3DCGと人形アニメの融合で奥深く描かれる アニメ映画『リトル・プリンス 星の王子さまと私』

■「キネマニア共和国」

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが記した『星の王子さま』といえば、我が国の宮崎駿監督などにも大きな影響を与えた名作ですが、このたびその後の物語を描いた映画が、3DCGアニメーションで制作されました……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.64》

マーク・オズボーン監督による『リトル・プリンス 星の王子さまと私』です。
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意外に映像化が難しい原作世界を
“その後”を描くというアイデアでクリア

原作『星の王子さま』の映像化は、実写では1974年にミュージカル映画の名匠スタンリー・ドーネン監督の手で、ミュージカル仕立ての『星の王子さま』が作られたくらいで、アニメーションでは我が国のTVシリーズ『星の王子さま プチ☆ブランス』(78~79)がある程度。またサン=テグジュペリの生涯を『星の王子さま』と重ね合わせながら描いた『星の王子さまを探して』(95)といった異色作もありますが、いずれにせよ映像化は意外と少なく、これまでウォルト・ディズニーやオーソン・ウェルズなど錚々たる映画人がこの原作に挑んでは敗れていった歴史もあります。
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今回の映画化も、単に『星の王子さま』を映画化するのではなく、今の時代を生きる9歳の女の子が、かつて星の王子さまと出会ったことがあるという老飛行士と知り合い、彼の話を聞きながら想像の翼を広げていき、やがて彼女自身が王子を探す旅に出るというストーリーを構築。

監督は『カンフー・パンダ』でディズニー・アニメーションとは一味違う毛並みの良い快活な3DCGアニメーション映画を世に送り出したマーク・オズボーン。彼はアメリカ人ですが、脚本のイリーナ・ブリヌルはイギリス人、ディミトリー・ラッサムらプロデューサー陣はフランス人、そしてキャラクター監修を日本人の四角英孝が担当と、実に国際色豊かで、『星の王子さま』という題材がいかにワールド・ワイドなものであるかを実践しているかのようなスタッフ編成となっています。
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今回ユニークなのは、女の子のいる現代は3DCGアニメ、そして『星の王子さま』の世界をストップ・モーション・アニメの手法で描き分けていることで、キャラクター・デザインも現代パートは顔と目が大きな西洋の3DCGアニメ特有のものですが、対する原作世界は紙で作られながらも木彫りのような素朴で温もりのある人形を少しずつ動かしながら撮影されています。

こういったアニメーション制作チームも今回は欧米混合。ディズニーやピクサー、ドリームワークスなどで腕を鳴らした海外のツワモノ・クリエイターたちが多数参加しています。
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今を生きる子どもたちの未来を
明るく示唆していくために

本作は『星の王子さま』の原作世界を通して現代を生きる子どもたちの未来を明るく示唆すべく作られたものですが、ストーリー構成としての双方の融合が実にうまくなされていて、お互い並行していく物語をスムーズに理解させながら孤独な女の子の心を開かせていく趣向は、見る側の心までも温かく、そして柔らかくさせてくれることでしょう。
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『星の王子さま』の原作自体は、シンプルなファンタジー物語の中に奥深い哲学的な世界が備わっており、この点が映像化を難しくしているのかもしれませんが、“その後”を描くという今回の趣向によって、むしろ原作の世界観をわかりやすく伝えてくれているような、そんな気もしています。

一方、それゆえでしょうか、本音のホンネを申しますと、この映画の脚本のテイストから察して、実はアニメーションよりも実写のほうがふさわしかったのではないか? そんな気もしないではありません。

また、日本では津川雅彦や瀬戸朝香などの吹替版キャストが話題になっていますし、最近の顔出しキャステイングものの中では割かし成功している部類だと思いましたが、ジェフ・ブリッジスやレイチェル・マクアダムス、ベニチオ・デル・トロなどオールスター・キャストを配したオリジナル・キャストによる字幕版も味わい深いのではないかと思われます。
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また、3DCGはもちろんのこと、人形アニメの立体感を増幅させてくれる立体視=3D版を個人的にはオススメしておきます。フトコロに余裕のある方は、ぜひに(でも、ホント3D映画の料金、そろそろ何とか下げてもらえませんかね)。

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(文:増當竜也)

映画『リトル・プリンス 星の王子さまと私』は2015年11月21日(土)全国ロードショー!
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/littleprince/

(c) 2015 LPPTV – Little Princess – ON Entertainment – Orange Studio – M6 Films


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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