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2021-08-10

『イン・ザ・ハイツ』レビュー:「実はミュージカルが苦手」と語る俳優・橋本淳が絶賛した理由

■橋本淳の「おこがまシネマ」

どうも、橋本淳です。

86回目の更新、今回もどうぞよろしくお願いいたします。

熱中症対策に、感染症対策、どれだけ"個人的"な対策をしなくてはならないのか。疲弊は増し、慣れ始め、ますます悪循環に。

しかしそうしたときには、近しい人たちを思い出す、家族や友人などまで、苦しませることになってしまうことになることを想像すると、やはり自身でやれるべきことはやらねばと奮起する。

いつも助けてもらっている人への恩返しも含めて、そこは忘れずにいたいものですね。

今の辛い世の中が明けた暁には、そういった人たちとまた以前のように集まりたい。その日まで、なんとか。。


今回はこちらの作品をご紹介!!

『イン・ザ・ハイツ』

映画館の大音量、大画面をこれでもかと堪能してきました。

こういう世の中でなかったら、瓶ビールを手に持ち騒ぎながら、鑑賞したいと心から思う映画でした。さらに欲を言えば、野外シアターで、出店のご飯をツマミに仲間とビールで乾杯しながら、芝生の上で手を振り上げながらの鑑賞、なんていうのがしたかった。

夏に、しかもこの世の中に合う作品。



さまざまな問題を抱える人々、その逆境に立ち向かい、それぞれの夢に向かって一歩を踏み出す物語。

移民たちが多く住むコミュニティ"ワシントン・ハイツ"。そこには音楽が溢れ、仲間が居て、いつでも賑やかで、明るい街があった。

原作、作詞作曲、音楽、製作を務め、さらには劇中のピラグア売り役としても出演する、リン=マニュエル・ミランダ。

彼は、ブロードウェイミュージカル『イン・ザ・ハイツ』、さらには、『ハミルトン』にてトニー賞史上最多となる13部門16ノミネート、11部門受賞という快挙を果たしている、現在最も勢いと実力のあるクリエイター。

19歳の時、大学在学中に『イン・ザ・ハイツ』の原型となった作品を発表し、そこからオフブロードウェイ、ブロードウェイと登り詰めていく。

役者としても魅力的で、オファーが絶えないほど。劇中のプエルトリコ風かき氷"ピラグア"売りとしてポイントで出演してくるが、その魅力溢れる表現に、カメオ出演の枠を大きく越えて、とても色濃い印象を残していく。

短いシーンながら、葛藤や焦燥感、やり切れなさを滲ませながらも、明るく努める姿は脳内に焼き付いています。



監督は、台湾系アメリカ人一世のジョン・M・チュウ。

キャストがほぼアジア人でありながら米国で異例のヒットを遂げ、数多くの賞を受賞した『クレイジー・リッチ!』(18)などを手掛けている信頼厚い演出家。

チュウ監督自身が経験したことと、劇中の登場人物の感じることが重なることも多く、その思いは計り知れなく、余すことなく映画に吹き込まれています。現場の雰囲気が良かったのもチュウ監督の気配りや采配が大きい、と各キャストが語るほど、現場の隅々まで注意と敬意を払っていたことも伺えます。

セットではなく、実際のハイツで撮影しているので、そこに息づく街の雰囲気、揺らぎ、住民たちが発する音により生まれる音楽、その生々しさが実に伝わってきます。コミュニティの息遣いまで伝わる臨場感は、この作品の見どころのひとつといっても過言ではないでしょう。



わたし自身、実は、ミュージカルというものが、、少々苦手でして、、(ここでなんて発言を、、)

いきなり高らかに歌い上げることに、いささか疑問を持ってしまう質でして。嫌いなわけではなく、"苦手"なだけなのですが。。

しかし、そんなわたしでもすんなりと入り込めるのは、ラップというのが大きな要因なのかもしれません。ミランダの楽曲には、様々なジャンルの要素が入っています。ヒップホップ、サルサ、R&B、ポップなどが混ざり合い、さらに現代的。

台詞を話していう延長で、リズムが加えられラップになっていき、そこに音楽が入っていく、というようなシームレスな展開に、ミュージカル素人なわたしでもなんの疑問もなく、各登場人物の葛藤を体感出来ました。感情の高ぶりが、音楽になっていくような。

新たな形のミュージカル。現代的であり、観る人を限定しない大きな懐で迎え入れてくれる作品。大きなテーマとしては、やはり移民であることで味わう苦労や困難を描いている。

日本に住んでいるとなかなか、そういったことを感じづらい。細かいところまでは理解することは難しいというのが悔しく、自分の不勉強さを憎むところ。しかし、いまの世界から抜け出して、自分の思い描く夢を叶える姿と視点を置き換えると、遠い世界が近くに感じられる。

感染症により大変な状況になったこの世の中に、強制的に重ねて観てしまう自分も正直いたので、多くの勇気をもらえました。結局助けてくれたり、助けるべきは家族や隣人。そこは世界の共通点。それを感じ直せただけで、大きな影響です。

そして、次世代に伝え、繋げること。

前世代より、次世代の世界はさらに広がる可能性に溢れています。その手助けをするために、現代のわたしたちは、背中でみせること、そして伝えることをしなければならない。

根深い問題は、一朝一夕、一代では改善しないかもしれませんが、いつかはきっと解決に向かう。そのことを信じて次に託すことの大切さを、この作品から、しかと受け取りました。

茹だるような暑さが続きますが、こちらの作品で吹き飛ばしてもらいましょう。

それでは今回も、おこがましくも紹介させていただきました。

(文:橋本淳)

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