『見えない目撃者』が韓国版・中国版を超える傑作となった「3つ」の理由!

©2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ ©2019MoonWatcher and N.E.W

2014年日本公開の韓国映画『ブラインド』を日本でリメイクした話題作『見えない目撃者』が、9月20日から劇場公開された。

その題材の面白さやクオリティの高さが世界的に評価され、既に中国で製作されたリメイク版が2016年に日本公開されているだけに、やはり気になるのは日本向けにどの様なアレンジが施されているのか? という点。

今回主演を務める吉岡里帆のアクションも期待の本作だが、果たしてその内容と出来は、どのようなものだったのか?

ストーリー

警察官として将来を有望視されながらも、自身の過失による自動車事故で、視力と大切な弟を失ってしまった浜中なつめ(吉岡里帆)。
事件から3年後、なつめは未だに失意と自責の念の中で暮らしていた。ある夜、彼女は偶然、車の接触事故に遭遇するが、慌てて立ち去る車の中から助けを求める少女の声を耳にする。
だが、盲目の彼女の目撃証言は、警察に聞き入れてもらえない。警察学校で培った判断力や洞察力から誘拐事件と確信したなつめは、同じくスケボーで車と接触した高校生の国崎春馬(高杉真宙)を探し出して、協力を要請する。
当初は彼女の証言を信じなかった刑事の木村(田口トモロヲ)と吉野(大倉孝二)も捜査に協力する中、特定の部位が切り取られた少女たちの遺体が発見され、女子高生連続殺人事件の存在が明らかになる。そんな中、なつめたちの背後にも血に濡れた犯人が近づこうとしていた…。

予告編

理由1:韓国版や中国版とは違う、大胆なアレンジが成功!

本作の基になったのは、2014年日本公開の韓国映画『ブラインド』。

過去の悲劇的な事故によって弟の命と自身の視力を失い、視覚障害者となった元警察官の女性が、連続誘拐事件の目撃者となる意外な設定が、公開当時高い評価を受けた作品だ。

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その人気の高さは、今回の日本版以前に中国でもリメイク版が製作されているほど。

実は韓国オリジナル版も中国版も、日本版と違って主人公と弟との間に実際の血縁関係はなく、事故の原因も日本版が弟の姉に対する甘えと不注意なのに対し、他の2作では警察官として配属される前に起こした主人公の規律違反の行動が、弟の死や事故の原因となっている。

更に、事故が起きて失明してからも主人公が警察官として職務に復帰を希望していたり、視覚障害が直接の原因ではなく、彼女の規律違反的行動により警察官としての資質を疑われたために、警察学校を除籍されたという韓国版と中国版の設定は、より救いのない厳しい状況に彼女を追いこむことになっているのだ。

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この点、日本版では主人公が警察官を辞めて、音声データの文字起こしという警察から離れた仕事で生計を立てており、外の社会とは一線を引いて弟に対する償いの日々を送っていることが、観客にも分かるように描かれている。

今回の日本版と他の2作で一番異なるのは、やはり犯人の顔や正体が終盤まで明らかにされない点だろう。

ちなみに、韓国版と中国版では映画の序盤で犯人の顔が明らかにされており、街で見かけた女性を無作為に誘拐監禁する韓国版の犯人像に対し、中国版の犯人は出会い系のアプリを使って被害者を選んでいるなど、その監禁方法や異常性などは今回の日本版に近いものがある。

実は、主人公のイメージも中国版と日本版とでは非常に近いものがあり、ラストのコンサートシーンに合わせて、ある歌の歌詞が重要な手掛かりとなったり、主人公と弟の関係に対応するように、犯人の犯行動機が妹の事故死だったりするなど、中国版でも細かい部分でかなりのアレンジが加えられていることがよく分かる。

更に、監禁された女性を助けようと必死で独自の捜査を続ける日本版の主人公に対し、韓国版や中国版では被害に遭った女性の背景は語られず、自身も犠牲者になりかけた主人公が犯人に襲われるという展開となり、最終的に迎える犯人との直接対決も、日本版とはまた違った意味を持つことになるのだ。

©2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ ©2019MoonWatcher and N.E.W

ただ、韓国版では主人公が警察官に復職するエピローグが入るのだが、犯人側の動機や背景がかなり詳しく説明され、主人公の警察官としてのスキルや優秀さがより際立つ日本版や中国版では、あえて韓国版のように主人公が警察官として復職するという展開を選択していない。

中でも主人公の服装の変化により、彼女がやっと過去のトラウマから解放されたことを示唆する日本版の展開は、鑑賞後に深い余韻を残す効果を上げていて実に見事!

ちなみに中国版は現在Huluで配信中なので、未見の方は今回の日本版を鑑賞されてから、韓国版や中国版に触れてみては?

理由2:日本版独自の犯人像がサスペンスを盛り上げる!

韓国オリジナル版の犯人は、女性への暴行目的で監禁と殺人を繰り返す男。

その正体がタクシー運転手と思わせて実は…、という意外な仕掛けもあるのだが、最後までその動機や犯人の背景が詳しく説明されることはない。

それに対して中国版の犯人は、主人公と同様に自身の過失により妹の命を奪ってしまったことが犯行の原因となっているが、実際に女性に暴行しているシーンは殆ど出てこないため、犯人の異常性や狂暴性が韓国版に比べて弱まってしまった感が強いのも事実。

その点を考慮してか、今回の日本版に登場する犯人に対しては異常性を持つに至った背景やその動機、更には犯人の最終目的などの部分で日本独自のアレンジがかなり施されており、主人公たちの前に立ちふさがる犯人が、より凶悪で姿が見えない存在として描かれている。

©2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ ©2019MoonWatcher and N.E.W

単なる事故の目撃者というだけではなく、実は主人公も犠牲者になりかけていたという他の2作の設定は、終盤の直接対決へのサスペンスを盛り上げてくれるのだが、その反面、犯人の顔が当初から分かってしまうため、主人公に忍び寄る犯人を観客が判別できてしまうことで、サスペンス要素が弱まる危険性を孕んでいる点は否定できない。

その点、今回の日本版では犯人の正体が最後まで隠されているので、観客も主人公たちと同じ状況に置かれることになり、特に本編中でも強烈な印象を残す”スマホを使った逃走シーン”でのサスペンスが、より一層高まることになるのだ。

更に日本版では、ある異常な目的のための計画的な犯行という要素が追加されており、このことが次の犠牲者の発見と犯行阻止という、他の2作には無かった物語の山場に繋がることになる。

©2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ ©2019MoonWatcher and N.E.W

犯人と主人公との直接対決を主軸に、被害者の存在はあまり重視されていなかった他の2作に対して、被害者となった女子高校生たちの生態や現実的な問題を絡めつつ、彼女たちを何とか救おうと奔走する主人公なつめの姿が描かれることで、彼女が視力を失う原因となった事故に対するトラウマの大きさと、二度と弟を失った時のような失敗をしないという彼女の決意が観客の心を掴む本作。

「救える命を決して諦めない」なつめの姿に、次第に影響を受けていく春馬や刑事たち。そこには身体的なハンディキャップが決して障害ではないこと、むしろ精神的な弱さや諦めこそが障害となる、そんな真理が含まれている気がしてならなかった。

理由3:吉岡里帆の熱演が凄い!

視力を失った元警察官という難しい役柄に挑む吉岡里帆の、この作品にかける熱意が伝わってくるような数々の迫力あるアクションシーンも、見どころの一つとなっている本作。

他の2作とは違い、主人公のなつめが警察学校を首席で卒業し、将来を嘱望されていたことが語られる日本版では、彼女の観察眼や記憶力・判断力にも充分な説得力が生まれることになる。

更に、事故で視力を失った彼女が警察官時代とは打って変わって、首元までしっかり覆った服装で生活している点も、自身の過失で弟を失った事故への自責の念に囚われたまま、未だに心を閉ざしていることを見事に表現しているのだ。

©2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ ©2019MoonWatcher and N.E.W

テレビドラマやCMで目にするイメージから、どうしても柔らかい印象のあった吉岡里帆だが、本作では失明前と後での内面的な変化を見事に演じ分けており、過去のトラウマに苦しめられながらも警察官として全うできなかった職務への責任感から、危険な連続殺人事件の捜査を続ける主人公の強さを実によく表現している。

残念ながら過去の主演映画では興業的に十分な結果を残せなかった彼女だが、今年公開されて脇役として出演した『ホットギミック ガールミーツボーイ』での演技が素晴らしかっただけに、ついに主演2作目にして彼女の代表作が誕生した! そんな想いが強かった、この『見えない目撃者』。

吉岡里帆のイメージを覆す第一級のサスペンス映画にして大エンタメ作品なので、全力でオススメします!

最後に

残念ながら興業成績において苦戦を強いられた、過去の吉岡里帆主演映画の印象や、今回の作品のようにハードなイメージの役柄は彼女の持つイメージに合わないのでは? 実は、そんな先入観を胸に鑑賞に臨んだ本作。

だが、そうした不安は一気に覆されることになった。

©2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ ©2019MoonWatcher and N.E.W

何故なら、韓国版や中国版と比べて少しも遜色無い内容に加えて、犯人像に対するより深いアプローチや、冒頭の事故で犠牲となる少年を実の弟に変更した点など、今回の日本版に施された数々のアレンジや変更が、実に見事な効果を上げていたからだ。

更に、本作の脚本家である藤井清美の過去作『ミュージアム』に非常に近い雰囲気を持った内容に仕上がった本作は、本編中に登場する殺人の描写もかなり攻めたものとなっており、公開にあたって作品がR15指定を受けているほど。

将来に対する希望が見いだせないまま、半ば諦めの気持ちで生きている高校生の春馬が、なつめとの連続誘拐事件捜査を通して、自分の将来を自分で決めるまでに成長する点も上手いのだが、今回の日本版独自のアレンジの中でも特筆すべきなのは、何といっても弟との思い出の品が後の重要な伏線となる点だろう。

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これは弟との血縁関係が無かった他の2作では描けなかったであろう展開であり、亡き弟との絆の強さや、過去の過ちに対する贖罪など、様々な要素が含まれた実に秀逸なアイディアなので必見!

ただ一点だけ気になったのが、本作で犯人を演じる俳優が、最近のテレビドラマでも「けっこう、いい人そうに見えて実は…」という役柄を演じることが多く、すでに見かけ通りの人物では無いというイメージが観客の側にあるためか、スクリーンに登場した時点で「多分、犯人はこの人だろうな」、そう思えてしまう点だった。

せっかく今回の日本版が犯人推理の面白さと、強烈な犯人像や犯行動機の設定に成功しているだけに、謎解きの面白さや真犯人の意外性を期待する観客に、少なからず失望を与えてしまうのでは? そう思わずにはいられなかった。

とはいえ吉岡里帆の熱演と、日本版独自のアレンジにより終盤の展開を大胆に変更した点が見事に成功した本作は、絶対に劇場で観る価値あり!

時間と余裕がある方は、是非韓国版や中国版と見比べて頂ければと思う。

(文:滝口アキラ)

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