映画ファンならずとも要注目のインディーズ映画 『みちていく』

■「キネマニア共和国」

今年の夏の映画界は往年のヒット・シリーズ最新作や恒例アニメーション映画などで大いに賑わいそうですが、そんな中で小品ながらも注目していただきたいインディーズの日本映画があります。
6月27日より東京・渋谷のユーロスペースでレイトショー上映中の『みちていく』。これは現在大学院生の竹内里紗監督が、大学の卒業制作映画として手がけたもので、そのクオリティの高さから昨年のTAMA NEW WAVEでグランプリ&女優賞を、うえだ城下町映画祭では大賞を受賞。その勢いに乗せて今回、正式に劇場公開の運びとなったものです。

イライラや不安など思春期の満たされない
心の隙間を埋める手段とは?

舞台となるのは、ある女子高の陸上部。どこか満たされない心の隙間を、恋人に体の一部を噛んでもらうことで埋めていくエースのみちる(飛田桃子)。生真面目であるがゆえに仲間たちから疎まれている部長の新田(山田由梨)。映画はふたりの少女それぞれが複雑な想いを抱えながら友情を育んでいく姿を繊細なタッチで綴っていきながら、思春期特有ともいえる理由のないイライラ感や、傷つけ傷つけられる心の痛みなどを、生々しくも臭みのない透明感をもって描出していきます。

制作形態としてはあくまでも自主映画=インディペンデント映画で、有名な俳優も出ていなければ、演出や撮影技術などもプロ顔負けと太鼓判を押すほどのものでもないにもかかわらず、映画としての味わいは濃厚で、日頃商業映画ばかり見慣れた目には新鮮、というよりも実に不可思議なものを見せられているような想いにとらわれます。主演のふたりの好演はもとより、彼女たちを疎ましく思っている周囲の少女たちの空虚な心までも、さりげなく魅せているあたりも妙味でしょう。

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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