失敗作?それともファンも納得の傑作?2016年の漫画の実写映画化作品の総括!

日本の漫画は世界に誇る文化ですが、“実写映画化”となると「配役がイメージと違う!」や「そもそも実写化自体しないでくれ!」などなど、公開前からバッシングを浴びてしまうことがままあります。

しかし、映画の本編を観てみるまでは、本当に原作への愛のない作品なのかどうかは分かりません。ここでは2016年に公開された、主要な漫画の実写映画化作品について、世間的な評価や作品の特徴を振り返ってみます。

『僕だけがいない街』

僕だけがいない街

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

監督:平川雄一朗
主演:藤原竜也、有村架純

青年が小学生時代にタイムスリップして誘拐殺人事件の犯人を追うという、サスペンス色の強い作品です。原作にあった主人公のナレーションが必要最低限にまで減少しており、映画ならではの演出のふんだんに盛り込まれていました。特に、子役たちの演技の素晴らしさは誰もが認めるところでしょう。藤原竜也が珍しくクズの役ではないのもよかったです。
しかし、後半では原作やアニメ版とはまったく違う展開が用意されており、原作ファンからかなりの賛否両論(否のほうが多め)の声があがりました。登場人物の不自然な行動や、原作にはない矛盾点も散見され、完成度が高いとは言えないのが正直なところです。

『ちはやふる 上の句/下の句』

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会(C)末次由紀/講談社

監督:小泉徳宏
主演:広瀬すず、野村周平、真剣佑、上白石萌音

2016年の邦画の中でもNo.1の呼び声が高い作品です。個性豊かなキャラクターたち、音楽、躍動感のある演出、それらすべてが青春娯楽映画として完璧と言えるほどに仕上がっていました。個人的に感動したのは、前後編それぞれで映画として盛り上がるように、原作のエピソードを再構築していること。特に、前編の机くん(森永悠希)が抱えた“痛み”は多くの方の心に響いたのではないでしょうか。
2部作ということで、「観る時間がない!」と躊躇されている方もいるかもしれませんが、上の句(前編)だけでも1つの映画作品として完成されているので、まずはそちらだけも観て欲しいです。さらに下の句(後編)を観ると、かるた競技において上の句と下の句がセットであることと同じように、この映画が“2部作ならでは”の魅力に溢れていることに気づけるでしょう。

『暗殺教室 卒業編』

暗殺教室 殺せんせー

(C)2016フジテレビジョン 集英社 ジェイ・ストーム 東宝 ROBOT (C)松井優征/集英社

監督:羽住英一郎
主演:山田涼介、菅田将暉、二宮和也

“月を破壊した超生物が担任の先生になって暗殺を教える”という素っ頓狂すぎる(褒め言葉)設定の漫画でさえも、こうしてしっかり実写映画になるとは!もはや“実写化不可能”という作品はこの世に存在しないのかもしれません。
地上波放送もされた前編(2015年公開)は原作のエピソードをうまく取捨選択&再構築をしており、マンガでしかありえないようなキャラを見事に再現した役者陣の魅力も大きい作品でした。
しかし、この完結編はセンチメンタルな話ばかりに振り切ってしまい、映画全体のバランスが悪くなったことが惜しいところです。なお、芸能界引退を表明した成宮寛貴がキレッキレの悪役を演じているので、彼のファンにこそ観てみてほしいです。

『アイアムアヒーロー』

アイアムアヒーロー あらすじ

(C)映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾 / 小学館

監督:佐藤信介
主演:大泉洋、有村架純、長澤まさみ

“テレビではやれないことをやる”という精神性が表れまくったグロテスクな描写や大迫力のアクションの数々から、「ゾンビ映画の最高傑作だ!」などの絶賛の声が相次いだ作品です。原作にあった“日常が崩壊していく”描写を丁寧かつ、衝撃的に仕上げたことも賞賛すべきでしょう。
脚本を手がけたのは、話題を集めたテレビドラマ「重版出来」や「逃げるは恥だが役に立つ」などの野木亜紀子。原作の精神性を大切にしつつも、映画オリジナルの展開も効果的に働いており、原作にないラストの台詞もこの上なく感動的なものになっていました。漫画の実写映画化作品として、1つの到達点と言えるのではないでしょうか。

『テラフォーマーズ』

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

監督:三池崇史
主演:伊藤英明、武井咲、山下智久

公開前から大きなバッシングを浴びていていた作品でしたが、個人的にはかなり面白いと感じた作品でした。特殊な武器(能力)を持った者たちが、強大かつ膨大な数の敵の前に次々と散っていく様は『エイリアン2』のようでもあり、三池監督の悪趣味さ(褒め言葉)もプラスに働いていました。
しかし、ごまかしきれないツッコミどころや、小栗旬演じるキャラの寒すぎるギャグなど、擁護しきれないところがあるのも事実。原作の1巻だけのエピソードに絞り、エンタメ性が高い作品になっていたのはよかったのですが……。

『ヒメアノ〜ル』

ヒメアノ〜ル 濱田岳 ムロツヨシ

(C)2016「ヒメアノ〜ル」製作委員会

監督:吉田恵輔
主演:森田剛、濱田岳、佐津川愛美

前半は(ところどころで“不穏さ”も感じさせる)クスクス笑えるコメディでしたが、後半は恐ろしい連続殺人鬼の行動を徹底的に描いています。R15+指定では足りないと思えるほどの暴力的、性的な描写もありますが、それも作品に必要不可欠なもの。これまで『さんかく』や『麦子さんと』などの作品で人間の痛〜いところを描いてきた吉田恵輔と、この猟奇的な内容との相性は抜群……というよりも“科学反応”が起きすぎでした。興行成績は芳しくはなかったようですが、殺人鬼役の森田剛の演技や、原作と異なるラストシーンは多くの賞賛を受け、映画批評サイトでも軒並み高評価を獲得していました。
原作漫画から殺人鬼の“殺人を犯す理由”に大きな変更が加えられていたことも英断と言えるでしょう。古谷実の漫画作品が『ヒミズ』に引き続き、監督の個性を生かした素晴らしい実写映画化がなされたことが、古谷実ファンとしてうれしくて仕方がありません。

『秘密 THE TOP SECRET』

(C)2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会

監督:大友啓史
主演:生田斗真、岡田将生、松坂桃李

死者の脳を覗き見ることのできる捜査官たちが、邪悪な殺人犯に翻弄される物語です。原作にはない“装置”のビジュアルや細かな美術の数々、役者の鬼気迫る演技も圧巻でした。
個人的には大好きな作品なのですが、原作ファンからは2つのエピソードを統合したことや、人物の設定変更などが賛否両論を呼んでいました。しかし、これらは作品の不理解があったということではなく、監督が2時間のテレビドラマになってしまうから”と譲らなかった“こだわり”でもあるのです。ぜひ、たっぷりの上映時間を使ったからでこその、“心地よい疲れと頭の痛み(by生田斗真) ”を感じてみてほしいです。

『青空エール』

青空エール メイン

(C)2016 映画「青空エール」製作委員会(C)河原和音/集英社

監督:三木孝浩
主演:土屋太鳳、竹内涼真、葉山奨之

フレッシュな役者陣の魅力、綺麗事で済まさずに努力や夢を描く作品の精神性、2時間の映画に収めるための“最善”の原作からの変更があるなど、高い完成度を誇る作品です。三木監督は過去にも『ソラニン』や『ホットロード』などの若い男女の青春を描いた作品の実写化を手がけていましたが、ここに来てもはや“職人芸”と呼べる腕前を見せています。
高校の1年生と3年生の出来事を一気に描いために“駆け足”な印象があることや、吹奏楽の演奏とギャップのある主題歌などの否定的な意見がないわけではないですが、爽やかな青春や友情の物語が好きな方にぜひ観てほしいです。少女漫画を原作とした作品ですが、男性にも強くおすすめできます。

『四月は君の嘘』

四月は君の嘘 場面1

(C)2016フジテレビジョン 講談社 東宝 (C)新川直司/講談社

監督:新城毅彦
主演:広瀬すず、山崎賢人

正直に言って、原作にあった“音楽に掛けた少年少女の血の滲むような努力”や“挫折した天才少年のカムバック劇”や“ライバルたちとの切磋琢磨”などの魅力は描ききれていない作品です。原作では14歳という主人公たちの“幼い”年齢も重要だったのですが、映画ではキャスティングのために無理やり17歳という設定にしてしまったことも、好意的にはなれません。主演の広瀬すずのエキセントリックなキャラも、原作以上に感情移入がしにくくなっていました。
撮影や編集が抜群に上手く、演奏シーンの迫力も十分なのですが、やはり感情の描き方が一辺倒すぎるのは……。2時間弱の映画に収めるためには致し方がないところもあるのでしょうが…。

『デスノート Light up the NEW world』

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

監督:佐藤信介
主演:東出昌大、池松壮亮、菅田将暉

2016年でもっとも原作漫画のファンの怒りを買った作品だったのではないでしょうか。原作とはまったく異なるオリジナルストーリー(後日談)になっているのですが、物語は終盤に行くほど破綻していき、原作との設定の矛盾も多々、原作を読んでいない方にとっても“おかしいだろ”とツッコむしかない展開が訪れます。
監督や役者が実力のある方ばかりですし、映画オリジナルの死神のキャラクターや全体的なビジュアルは好評でした。意外性のあるオープニングや、デスノートを使った通り魔事件の顛末など、驚きを与えようとする気概も十分に感じられます。もう少しだけでも、後半に納得できる展開を用意してくれたらよかったのですが……。

『ミュージアム』

ミュージアム 小栗旬 大友啓史

(C)巴亮介/講談社 (C)2016映画『ミュージアム』製作委員会

監督:大友啓史
主演:小栗旬、妻夫木聡

次々と“私刑”と称した身勝手な殺人を犯す男を追ったスリラーです。原作から『セブン』のオマージュに溢れている作品で、映画でもジメジメした雰囲気の美術にその影響を強く感じました。普段のイメージとはまったく違う妻夫木聡の怪演も、映画ファンには見逃せないポイントでしょう。大友監督の演出力は洗練されており、やや長めの上映時間でもダレることなく観られるはずです。
原作ファンからは漫画に忠実な映画作品としておおむね好評である一方、“登場人物が叫びすぎでうるさい”や“犯人の思い通りになりすぎ”などの否定的な意見も多い作品でした。全体的には、万人受けする作品と言えるでしょう。

まとめ

このほかでは、『信長協奏曲』、『珍遊記』、『ヒーローマニア 生活』、『猫なんかよんでもこない。』、『CUTIE HONEY -TEARS-』、『燐寸少女 マッチショウジョ』、『少女椿』、『土竜の唄 香港狂騒曲』、『黒崎くんの言いなりになんてならない』、『オオカミ少女と黒王子』、『高台家の人々』、『溺れるナイフ』、『イタズラなKiss THE MOVIE〜ハイスクール編〜』『ライチ☆光クラブ』も漫画の実写映画化作品でした。

こうして総括をしてみると、2016年の漫画の実写映画化作品において、『ちはやふる』、『アイアムアヒーロー』、『ヒメアノ〜ル』、『青空エール』は“役者がイメージと違う”などといった批判はほとんどなく、原作漫画ファンのみならず、原作を知らない方の多くから絶賛されていました。また、2時間弱という映画の尺に収めるための脚本や演出に工夫がみられる作品、漫画からそのまま抜け出したような役者陣の熱演が記憶に残る作品も数多く存在しています。

原作漫画と違うイメージのキャスティングやビジュアルで批判を浴びるのも致し方はありませんが、“作品の評価”そのものは、映画を観てからがいいでしょう。その中には、原作とは異なる魅力を届けてくれたり、原作にあった魅力をさらに増幅して魅せてくれる作品もあるのですから(もちろん、そうとは言えない作品もあるのですが)。

2017年も、『3月のライオン』、『銀魂』、『東京喰種トーキョーグール』、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』、『鋼の錬金術師』など、人気漫画を原作とした実写映画が続々と公開されます。もしも、パッと見のビジュアルの時点では不安たっぷり……と思っていても、その多くは実力のある監督やスタッフが携わっているので、実際に観てみなければどうなるかはわかりません。ぜひ、今後も漫画の実写映画化作品に期待してみようではないですか!

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(文:ヒナタカ)

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