルールがあり、誰に理解されなくても窓の内側は絶対安全な理想郷という事でしょうか。

聡が窓という事は外界との唯一の接点。聡がいるから自分の存在が存在しうると証明出来ている。

余談ですが、京都の源光庵という所には庭に臨む窓、左に丸い窓=悟りの窓、右に四角い窓=迷いの窓がありますね!

古来より日本人は外界を臨む窓の形で精神も表したぐらいなので、窓という表現、概念がより日本的で哲学的でぐっときます!

「どうでも良い約束は出来るだけ破りたくないの」

これも瑠璃子が春夫に言った言葉。

断言します!

こんな事、自分がもし女性に言われたらその女性をその日から気になってしょうがないです!(笑)

だってそうじゃないですか!普通はですよ、どうでも良い約束なら破っても良いと考えるのが現代を生きる僕らじゃないすか?!

自分なりの考えはこうです。物事の流れに反する、それに抗う行為はそれだけでエネルギーが必要。

つまりは約束を破る行為はそれだけでエネルギー、はたまた大きな意味での愛が必要という事。

破る行為をしたくないという事は、それに興味がない、無視をしているという、ある意味一番冷たい行為。

どなたかの名言で聞いた事あります!

「私はどんな誹謗中傷も構わない。この世で一番辛いのは無視。存在していないと同じだから。」

「人は守りたいものに嘘をつく」

これも瑠璃子が何でも正直に話す事を、春夫に咎められた時に言った言葉。
う、なんと、的を得た言葉なんだ。。。(笑)

「生きているうちはお化け、死んだら人間になる」

これも瑠璃子の言葉。彼女、何か位の高い仙人かなにかなのでしょうか!(笑)

生きているうちは上手くいかない事だらけ。死ぬ瞬間に自分の人生の価値がやっと分かる的な?

もはや、名言過ぎて、まだ深い理解に至っていませんが、名言の匂いだけはプンプンしたのでランクインさせときました!(笑)

ここには上げてないラストの名言がまた格別なんです!

ラストにまた、噛めば噛むほど味がでる凄い名言(いや名言だから噛んだらダメなわけで表現がいささか疑問)が飛び出しますが、それはぜひ映画の方で!

余談中の余談ですが。。。


最後に、瑠璃子演じる中谷美紀さんが煙草を吸うシーンと牛乳を口からこぼしながらラッパ飲みする謎の?シーンがあるんですが、この世の色気をフルコンプした様相です!

それだけでも一見の価値ありです!

池脇千鶴さん演じるしほの「ちょっと言ってみただけですよ~」も一耳の価値あり!ぜひ!

(文:じなんぼ~いず・シギハラ)

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