正直なところ、国立国会図書館で映画関係の調べ事をするのは、あまりお薦めしない。

■「役に立たない映画の話」

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我が国図書館の最高権威・国立国会図書館に乗り込む!!

後輩 まだ続いてたんですか? このシリーズ。

先輩 あたぼーよ。今回は我が国図書館の最高権威・国立国会図書館に乗り込むぞ!!

後輩 国会図書館・・ですか。存在だけは知っていますが、何か縁遠いものを感じて、今まで行ったことありません。先輩は、よく行かれるんですか?

先輩 いや、実を言うとおれも先日、数年ぶりに行ったんだ。ちょっと調べ事があって。

後輩 まあ、永田町の駅から国会議事堂目指して行けば良いわけですよね。案内に沿って入って、本を探すと・・・。

先輩 いやいや、ここは入館するのに専用のカードが必要で、それをかざしてピピッとさせないと、入れないんだぞ。まるで電車の改札みたいだ。

後輩 そのカードは、どうしたらもらえるんですか?

先輩 そばにある機械で作るんだよ。まあおれの場合は、何度も利用しているので、いつでも利用出来るカードを作ってもらっているがな。君の場合は今日だけだろうから、1度だけ使えるカードで充分だろ。

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デジタル化されて便利になった?いやいや、とんでもない!!

後輩 しかし国会図書館と言っても、お役所なんですねえ。

先輩 そーなんだよ。我が国の、いわゆる「お役所仕事」の実態がここでは見られるし、それに対応することでストレスがどれほど溜まるかも経験出来るぞ。

後輩 とにかくこのズラリ並んだPCで、目的とする書籍や雑誌記事を検索するわけですね。

先輩 そーだ。このフォルダにカードを入れると、PCが勝手に動き出す。

後輩 うおおお・・・・。

先輩 そこから検索の画面に行って、検索ワードをタイピングするんだよ。

後輩 昔の映画の記事を探しているんですが・・。

先輩 だったら映画のタイトルを入れて、検索してみれ。

後輩 うわあ!! 凄い数の雑誌名が出てきた!!

先輩 何の映画を探したんだ?

後輩 「ターミネーター2」。この間3D版を見てきましたが、面白かったですよ。

先輩 昔の映画、か・・・(遠い目)。

後輩 ここをポチっと押すと、記事が載っている号が確保出来るわけですね。

先輩 そうそう。カウンターに持ってきてくれて、閲覧OKの状態になると、そこにある病院の待合室みたいなボードに、君のナンバーが表示されるってわけさ。

後輩 へええ。便利ですねえ・・・。

先輩 ところがそうでもないんだよ、これが・・・。

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「マイクロフィルム酔いを経験せずして、一人前の映画ライターになれると思うな!!」

後輩 公開当時の記事とかは、雑誌以外にないんでしょうか?

先輩 そうだなあ。スポーツ新聞の記事を漁るって手もあるぞ。

後輩 なんでスポーツ新聞なんですか? 映画の記事を探しているのに?

先輩 お前、スポーツ新聞って読んだことないだろ? 我が国では日刊レベルで、映画に関する情報を掲載しているメディアが新聞以外になかったんだよ。ただ新聞の場合は学芸欄とか文化面の一角に批評が載るってことが多くて、その映画の話題とか製作発表の記事とか、宣伝がらみのことはあまり掲載されないんだよ。

後輩 映画雑誌とかは?

先輩 それだと月刊誌だからな、ニュースを早く知るという意味では、遅すぎる。だから日刊のメディアとして、スポーツ新聞が映画のことを色々な角度から報じてきたんだよ。これは今でもそう。だいたいのスポーツ新聞には、芸能欄や映画欄がある。

後輩 でも、スポーツ新聞って、主としておっさんが読むものですよね。

先輩 そーなんだ。だから新人女優がスポーツ新聞のインタビューを受けると、「初体験はいつ?」とか「性感帯は?」とかスリーサイズを聞かれたりといった、まあ読者対象が喜ぶであろうことをストレートに聞かれたり、ということが多々あった。今で言うセクハラだわなあ。

後輩 映画のことを語るのに、女優の初体験の年齢は関係ないでしょう。

先輩 そのあたりは、映画サイトがウェブに出来た現在のほうが、まだましになったというべきかな。

後輩 それでもスポーツ新聞に掲載された記事は、貴重な取材の痕跡になるわけですね。それってどうやったら見られるんですか?

先輩 国会図書館の新館4階にある、新聞閲覧室ってとこへ行って、対象とするメディアと年月を申請用紙に書き込むと、マイクロフィルムを出してくれるぞ。

後輩 マイクロフィルム?? なんですか、それ??

先輩 知らんのかよ! フィルムの小さいヤツだよ。フィルムは分かるだろう!

後輩 昔、映画の上映に使われてたセルロイドの細長い束でしょ?

先輩 昔じゃねぇっ!! 5~6年前まで日本中の映画館で使われてたし、今でもフィルム上映を行っている映画館はあるんだ!!

後輩 まあまあ、興奮しないで。そのマイクロフィルムって、どうやって見るんですか?

先輩 専用の閲覧台があるんだよ。それにセットして、ほら、下から光が当たるだろ。これに透かして左右のハンドルをくるくる回して、マイクロフィルムを見ていくわけだよ。

後輩 なんか・・・すっごくアナログなんですねえ。

先輩 うん。デジタルを駆使して色々と便利になっているかと言えば、こういうことはまったくの前時代のまま。それが国会図書館だ。

後輩 しかし、この閲覧台で1ヶ月分1本のマイクロフィルムをみていく作業も、根性が必要ですねえ。

先輩 下から光が来ているだろ。それにフィルムを透かして細かい文字を見ていくから、徐々に気持ち悪くなってくるんだよ。

後輩 お・・・おえっ!!

先輩 こら!! 国会財産の上に吐くなよっ!! そこの廊下の横に休憩室とトイレがあるから、そこでしばらく休んでいろ。

後輩 なんで昔の映画の記事を探すのに、こんな目に遭わなくちゃいけないんですかあっ!!

先輩 おれなんか、以前ご隠居に「このマイクロフィルム酔いに耐えてこそ、立派な映画ライターになれるのだ!! 耐えろ!!」と、厳しく言われたもんだ。

後輩 そうまでしてなりたい職業じゃないでしょーが!!

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「知ってるか?国立国会図書館って、英語で『National Diet Library』って言うんだぞ」

先輩 休憩したから、少しは楽になっただろ。

後輩 休憩室に行ったら、同じようにマイクロフィルム酔いしたらしい、顔色の悪い人が、何人か寝転がっていました・・。

先輩 あそこの休憩室には、無言の連帯感があるんだよ。「お互い、大変ですなあ・・・」「いやまったく・・」という。

後輩 んなもん、すべてDVDにでもしてくれればすむ話じゃないですかっ!!

先輩 そういう世間の常識が通用しないのが、国会図書館ってとこだ。

後輩 目的とした記事は、コピーしてもらえるんですか?

先輩 閲覧台で見たマイクロフィルムは、指定したページをすぐにpdf化出来るようになっていて、それをメールで申請するというやり方だよ。

後輩 またそんなとこだけ、デジタル化されていて・・。

先輩 要するにだ。自分たちが楽をしたいとこは、デジタル化されているってわけさ。

後輩 それでそのコピーを受け取るには、どこに言ったら良いのですか?

先輩 また旧館の受付に行くんだよ。そこで適当に時間が経ったら「出来てますか?」と聞いて、出来ていたら料金を払ってコピーを受け取る。

後輩 出来てなかった場合は?

先輩 またしばらく経ってから「出来てますか?」と尋ねる。

後輩 出来たら呼んでくれれば良いだけのことじゃないですかあ!!

先輩 なんたってここはお役所だからな。自分たちはデスクの前から離れない。なるべく動かない。とにかく利用者に面倒なことをすべてやらせて、新館だ旧館だと建物の中をぐるぐる動き回らせて、マイクロフィルム酔いをさせて疲れさせる。知ってるか?国立国会図書館って、英語で「National Diet Library」って言うんだぞ。ダイエット・ライブラリーというぐらいだから、ダイエットに良い国立の組織だという・・・。

後輩 なにくだらないこと言ってるんですかあっ!! もう!!

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結論:蔵書が多すぎて、調べ事がしづらい?

先輩 ・・・とまあ、こういう所だよ、国立国会図書館は。

後輩 確かに映画関係の調べ事には不向きですね。だいいち蔵書や収納している雑誌が多すぎて、検索すると凄い数がヒットする。

先輩 まあ選択の余地は多いほど良いんだが、以前ある監督について検索していたら知らない書籍がヒットして、どこかの大学が刊行したらしい本だと。それで「この本を読みたいんですが、どうPCを操作したら良いですか?」と近くの係員に聞いたら「えーと・・・」とキーボード操作を少しした後、メモにその本のタイトルと整理番号を書いて「これ、旧館の受け付けに持っていけば、出してくれます」って(笑)。おいおい、なんのためにデジタル化してるんだよ(笑)?

後輩 やっぱり松竹大谷図書館やフィルムセンター図書室のほうが、コンパクトで良いですね。

先輩 「ぴあ」のバックナンバーを半年分抱えて持ってきてくれる女性司書や、おれが紙で手を切ったのを見て、後でそっとバンドエイドをデスクの上に置いてくれる、優しい係員の人は、確かに国会図書館にはいそうにないわなあ。

後輩 とにかく、スポーツ新聞のストックをすべてマイクロフィルムからDVDに移すべし!!

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(企画・文:斉藤守彦)

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    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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