【完全版】アカデミー賞で起きたこと、徹底分析!

波乱と言えば長編アニメーション部門でしょうか。

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『トイ・ストーリー4』が獲得して、シリーズ二度目のアカデミー賞受賞となりました。長編アニメーション賞の歴史自体が短いので、そこまで騒がれませんがシリーズで獲得というのは初めてのことになります。

長編アニメーションに関してはほぼ結果がそのままスライドすると言われてきたアニー賞で『トイ・ストーリー4』はNetflix作品『クロース』に敗れていたので、まさかの逆転受賞となりました。

衣装やメイクアップ、美術に関しては本当に大混戦でしたが、それぞれ『ストーリー・オブ・マイライフわたしの若草物語』、『スキャンダル』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で分け合いました。

メイクアップ部門で受賞したカズ・ヒロさんは現在アメリカの永住権を獲得してこの名前になりましたが、日本国籍の辻一弘名義の時に『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』でゲイリー・オールドマンをチャーチルに変身させた人です。

受賞作『スキャンダル』ではシャーリズ・セロンを大変身させて、この人にかかればまったく似てない人が演じることになっても問題はないのでは?と思わせる匠の技を見せてくれました。ディック・スミスやリック・ベイカーと言った特殊メイクの先人への言葉も印象的でした。

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第92回アカデミー賞、その前夜。
大統領選の年、浮き彫りになる課題。

このアカデミー賞で大きな賞レースの流れが終わるわけです。それまでの大小の映画賞の話になるとさすがにマニアックになり過ぎてしまうので、そこは省きますが、諸々の結果を受けて1月13日にアカデミー賞のノミネートが発表されるといくつかの議論が起きます。

もともと、アカデミー賞は直前の年の総決算であるので、その時々の世相や思考、流行やハリウッド映画人の主張などが反映されます。

日本の今年の漢字や流行語大賞などと近い部分もありますが、アカデミー賞の主催が映画芸術科学アカデミーなので、よりメッセージ性のある行動が求められがちです。

戦争の臭いが強まれば反戦のメッセージが強い映画に票が集まりますし、近年で言えば人種・民族や性別(生物学上の性別や社会上の性別“ジェンダー”、そしてLGBTQ)などに対してどう考えるのか、どういう答えを出してくるのかが求められます。

特に、トランプさんが大統領になってからは孤立主義・差別主義とそれに対する融和・相互理解の尊重の狭間でハリウッドは揺れ動いてきました。

とは言え、基本的にユダヤ系で構成され、しかも世界中の人々を相手にするハリウッドなので、アンチトランプさんという空気が定着しているのも事実です。先日終わったトランプさんの弾劾裁判にちくりと刺すコメントもありました。

このように比較的リベラルな思考の人々が集まるハリウッドですが、特にアカデミーになると妙に保守的過ぎて批判を浴びることがしばしばあります。
数年前には有色人種の人間が主要部門にほとんど並ばず、“白すぎる・白百合のようなオスカー”という強烈な皮肉をスパイク・リー監督から浴びたこともありました。

昨年はこの点を反省したのか『ブラック・クランズマン』『ビール・ストリートの恋人たち』『グリーンブック』、果てはアメコミ超大作『ブラックパンサー』まで作品賞に並べてきました。さらに、アルフォンソ・キュアロン監督のスペイン語映画『ROMA/ローマ』も主要部門に名前を連ねました。

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結果、いつもアカデミー賞に辛口なスパイク・リー監督に脚色賞を『ビール・ストリートの恋人たち』のレジーナ・キングに助演女優賞を、『グリーンブック』のマーハシャラ・アリに助演男優賞を贈るなど、“おっ、アカデミー賞も変わったな!?”と思わせる展開になりました。

ところが作品賞に“唯一の白人監督による黒人映画”の『グリーンブック』が選ばれたことでなんとも微妙な空気になり、やっぱりスパイク・リー監督に嫌味を言われることになりました。

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このことを踏まえると今年の並びは“白過ぎる”のではないか?という思いにもなります。それをいじる司会者もいたくらいです。

黒人映画と呼べるのは主演女優賞と主題歌賞にノミネートされた『ハリエット』くらいでした。

ただ、人種という点で言えばアジア系も南米系もアメリカ国内の人口比率で言えば決して少なくなく『パラサイト半地下の家族』が主要部門に名を連ねたり、スペインに戻ったアントニオ・バンデラスがノミネートされたりしているのでそういう意味では門戸が狭まったという風にはならないのかもしれませんね。


    ライタープロフィール

    村松健太郎

    村松健太郎

    村松健太郎 脳梗塞と付き合いも10年目に入った映画文筆家。横浜出身。02年ニューシネマワークショップ(NCW)にて映画ビジネスを学び、同年よりチネチッタ㈱に入社し翌春より06年まで番組編成部門のアシスタント。07年から11年までにTOHOシネマズ㈱に勤務。沖縄国際映画祭、東京国際映画祭、PFFぴあフィルムフェスティバル、日本アカデミー賞の民間参加枠で審査員・選考員として参加。現在NCW配給部にて同制作部作品の配給・宣伝、イベント運営に携わる一方で各種記事を執筆。

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