こんな風に年齢を重ねた夫婦でありたい 『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』

■「キネマニア共和国」

ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります

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正月気分もようやく抜けて(まだ抜けてなかったんかい! という声はさておき)真冬にほんわか温かい人間愛の映画を見たくなるのが人情というもので……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~》

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』も、そんな人間愛に満ちた1本です。

こんな風に年齢を重ねた夫婦でありたい
『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』

画家の夫アレックス(モーガン・フリーマン)と元教師の妻ルースは、ニューヨークでもっとも注目されているエリア、ブルックリンの最上階の部屋で長年暮らしてきましたが、一見申し分のない暮らしの中、唯一困ったことがありました。

このマンション、エレベーターがない!

さすがに歳を重ねてきて、階段の上り下りがきつくなってきた夫妻は、この“眺めのいい部屋”を売却することに決め、新たな部屋を探すことにしたのですが……。

ロングセラー小説『眺めのいい部屋売ります』を原作に、リチャード・ロンクライン監督が手掛けたこの作品は、喜びも悲しみも幾年月と言わんばかりに、長年連れ添った夫婦の心の機微を繊細に、ときにコミカルに描き出していきます。

もうそれだけで夫婦やカップルで見るのに最適な作品と言えるでしょうし、またモーガン・フリーマンとダイアン・キートンの息の合った演技と存在感は、ナチュラルな芝居を尊しとするアメリカ映画ならではの味わい深さがあります。

また、部屋の売買をめぐる不動産とのやりとりや、家を下見に来る人々との交流などなど、何となくこういうものはどこの国でも同じようなものなのだなあといった感慨もありますが、それでもやはり一等地での売買ゆえ、部屋の売値を聞いただけで一般庶民としてはゲゲッ! といった驚きもあり、さりげなくもゴージャス感を醸し出すアメリカ映画ならではの豊かさに、ちょっと嫉妬の念まで芽生えてきそうなほど。

しかし一方で、夫婦が買っている愛犬が病気になって動物病院に入院し手術することになるエピソードや、何とマンハッタンの橋ではテロ騒動まで勃発し、それらの事象と部屋の売買の労苦とが、なぜか不思議に絡み合いながら映画的臨場感を高めてくれるのが、実に不思議ではあります。

どちらかといえば小品の部類に入る本作ですが、それでも見る者をゴージャスかつ心豊かに、そしておしゃれな気分にさせてくれた上で、夫婦愛の素晴らしさを際立たせてくれるという、アメリカ映画の懐の深さを改めて感じさせてくれる秀作です。

未だに独り者の、この私が断言するのですから、間違いありません……ううっ⁉

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(文:増當竜也)


    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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