『この世界の片隅に』が好きな人に観てほしい5つのアニメ映画

(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

アニメ映画『この世界の片隅に』が14週連続でトップ10入りを果たし、興行収入は20億円を突破しました!評判が評判を呼び、劇場数が何倍にも増え、ロングランヒットとなったのは、作品のクオリティの高さはもちろんのこと、“すべての人に”、“これからの世代の人に”観てほしいと思える、普遍性のあるテーマが描かれたためでもあるのでしょう。

ここでは、『この世界の片隅に』をさらに奥深く楽しむことができる、5つのアニメ映画をご紹介します。

1:『はだしのゲン』(1983)&『はだしのゲン2』(1986)

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ご存知、戦争を描いた漫画の代表格と言える名作の、アニメ映画化作品です。特筆すべきは、原爆投下により広島の街が崩壊する時の残酷すぎる描写!幼い子どもも含めた人間の肌が一瞬で焼けただれ、目玉が溶けてこぼれ落ちる……さらに“おばけ”と呼ばれるほどに悲惨な状態になった人々が徘徊する画は、子どもが観れば良い意味でトラウマになることは必至です(大人でもめちゃくちゃ怖いです)。

それでいて、『この世界の片隅に』にも似たクスクスと笑える日常の描写もあったります。原作漫画の“非国民だと迫害される描写”がほとんどなくなったおかげもあり、幼い兄弟による、大切な母のための行動の数々を微笑ましく観ることができました……こうした平和な日常の描写があるからこそ、その後の“地獄”が辛いわけですが。

『はだしのゲン2』は、原爆投下から3年後を描いた作品で、孤児となった少年たちがたくましく生きる様子が描かれています。1作目から続いている描写もあるので、続けて観ることで時代の変化や登場人物の成長が感じられ、より感動できることでしょう。

『この世界の片隅に』でも少しだけ原爆に巻き込まれてしまった人間の姿が描かれていましたが、『はだしのゲン』で描かれる戦争の直接的な残酷さはその比ではありません。当時の“その場所”の凄惨さを最大限に表現した作品の1つと言えるでしょう。原作漫画が素晴らしいのはもちろんですが、ぜひこちらも観ていただきたいです。

2:『風が吹くとき』(1986)

When the Wind Blows

イギリスの漫画のアニメ映画化作品です。初めから終わりまで、“老夫婦が住む一軒家の中”だけで展開する、一風変わった作品になっています。

この映画で提示されるのは、“無知”の恐ろしさです。おじいさんは一見すると図書館でもらったパンフレットを参考にしたり、新聞で政治について学んでいるような博識にも思えるのですが、実は認識がズレていたり、根拠なくポジティブだったり、肝心なところで知識があいまいだったりするのです。

たとえば、おじいさんはパンフレットに従って、核戦争に備えた“シェルター”を作るのですが……それがなんと“3枚のドアを並べて立てかけただけ”のものなのです。こんな適当すぎるシェルターで核を防げるわけないじゃん!と誰もがツッコむところですが、おじいさんはそのシェルターの効果を信じきっていて、あまつさえ“立てかける角度を正確にするために分度器を買ってこなきゃ”と思っているのです。角度の問題じゃないだろ!

重要な知識が欠落しているおじいさんはもちろん、おばあさんも家事を優先するばかりで危機感がありません。彼らが人里離れた一軒家に住んでいて、“情報がない”ことがこれほどまでに悲劇をもたらすとは……それが怖くて、怖くてしかたがありませんでした。

なお、おじいさんが“広島で落とされた原爆”について少しだけ言及するシーンがあるのですが、その後にもゾッとする一言を口走っています。“戦争の歴史を知る意義”をこれ以上なく感じられることでしょう。

3:『ジョバンニの島』(2014)

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終戦直後の色丹島を舞台とした作品です。島民はソ連(ロシア)軍により住居を奪われてしまうのですが、日本およびソ連の子どもたちは大人の事情と関係なく、自然に交流していくようになります。シビアな現実が描かれるところもありますが、主人公の兄弟のやりとりは微笑ましく、少女への淡い恋心が描かれたりもするため、とても親しみやすい作風になっていました。

アニメーションならではの表現も格別。特に“列車遊び”をしていると、本当に宇宙空間に行ってしまうかのような画に見とれました。予備知識がなくても楽しめる作品ではありますが、宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』の内容を知っておくと、これらのシーンがより印象深くなるでしょう。

終盤は過酷な土地での描写が続きますが、ユースケ・サンタマリアが声優を務めている“おじちゃん”の軽妙なキャラクターのおかげで暗い気持ちになりすぎに観られます。『この世界の片隅に』と同じく、当時の“生活”が窺い知れるシーンもたくさんありますので、ぜひご覧になって欲しいです。

4:『アリーテ姫』(2001)

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『この世界の片隅に』の片渕須直監督による作品です。劇場公開日はあの『千と千尋の神隠し』の1日後(2001年7月21日)でした。幼い王女のところに、政略結婚のため、さまざまなお宝を持ってくる男たちが押し寄せる……という物語の始まりから「竹取物語(かぐや姫)」を思い起こす人は多いでしょう。

しかし、物語は極めて内省的な、“この世界でどう生きるか”を模索してくものになっていきます。魔法(とは断言できない何かの力?)が存在する世界にも関わらず、映画の冒頭で“庶民の人々の暮らし”を丁寧に描いていることも含め、『この世界の片隅に』をほうふつとさせるところが多くありました。

正直に苦言を呈すると、全編に渡って暗いトーンで話が進み、前半も後半も同じような閉じ込められた場所で物語が展開するため、退屈さが否めないところがあります。あまり小さなお子さんにはおすすめできないですし、セリフが直接的すぎて説教くさくなっていることも、歓迎はできませんでした。

しかし、その良くも悪くも一辺倒な話運び、ストレートなメッセージには、片渕監督がどういう価値観を持ち、作品を通してどのようなことを訴えたいのかを、より感じることができるはずです。片渕監督の作家性を知りたい方におすすめします。

5:『マイマイ新子と千年の魔法』(2009)

マイマイ新子と千年の魔法

こちらも片渕須直監督作品で、『アリーテ姫』以上に『この世界の片隅に』との共通点がとても多い作品になっています。たとえば、方言に並々ならぬこだわりがあったり、その時代の風習や光景を丹念に描いていたり、“想像の世界”が重要になる物語であったり……『この世界の片隅に』とあわせて観ると、より作家性の“濃さ”がわかるのではないでしょうか。

映画で重要なのは、『この世界の片隅に』と同じく、平和に見える日常の中に、シビアな現実の問題が顔を出すことです。主人公の女の子は、(すずさんと同じく)天真爛漫で想像が好きな女の子なのですが、やがて現実で、しかも“大人の世界”での“戦い”を余儀なくされていくのですから……。それでいて、“人の想い”を丹念に描き、やさしさに溢れているこの作品のことが大好きになりました。

なお、ラストシーンでは、ある登場人物に重大な“変化”が表れています。一度目の鑑賞では気づかなかったその変化がわかった時には、身震いがするほどの感動がありました。『この世界の片隅に』と同じく、何度観ても新しい発見がある作品と言えるでしょう。

なお、現在『マイマイ新子と千年の魔法』は、横浜ニューテアトルにて2月17日(金)まで、『この世界の片隅に』との2作品連続上映が行われています。今後もリバイバル上映が期待されますので、気になった方は劇場まで足を運んでみてはいかがでしょうか。

まとめ

『この世界の片隅に』は徹底した時代考証が行われていることもあり、戦争が起こった当時の生活を、アニメーションという表現で“体験”できる素晴らしい作品でした。

上記の『はだしのゲン』と『ジョバンニの島』は、『この世界の片隅に』とは別の場所で、同じ太平洋戦争により翻弄された“この世界の片隅に”生きた人たちの物語になっています。凄惨な戦争の最中、懸命に生きようした人々が日本中(世界中)にいたことを実感できるでしょう。

『アリーテ姫』と『マイマイ新子と千年の魔法』は戦争を描いた作品ではありませんが、どんな状況にあっても“生活は続いていく”ということ、その場所に“歴史がある”ということが『この世界の片隅に』と共通しています。

これらの作品は、『この世界の片隅に』をさらに多角的に、奥深く楽しむための一助になるはず。きっと、戦争の歴史を知り、学ぶ機会にもなるでしょう。幅広い世代に、それぞれの作品を観ていただきたいです。

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(文:ヒナタカ)

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