『リュミエール!』は映画創世期にタイムスリップさせる画期的な映画

リュミエール! ポスター

(C)2017 – Sorties d’usine productions – Institut Lumière, Lyon

本年度の第30回東京国際映画祭にて、素晴らしい映画が特別上映されました。

それは、今から100年以上も前に作られた映画の数々を1本の作品にまとめあげたものでした。

そして今、その映画は現在、東京都写真美術館ホールをはじめとして全国各地の映画館で劇場公開が始まっています……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.267》

フランスのリュミエール兄弟が作った108本の映画を収めた『リュミエール!』、そこには私たちが日ごろ日頃何気なく接している映画の原点がびっちりと魅力的に詰められているのです!

今から122年前、
1本50秒の映画が作られた!

映画『リュミエール』について語る前に、映画とは一体いつ、誰によって作られたのかを、ざっと振り返ってみましょう。

1800年代後半、さまざまな国のさまざまな人々によって、動く写真=映画の発明研究が行われてきました。

その中で1893年、アメリカの発明王エジソンがキネトスコープを一般公開します。ただし、これは覗き箱のようなもので、一度にひとりしか見ることのできないものでした。

1895年12月28日、フランスのリュミエール兄弟がキネトスコープを改良したシネマトグラフ・リュミエールを世にお披露目します。これは巨大なスクリーンに映写機で映像を投射し、一度に多くの人々に見せられるものでした。

これがいわゆる映画館で見る映画の原点となっています。

リュミエール! リュミエール兄弟

(C)2017 – Sorties d’usine productions – Institut Lumière, Lyon

つまりリュミエール兄弟の発明は劇場で見る映画、対してエジソンの発明は、今ならばスマホで見る映画とでも例えられるでしょうか。

結局、現在に至っても映画を最初に発明したのは誰なのか? という論争は絶えることはありませんが、双方ともに“映画の父”と謳われているのも確かです。

(エジソンよりも先に、1878年に連続写真撮影を成功させたアメリカのマイブリッジや、1882年に連続写真撮影機“撮影銃”を発明したフランスのマレー、また1888年に単レンズカメラを用いて世界初の映画を撮影したルイ・ル・プランスも“映画の父”と呼ばれています)

そして今回、リュミエール兄弟が当時製作した、およそ1500本もの映画の中から108本をピックアップしたのが、映画『リュミエール!』なのです!

当時の映画はフィルムの長さの関係で、1本50秒ほどしか撮影することができませんでした。またカット割りなどの技法もまだ確立されておらず、いわゆる長回し撮影が常です。

リュミエール! サブ6

(C)2017 – Sorties d’usine productions – Institut Lumière, Lyon

ここでは工場から出てくる人々の姿を撮影したものが、1895年12月28日にお披露目上映され、世界初の商業映画とも呼ばれている『工場の出口』や、キャメラに向かって進んでくる列車を見て観客がパニックに陥ったという逸話も残されている『ラ・シオタ駅への列車の到着』など映画史的に有名な作品はもちろんのこと、その後エジプトやベトナムなど世界各地にキャメラマンを派遣して撮影した映像の数々も収録されていますが、その中には何と日本の京都の映像もあります(つまり、これが映像で見られる日本最古の姿なのです!)。

リュミエール! サブ3 日本最古の映像

(C)2017 – Sorties d’usine productions – Institut Lumière, Lyon

ただし正直なところ、それらの映像は単に当時の風景などを写した記録映像なのではないかと思われている人も多いのではないでしょうか(私も当初はそう思っていました)。

しかし実際はちゃんと1本50秒の中で映画としての演出がなされ、その中の人物たちが演技をしているのです。

つまり、122年前から、映画は映画であった! 1本50秒長回し技法によって撮影された“映画”であったわけです。

映画『リュミエール!』は、そのことを122年の時を越えた21世紀の今、映画ファンに強く訴えかけてくれる作品であり、即ち全ての映画はここから始まっていることを示唆してくれているのです。

リュミエール! サブ1

(C)2017 – Sorties d’usine productions – Institut Lumière, Lyon

東京国際映画祭で大喝采!
映画ファンなら、これぞ必見!

本作の監督ティエリー・フリモーは、リヨンのリュミエール研究所ディレクターであり、1422本のライブラリーの中から108本をピックアップし、4Kデジタルで修復し、フレモー監督自らナレーションを務めてまとめあげられたものです。

もっとも、日本公開においては落語家の立川志らくが日本語版ナレーションを担当。師匠による江戸前の明瞭な発声によって、どことなく当時の活動写真を日本国内で見ているような雰囲気を味わえることでしょう。

ただし個人的には、フリモー監督のフランス語ナレーション版にも接してみたい気もします。そのことで122年前にフランスで上映した空気みたいなものもつかめるような気がするからです。

東京国際映画祭での上映時には、フリモー監督と立川志らく師匠が来場し、トークショーも開催。

そこで両者は改めて、122年前から映画というものが確立されていたことを強調し、たがいにエールを交換しあっていました。
場内も老若男女、また海外の映画関係者も多数来場し、上映中は笑いやどよめきが起きる大盛況ぶりとなりました。

日頃「この映画は必見!」などといった惹句を大安売りのように使ってしまいがちな私ではありますが(⁉)、これに関しては映画ファンを自認する人は一度は見ておくべきものです。

一体映画はいつ、どのようにして始まったのか? そして122年経ち、これからどこへ向かうのか? それらをすべて解き明かすカギにもなってくれることでしょう。

リュミエール! サブ2

(C)2017 – Sorties d’usine productions – Institut Lumière, Lyon

単なる映画史、歴史のお勉強ではなく、エンタテインメントとしての『リュミエール!』、何度でも繰り返し見続けたい至極の90分です!

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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