『ミスター・ガラス』を読み解く3つの謎とは?三つ葉のクローバーにも重要な意味が!

※ここからは映画本編のネタバレを含みます。
 映画鑑賞前の方は、鑑賞後に読むことをおすすめします。

謎2、謎3:あの組織の正体、三つ葉のクローバーの意味とは?

本作の終盤で、突然その存在が明らかになる謎の組織。メンバーが皆、体に“三つ葉のクローバー”のイレズミを入れているという設定なのだが、実はこの部分にも組織の目的や正体に対しての重要なヒントが隠されている。

“三つ葉のクローバー”の花言葉は「復讐」や「約束」であり、更に1本の茎に3枚の葉が生えていることから、昔からキリスト教においてはクローバーを「三位一体」と関連付けて考えている。つまり、父なる神・その子キリスト・精霊の3つで三位一体というわけで、彼らがキリスト教の厳格な教えを守る組織であることが、このイレズミから推測出来ることになる。加えてこの三つ葉が、そのままデヴィッドとミスター・ガラス、それにケヴィン=ビーストの3人を指すというわけだ。

©Universal Pictures

更に「復讐」という花言葉から考えて、この組織の正体が、ミスター・ガラスが引き起こした列車事故の犠牲者によって作られた組織である、との見方も可能であり、実際これは、かなり有力な解釈の様に思える。

だが、ここで前述した本作の裏テーマである、アメリカン・コミックスの歴史という部分を踏まえて考えると、この組織が何を表しているのかが見えてくることになる。

つまり、この組織は前述した通り全米のコミックス倫理規定委員会(CCA)の象徴であり、彼らが3人に対して行おうとした粛正こそ、アメリカン・コミックスの歴史に名高い“コミックス・コード”による表現の規制に他ならないのだ。

既に解説した様に、CCAは全米のコミック・ブックの過激な表現や内容を自主規制するために設立されたものであり、その影響力は最盛期において、全米のコミックス業界における事実上の検閲機関となっていたほど、大きなものだった。

CCAに加盟している出版社は、まず販売するコミックスを委員会に提出し、委員会はそれらのコミックスがコミックス倫理規定(コミックス・コード)に従っているか否かを審査し、 規定を満たしているコミックスには、委員会が出す許可マークの使用が承認されるというものだった。

こうして、1930年代に映画における検閲制度として定められた“ヘイズコード”のコミックス版とも言える、表現の自主規制として定められた“コミックス・コード”の存在は、本来子供向けだったコミックスの過激な表現や描写を、次第に厳しく規制していくことになる。

この時に厳しく制限されたのは、なにも暴力や残酷・性的表現だけではなく、実は吸血鬼や狼男、それにゾンビといったホラー映画お馴染みのキャラクターの使用も禁止されており、これを踏まえて考えると、ケヴィンの最後の人格であるビーストが象徴するのは、「X-メン」のオリジナルメンバー“ビースト”だけでなく、実は“狼男”に対するCCAの規制をも匂わせていることになるのだ。

本作が真に描きたかった裏テーマとは?

単刀直入に言うと、実は本作で描かれているのは、アメリカ国内におけるコミックスの表現規制と迫害、そして表現の自由を守るための戦いの歴史に他ならない。

実際『アンブレイカブル』の時は、夜や暗闇での登場シーンが多くてよく分からなかったのだが、今回昼間に戦いを繰り広げるデヴィッドが来ているパーカーの色は、何と緑色なのだ!

©Universal Pictures

そう、緑色のフードのヒーローと言えば、これはもうDCのグリーンアローやスペクターを連想せずにはいられないのだが、前述した通りCCAによって厳しく規制されていた人種差別や薬物中毒、環境問題などを、1970年代にあえて描いたことでも有名なDCコミックスの人気シリーズ、『グリーンランタン/グリーンアロー』を思い出すアメコミファンも多いのではないだろうか。

これに加えて、デヴィッドが息子をサイドキック(相棒)に事件を捜査する様子はバットマン、その怪力と思わぬ弱点の存在はスーパーマンを思わせることからも、デヴィッドが実はDCコミックス系のスーパーヒーローを象徴していることは明らかだ。

更に天才的な頭脳を持ちながらも、その脆弱な肉体のために今回は全編車椅子での登場となるミスター・ガラスは、マーベルの「X-メン」の指導者である、プロフェッサーXを思わせる。

実際、DCの「グリーンランタン/グリーンアロー」と同様に、マーベルもまた1970年代に「アメイジング・スパイダーマン」誌で麻薬依存症問題を扱って、コミックス・コードに対して戦いを挑んでいるという歴史的背景があるのだ。

更に、ケヴィンの最後の人格であるビーストは、当時のCCAによる主な規制対象となった、「イーリー」や「クリーピー」といったホラー系のコミックスの象徴と見ることが出来るし、ビーストが不純な若者を食べる描写は、表現がエスカレートし過ぎたコミックスが、若者に害を与えることのメタファーとも取ることが出来る。

©Universal Pictures

今回ネットで散見出来た、本作が「中途半端・微妙な内容だった」という意見は、きっと『スプリット』の続編としてのラブストーリー要素と、『アンブレイカブル』の続編としてのアメコミ賛歌が混在している点に引っかかったためではないだろうか。

あくまでも一つの解釈・方向性として、今回の記事が『ミスター・ガラス』を更に深く楽しむための参考になることを願って止まない。

最後に

『アンブレイカブル』と『スプリット』。一見かけ離れて見えた二つの世界が融合することで、観客の心に深い余韻と感動さえ呼ぶエンディングを見せてくれた、この『ミスター・ガラス』。

前作の『アンブレイカブル』や『スプリット』で描かれた、“社会からはみ出した者たち”に対する肯定と応援のメッセージは、本作で更に力強いものとなっていた。

実は『スプリット』の中でも、既に『アンブレイカブル』との関連性は描かれており、それはケヴィンが駅のホームに花束をそっと供えるシーンや、その後に乗り込んだ列車の中で、遂に彼がビーストへと変貌する描写にも表れている。

更には、『スプリット』で描かれた2人のラブストーリーの行方と同時に、『アンブレイカブル』で描かれたスーパーヒーローと悪役の関係、それにコミックスに対する愛情までも盛り込んだ、正にシャマラン信者も大満足の壮大な傑作になっているのが素晴らし過ぎる!

CCAによる自主規制によって表現の自由を奪われ、ある物は表現の自由に挑戦して破れ、またある物は地下に潜って、自主流通経路による販売の道を選んだ、当時のアメリカン・コミックスたち。

ある登場人物の命をかけた行動が、遂に世界中を一つに繋ぐ本作の結末は、WEBでの配信により、表現の規制に縛られず世界中でコミックスが見られる現在の状況の素晴らしさと、シャマラン監督のアメコミ愛が炸裂する感動の名シーンなので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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