アカデミー賞特集 助演女優賞編:“ウィークイヤー”と片付けられては勿体無い

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現地時間3月4日に発表される第90回アカデミー賞。その主要部門を解説していく当コラム。

第2回は「助演女優賞」。

スター女優もいなければ、ノミネート経験者も1人だけ。しかし“ウィークイヤー”と片付けられては勿体無い例年にも増してバリエーションに富んだ顔ぶれではないだろうか。2人の黒人女優に、2人のテレビ女優、そしてイギリスの大ベテラン女優。テレビ女優2人の一騎打ちムードが漂っているが、果たして。

ノミネート一覧

メアリー・J・ブライジ『マッドバウンド 哀しき友情』
アリソン・ジャネイ『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
レスリー・マンヴィル『ファントム・スレッド』
ローリー・メトカーフ『レディ・バード』
オクタヴィア・スペンサー『シェイプ・オブ・ウォーター』

今年の情勢は?

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『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』より

アリソン・ジャネイといえば『ザ・ホワイトハウス』で4度、『Mom』で2度のエミー賞に輝く大ベテラン。映画もアカデミー賞受賞作『アメリカン・ビューティー』でウェス・ベントリーの母親役を演じていたり、『JUNO/ジュノ』でもエレン・ペイジの母親役を演じ(夫の役は『セッション』のJ.K.シモンズ!)、今回のライバルの1人であるオクタヴィア・スペンサーがオスカーに輝いた『ヘルプ 心をつなぐストーリー』にも出演。

ふと思い出してみれば、昨年もスペンサーは助演女優賞にノミネートされており、同賞を受賞したのがヴィオラ・デイヴィスで、主演女優賞がエマ・ストーンという、まさに『ヘルプ』のチームが再結集したオスカーだった。実は今年もジャネイ、スペンサーに加え、『ヘルプ』の主題歌でゴールデン・グローブ賞にノミネートされていたメアリー・J・ブライジが入り、2年連続で『ヘルプ』チームが集まったといえるのだ。

余談はさておき、ジャネイ同様テレビ女優としてキャリアを築き上げたのはローリー・メトカーフ。彼女といえば『ロザンヌ』で3度エミー賞を受賞しており、映画にも出演しているとはいえ海外ドラマに疎い人にとってはジャネイよりも知名度は低いかもしれない。でもこう言えば何となく彼女の雰囲気が掴めるだろうか。彼女の映画での代表作は『トイ・ストーリー』シリーズで、アンディの母親の声を務めていたのだ。(もちろん来年公開の4作目にも出演する)

そしてもう1人、今年最大のサプライズノミネートとなったレスリー・マンヴィルといえばイギリスを代表する、いや、マイク・リー作品のミューズと言ったほうがわかりやすい。『人生は、時々晴れ』や『家族の庭』、そして『ターナー、光に愛を求めて』など、リー作品に欠かせない女優なのである。

さて、近年テレビドラマのクオリティが上がっていると同時に、Netflixをはじめとした動画配信サービスが主流となっている。そんな中で、テレビドラマ界のスター女優が2人も劇場用映画で候補入り、そしてNetflix作品からグラミー賞受賞歌手が、そして映画愛を貫く作品でアカデミー賞受賞女優が並ぶ。そこに不思議なことに英国アカデミー賞を受賞していないという“無冠の女王”マンヴィルが加わったことで、これまでのアカデミー賞では類を見ないタイプの豪華な部門になったわけだ。

例えばここに、まさかの冷遇となってしまった『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』のホリー・ハンターが入っていたら、主演女優賞経験者であり三大映画祭のうち2つを制しているというスター女優の参戦に、いつも通りの助演女優賞となったことだろう。

また『ダウンサイズ』のホン・チャウが入り、『バベル』の菊地凛子以来となるアジア系女優の候補入りというのも魅力的ではあったわけだが、アレクサンダー・ペイン作品で初めてともいえる不発となっただけに、さすがにここまでは達しなかったといえよう。

もっぱら受賞をかけた戦いは、ジャネイとメトカーフの一騎打ちムードで崩れない。

前哨戦のはじめこそ、作品パワーも後押ししてメトカーフが優勢となっていたが、年をまたいでからはジャーニーが主要な前哨戦を連勝。この2人の熾烈なバトルに、他の候補者が付け入る隙はなさそうだ。万が一、漁夫の利があるのであれば、英国会員からの票を集めることができるマンヴィルではあるが、無難にまとまる可能性が高いのではないだろうか。

(文:久保田和馬)

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