『パンとバスと2度目のハツコイ』、まいまいが実によかったその理由

(C)2017映画「パンとバスと2度目のハツコイ」製作委員会

乃木坂46の一期生としてメンバー入りし、14thシングル『ハルジオンが咲く頃』ではセンターを務めた“まいまい”こと深川麻衣。

グループ内では“聖母”と謳われるほどの優しいおかあさん的存在としてファンからも慕われ、2016年にグループを卒業した彼女ですが……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.291》

そんなまいまいの初主演映画『パントバスと2度目のハツコイ』が、実に気持ちの良い青春映画に仕上がっていてうれしい限りなのでした!

どこか自信なさげなヒロインの
“2度目の初恋”のもどかしさ

『パンとバスと2度目のハツコイ』でまいまいが演じているのは、パン屋で働いている若い女性・市井ふみ。

もともと画家をめざしていた彼女ですが、どこかで自信を無くしたのか、今はその道を閉ざしてしまっているようです。

恋人から結婚のプロポーズをされても踏ん切りがつかず、結果サヨナラされたりもしています。

しかし、判を押したように家と職場を往復する毎日の中、いつも眺めているバス操車場の中に、中学時代の初恋の相手・湯浅たもつ(山下健二郎)がいました。

ふたりはやがて再会し、ふみは心穏やかならぬモードへ入っていきますが、たもつは別れた奥さんのことを今も忘れられずにいました……。

本作は、どこか人生をあきらめているかのようなヒロインが、自分を捨てた妻のことをあきらめきれない初恋相手に再び恋心を抱きつつ、なかなかそれ以上の関係に突き進めずにいるもどかしさを、さりげなくもリアルに描いた作品です。

正直、乃木坂46時代は包容力の高いキャラクターとして認識していた深川麻衣が、喜怒哀楽を表に出そうとしない(というか、久しく出さないうちに、上手く出せなくなった?)女の子を淡々と演じているのに最初はちょっと戸惑いましたが、まもなくして新境地開拓としての挑戦として、また今の時代を生きる女の子の、ひとつのリアルなありようとしても、非常に好もしく受け止めることができました。

たもつ役の山下健二郎のちょっと濃い感じも、別れた奥さんに未練たらたらな部分とのギャップがいい塩梅で出ています。

(C)2017映画「パンとバスと2度目のハツコイ」製作委員会

淡々とした中、ほのかに
上がっていく映画の温度

監督は『こっぴどい猫』(12)や『サッドティー』(14)『鬼灯さん家のアネキ』(14)『退屈な日々にさようならを』(17)など、若者たちの繊細な心情を巧みにとらえた作風で注目されている気鋭の若手・今泉力哉。

ちなみに彼は乃木坂46メンバー個々のPVも多数演出しています(深川麻衣とがっぷり組むのはこれが初めてかな?)。

かつての日本の青春映画にありがちだった激しい熱情やら確執やらの描出をサラリとかわしながら、本作はあくまでも淡々としたタッチを貫き、その中からそこはかとないユーモアまで感じさせつつ、ちょっと上の世代からするとどこかしら低温気質にも捉えられがちな今の時代の青春像を好もしく活写しているのが最大の美徳でしょう。

ふみとたもつ、さらに友人のさとみ(『獣道』などで注目の伊藤沙莉。彼女も好演!)も交えて旧友3人が集い語らうシーンなどの何気なさからも、個々の日常の相違や、もう戻ることのできない学生時代への追憶性などが自然に醸し出されています。

そして、先ほど低温気質と記しましたが、ドラマが進むにつれて画面の温度がほのかに上がっていく感覚にも捉われていくあたりが、見ていてさらに気持ちよさと切なさを増幅させてくれます。

特にふみとたもつが故郷の山までドライブにいくくだりは“圧巻”という言葉を使うと作品の性質にそぐわないものもありますが、やはり恋愛映画としてスリリングに映えていることも間違いありません。

決して大きな作品ではありませんが、逆に小品だからこその心地よさを体感できるとともに、深川麻衣の女優としての未来をこれからも応援したくなる逸品です。

これからもまいまいに良い出会い、良い映画がありますように!

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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