涙も笑顔も、思い出として私たちの心を掴んで離さない映画の"歌"たち

■「映画音楽の世界」

みなさん、こんにちは。「映画音楽の世界」、今回は「映画本編で使用される音楽」という視点から、主題歌や挿入歌、音楽映画についてご紹介したいと思います。

コンピレーションサウンドトラックの楽しみ方


最近の映画主題歌と言えば『ワイルド・スピード スカイ・ミッション』で亡きポール・ウォーカーに捧げられたウィズ・カリファの[See You Again]が大きな感動を呼び涙を誘いました。



過去作としては『タイタニック』の[マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン]や『アルマゲドン』の[ミス・ア・シング]といったところが有名でしょうか。

まもなく発表されるアメリカ本国のアカデミー賞でも、「主題歌賞」が設けられているくらい主題歌とはまさに映画の顔になると言っても過言ではなく、挿入歌もまた映画音楽を構成する上でなくてはならない要素の一つなのです。

これら劇中で使用された曲をまとめたサウンドトラック盤が、コンピレーションアルバムと呼ばれる種類の一つになります。

映画の場合、同一のアーティストが主題歌・挿入歌すべてを提供するということはあまり見られないようです。そのため監督や音楽プロデューサーが多様なジャンルから選曲した楽曲が本編で使用されサウンドトラック盤に収録される形となるので、ふだんコラボレーションする機会がないアーティストが一枚のアルバムに集うという趣向がコンピレーションサウンドトラックにはあります。

また、本編で使用された楽曲はエンドロールでクレジットされ、使用楽曲リストなども作成されたりするので映画を鑑賞してお気に入りとなった楽曲、気になったアーティストのアルバムを探すといった楽しみも生まれるのではないでしょうか。

体感する音楽映画


では、もう少し裾野を広げて「音楽映画(ミュージカル映画)」について触れてみましょう。

主題歌や挿入歌は、各アーティストの楽曲が要所要所で使用されて映像の補足的な役割を果たす一方で、音楽映画と呼ばれるジャンルでは登場人物自身が歌唱し(中には楽器演奏までこなすというパターンも)、劇中幾度となくそんなシーンが繰り広げられます。

[レット・イット・ゴー]が映画と同様に爆発的なヒットとなった『アナと雪の女王』も好例になりますが、そういった映画ではそれらキャラクターの歌唱自体が映画音楽としての役割を担うため、サウンドトラック盤を購入してみると収録曲の大半が劇中歌で構成されています。



昨年はこの音楽映画の当たり年で、ざっと挙げてみるだけでも『アニー』『はじまりのうた』『ピッチ・パーフェクト』『ピッチ・パーフェクト2』『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』などが公開されました。

歌モノではありませんが、鬼教師フレッチャー先生の狂気的なレッスンが話題となった『セッション』も、劇伴(映画用に作曲されたインスト曲)とはひと味違う、主演マイルズ・テイラーのジャズ演奏を通した音楽映画でもありました。

 

中でもアメリカでの公開から3年も経過してからの日本公開となった『ピッチ・パーフェクト』は音楽映画として実に衝撃的な作品でした。楽器を一切使用しない、音として奏でられるのは声のみ。

アカペラから進化を見せた驚異的なボイスパフォーマンスとヒューマンビートボックスは圧巻の一言で、コミカルな設定や青春ストーリーも映画としての魅力をしっかりと備えつつ、ステージ上でのアカペラバトルは音楽映画の可能性をより一層高めました。



 

『はじまりのうた』もキーラ・ナイトレイの歌唱シーンやマルーン5のヴォーカリスト、アダム・レビーンのソロパフォーマンスが話題となり、またストリートミュージシャンらとのゲリラ路上セッションで見事に紡ぎ出されていく音楽が実に明るく、爽快感を与えてくれました。この映画では音楽そのものだけでなく、音楽を聴く、という視点から二人で楽しむイヤフォンスプリッターというアイテムを使っての音楽デートも話題になりましたね。



 

日本映画も負けてはいません。4月1日から公開となる多部未華子さん主演の『あやしい彼女』も劇中に昭和の名曲が数多く登場します。そして本作では多部さん本人が歌唱シーンもこなしてみせ、その多才でいてキュートな魅力に既に好評価が相次いでいます。



いずれにせよ、映画の主題歌・挿入歌、音楽映画における音楽の役割はとても大きく、どの作品にも共通して言えることは「映画を通して音楽そのものの力を目と耳で体感出来る」ことが一つの映画鑑賞方法となっている、のではないかと思います。

さて、いよいよ次回では「映画で使用される音楽」として劇伴、いわゆるスコア曲について書いていきたいと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

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(文:葦見川和哉)

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