映画コラム

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2016年12月25日

大豊作!2016年の映画とサウンドトラックを振り返る

大豊作!2016年の映画とサウンドトラックを振り返る

■「映画音楽の世界」

 みなさん、こんにちは。今年も残すところあと僅か。当コラム「映画音楽の世界」も今年最後の更新となります。
と、いうことで今回の「映画音楽の世界」では、2016年の映画音楽や音楽映画、サウンドトラックを振り返ってみたいと思います。

1月~4月


残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋― 竹内結子 ナレーション


(C)2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会



 狙ったわけではないと思いますが、新年早々1月には『クリムゾン・ピーク』『イット・フォローズ』『残穢 住んではいけない部屋』と、いきなり良作のホラー映画が立て続けに公開されました。中でも『イット・フォローズ』は往年のイタリアンジャッロを彷彿とさせ、ホラー作品とは思えないような太く腹に響くシンセサウンドが印象的な作品に。

 スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』(1月公開)。スピルバーグ作品の音楽といえばジョン・ウィリアムズですが、健康面を理由に離脱。007シリーズなどのトーマス・ニューマンが登板しました。心配なニューズでしたが、その後『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(9月公開)にて無事復帰したのでありました。

 『オデッセイ』(2月公開)は苦境でも持ち前の前向きな姿勢が印象的だったワトニーと、ディスコミュージックで編曲されたプレイリストの組み合わせが見事だった作品。リドリー・スコット監督、流石です。

オデッセイ マット・デイモン


(C)2015 Twentieth Century Fox Film



 アカデミー作曲賞を受賞した『ヘイトフル・エイト』(2月公開)はタランティーノ監督の念願だったエンニオ・モリコーネとの初タッグ。タランティーノの西部劇愛とモリコーネ愛が結実した形になり、モリコーネのオスカー受賞に誰よりも喜んだのはタランティーノ監督だったのでは。

 ハンス・ジマーとジャンキーXLの共同作曲となった『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』(3月公開)からは中毒性が高すぎるワンダーウーマンのテーマ曲も爆誕。ワンダーウーマン登場シーンに拍車を掛けたのでした。来年公開となるワンダーウーマン単独映画では果たしてあのテーマ曲は聴けるのか?

 『ボーダーライン』(4月公開)は作品の血の抗争が醸し出す世界観同様、ヨハン・ヨハンソンの重々しいスコアが恐怖感を倍増。来年公開となるドゥニ・ヴィルヌーブ監督とヨハンソンタッグによる『メッセージ』『ブレードランナー2045』にも期待。

 坂本龍一が『レヴェナント 蘇りし者』(4月公開)の音楽を手掛けたことも話題に。美麗でありながら実験的でもあるスタイルはさすが世界の教授であり、病気療養からの復帰からすぐにワールドワイドな展開を見せてもらい、心から安堵したものです。

レヴェナント:蘇えりし者


(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.



 3月、4月に連続公開となった『ちはやふる 上の句・下の句』はPerfumeの主題歌[FLASH]がかるたの世界とはミスマッチに思えて実はピタリとはまるという一曲で、時間を経てなお映画と主題歌が頭の中でちゃんとワンセットになっている人が多いのではないでしょうか。

5月~8月


世界から猫が消えたなら


(C)2016 映画『世界から猫が消えたなら』製作委員会



 主題歌だと『世界から猫が消えたなら』(5月公開)もHARUHIの[ひずみ]が予告編の段階から使われて注目を浴びていただけに、耳に残るメローディーでした。作曲には邦楽界から小林武史が参加。

 アメコミどころか映画の常識すら破ってきたのがライアン・レイノルズ主演の『デッドプール』(6月公開)でした。ジャンキーXLのスコアもノリノリならばDMXやCHICAGOなどの選曲も面白い作品で、サントラ盤も通常版と追加版の二枚が発売されました。

 宮藤官九郎節が炸裂した『TOO YOUNG TOO DIE 若くして死ぬ』(6月公開)は、長瀬智也率いる“ヘルズ”のヘヴィメタルな同名曲から神木隆之介も参加した涙を誘うバラードまで、コメディ映画としてだけでなく音楽映画としても面白い作品に。

 音楽映画と言えば『シング・ストリート 未来へのうた』(7月公開)のラストで泣かされた、という人も多かったのではないでしょうか。ジョン・カーニー監督の自伝的な作品であり、ダブリンを舞台にしてデュラン・デュランやザ・ジャムなど80年代当時のヒット曲で彩られ、『はじまりのうた』に続きアダム・レヴィ―ンが主題歌を担当しました。

 音楽映画ではないはずが結果的にヴォーカルナンバーで占められていたのが『HiGH&LOW THE MOVIE』(7月公開)。EXILE TRIBEのメンバーがこぞって出演した本作、しかしながら喧嘩上等映画にキャストも楽曲もなかなかマッチしていたではないですか。後半のバトルシーンは邦画界としては最高水準だったのでは。

 そんな今年の邦画界、そして映画音楽界に深い‟爪痕“を残したのが我らが怪獣王、ゴジラ。庵野秀明が総監督を務めた『シン・ゴジラ』は初代ゴジラをリスペクトしつつ今までのゴジラ映画を覆す設定の数々で大きな話題に。80億を超える興収を上げ絶叫・爆音上映も慣行され、鷺巣詩郎のオリジナル楽曲に紛れ、過去作品やヱヴァンゲリヲンの曲も使用した庵野色が濃く反映されたサントラ盤はアルバムランキングを席捲したのでした。

シン・ゴジラ ネタバレ


(C)2016 TOHO CO.,LTD.



 『ゴーストバスターズ』(8月公開)のリブート作品もオリジナルシリーズ愛に溢れ、ゲスト出演したキャストだけでなく、あのテーマ曲のアレンジナンバーもファンには嬉しいところ。ケイト・マッキノン演じるホルツマンがタイムズスクエアで無双を見せたシーンはワンダーウーマンに匹敵するカッコよさ! エンドロールのケヴィンのダンスシーンもお洒落でしたね。

 2016年の映画界において最も大きなトピックとなったのは、間違いなく新海誠監督の『君の名は。』でしょう。いよいよ興収も200億円を突破。年明けの1月からは二週間限定IMAX上映も始まる特大ヒットとなった本作の音楽を担当したJ-POPグループのRADWIMPSのサントラ盤は、アルバムランキングで二週連続1位を獲得。街の至る所で主題歌[前前前世]が流れ、映画、小説とともに爆発的なヒットとなりました。

君の名は。サブ


(C)2016「君の名は。」製作委員会



 バレエ×バイオリン×ダンスの融合が見事だったのが『ハートビート』(8月公開)。自身も歌手であるマイケル・ダミアン監督のヒップホップセンスと、妻であり脚本を担当したバレエダンサーのジャニーン・ダミアンのクラシックセンスが組み合わさり、ミュージックビデオとしても見応えのあるダンスバトルシーンなど新機軸の音楽映画が誕生したのでした。

9月~12月


スーサイド・スクワッド01


(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC



 DCコミックの悪役が集合した『スーサイド・スクワッド』(9月公開)は、SKRILLEXやエミネムの楽曲が収録されたサントラアルバムがアメリカでゴールドディスク認定されるなど大ヒットしましたが、本編ではぶつ切り的な使い方に不満の声も。スコアは『ゼロ・グラビティ』でオスカー受賞のスティーヴン・プライス。

 J-POPから中田ヤスタカが参戦した『何者』(10月公開)では、主題歌に米津玄師をフィーチャー。米津のボーカルが醸し出す雰囲気と中田サウンドが出会った[NANIMONO]や、劇伴初挑戦となる中田ヤスタカのサントラ盤は聴き応えのある一枚。

何者 メイン


(C)2016映画「何者」製作委員会



 『きっと、うまくいく』の監督&主演コンビとなった『PK』は、インド映画らしく約3時間の上映の中に歌にダンスにと相変わらずの盛り上がりぶり。けれど、それ以上に脚本がしっかりした作品だったことも印象的でした。散りばめた伏線を回収しきったラストや、宇宙人PKの視点を通して見たインドという国の宗教観、信仰心に対する疑問をPK自身が時に涙を流しながら語る場面など、魅力満載の一本でした。

 映画を見た誰しもが驚いたのが、ディズニー・クラシックの大家であるアラン・メンケンが登板を果たした『ソーセージ・パーティー』(11月公開)でしょう。数々のディズニー作品を彩って来たメンケンがR15指定も当然なエロ・グロ・ナンセンスなコメディアニメ映画を担当しようとは誰が想像できたでしょうか。しかも無駄にテーマ曲が美しいのも余計に意味が不明(褒めています)。以前にもこのコラムで紹介しましたが、いまだに「メンケンに依頼したの誰だよ」、という思いに変わりはありません(褒めています)。

 SNSの口コミで評判が広まり上映館が増加し大きな話題となったのが、片渕須直監督の『この世界の片隅に』(11月12日より公開中)でした。戦時中ながら健気に生きるスズさんの姿に誰もが惚れ込み、共感した作品。こういった形の戦争映画がSNSを通して若い世代にまで浸透して評価を高めた点も特筆すべきところでしょう。もちろん今も上映館数を増やしながら劇場公開は続いていて、劇伴を担当したコトリンゴが歌う[悲しくてやりきれない]や[たんぽぽ]も必聴の作品です。

この世界の片隅に01


(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会



 メリル・ストリープ、ヒュー・グラントともに演技力を絶賛されているのが『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(12月1日より公開中)。主人公フローレンス・フォスター・ジェンキンスはメリル・ストリープが特訓してまでみせたほどの「音痴な」実在のソプラノ歌手。フローレンスを陰ながらサポートするその夫をヒュー・グラントが演じ、二人の姿を悲喜こもごも描いています。なるほど確かにその音痴ぶりには失礼ながら鑑賞しながら思わず笑ってしまうほど。それでも多くの人に愛されたフローレンスの人柄も、映画では観客の視点を担うピアノ奏者の目線などを通して描かれています。アレクサンドル・デスプラの温かみのあるスコアも心地良い作品です。

 そのアレクサンドル・デスプラが公開を間近にして降板、マイケル・ジアッキーノへと作曲家が交代したのが『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(12月17日より公開中)。結果的に、本作の音楽は限りなくオリジナルストーリー作曲のジョン・ウィリアムズに寄せた、フルオーケストラでマーチ的に描いたスター・ウォーズとしての世界観を壊さないものに仕上がった印象となっていました。楽曲期間が限りなく短い中でのジアッキーノの功績は大きく、特にエンドロールで披露した曲には喝采を叫びたかったファンも多いのでは?

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー


(C)Lucasfilm 2016



まとめ


駆け足で2016年の映画・映画音楽を振り返った形になり、本来ならば紹介したい作品はまだまだあるのですが、この辺りで。
皆様にとっての2016年の映画は、いかがでしたでしょうか。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。この一年、「映画音楽も意識して聴くようになった」という声も頂き、嬉しい限りであります。

2017年も皆様にとって素敵な映画体験が出来る一年となりますように。これからも「映画音楽の世界」ともども宜しくお願い致します。

■「映画音楽の世界」の連載をもっと読みたい方は、こちら

(文:葦見川和哉)

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