『パッセンジャー』がネタバレ厳禁である理由

3月24日(金)より映画『パッセンジャー』が公開されます。
まず宣言しておきますと、本作は“ネタバレをせずに”、“予備知識を入れないほうが”より楽しめる作品です。ベストと言える鑑賞方法は、劇場情報を確認して、映画館に足を運ぶ、ただそれだけなのです。

劇場情報
http://www.eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=618

世界観は“主人公が目覚めた瞬間”からとても自然な形で説明が入りますし、物語はシンプルそのもの。主要登場人物はごくわずかで、覚えるべき固有名詞もほとんどありません。そのため、事前の“予習”も必要ないのです。

残酷な描写も一切ありません。ちょっとだけエッチなシーンもありますが、それもG(全年齢)指定で問題がないものでした。そのため、子どもから大人まで、男女も分け隔てなく楽しめるでしょう。

鑑賞前に知っておくといいのは、以上のことだけ。以下の文章の項目5.では“なぜネタバレをしてはいけないか”ということも書いていますが、これを読むとある程度の先入観を与えてしまう危険性があります。映画を最大限に楽しみたいのであれば、ここからの文章さえも読まずに、劇場に足を運んだほうでよいでしょう。

そうだとしても……本作の魅力を知りたい方に向けて、なんとかネタバレのない範囲で、以下にその特徴を紹介いたします。

1:舞台は宇宙船の中だけ!アカデミー賞美術賞ノミネートの巨大セットがすごい!

本作のプロットは“広大な宇宙を漂う宇宙船の中で、2人の男女が目覚めてしまった!”という単純明快なもの。舞台はほぼ宇宙船の中だけです。

ここだけ聞くと、「あまりお金がなくても作れそう」と思う方もいるのではないでしょうか。事実、2009年のSF映画『月に囚われた男』は登場人物やセットを最小限に抑えたおかげで、わずか500万ドルで製作することができていました。

ところが、『月に囚われた男』と同様に“セットの中でだけでわずかな登場人物が語り合う”という内容の『パッセンジャー』の製作費は、その20倍以上の1億1000万ドル!他のハリウッド大作とそれほど変わりのない額なのです。

ここまでの製作費がかかった理由の1つは、主人公2人が長い時間を過ごす宇宙船を、巨大なセットで“ほぼ丸ごと”作りあげたことでしょう。

船内は、ただ無機質な金属に囲まれているだけではありません。電飾のエフェクトつきのバスケットコートや、宇宙空間が見えるプール、アール・デコ調のバーなど、バリエーションも豊か。何より、あちこちにある流線型のデザインは、それだけで“造形美”を求める心をくすぐってくるのです。

各エリアのセットが、背景にチラッと映る装飾に至るまで妥協がないのは言わずもがな。乗客たちが眠っている冬眠ポッドエリアに至っては、幅36.5メートル、長さ58メートルという巨大さで、ここだけでもセットの製作に10週間を要したというのだから、驚きです。

さらに、スペクタクルシーンはもちろん、セットの“延長上”の部分において最新のCG技術が違和感なく融合しているため、“宇宙船の中”や“SFの世界”にいるという“没入感”を、より高めてくれるでしょう。

主人公2人の“船室の格差”にも注目して欲しいです。男主人公のほうが“窮屈”であり、女主人公のほうが“広々として社交的でもある”ということ、それが2人の人生、貧富の差そのものを表しているかのようなのです。

こうした徹底したこだわりにより、本作は89回アカデミー賞にて美術賞にノミネートされました(他にも作曲賞にノミネート)。受賞は惜しくも『ラ・ラ・ランド』に譲ることになりましたが、本作を観た後だと「こちらが美術賞を受賞してもおかしくなかった」と多くの人が思うのではないでしょうか。

なお、本作のプロダクション・デザイナーは『インセプション』のガイ・ヘンドリックス・ディアスが関わっています。『インセプション』が好きな方には、『パッセンジャー』の美術との共通点を見つけられるかもしれませんよ。

2:クリス・プラットとジェニファー・ローレンスの名演技に注目!

本作は、今ハリウッドでもっとも乗りに乗っている若手俳優、クリス・プラットとジェニファー・ローレンスのW主演作です。クリスは『ジュラシック・ワールド』や『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』や『マグニフィセント・セブン』などで、ジェニファーは『ハンガー・ゲーム』シリーズや近年の『X-MEN』シリーズで、映画ファンにはおなじみですね。

本作の主要登場人物はわずか2人(+1体のアンドロイド)。SF的な要素は元より、この2人のキャラクター描写が主体となっているということが重要になっています。つまりは、上映時間中のほとんどが“2人の演技”だけで展開すると言っても過言ではないのです。

2人は、その作品の特徴に最大限に応えた、莫大な出演料に見合うだけの、キャリアの中でも随一と言える名演技を見せています。詳しくは書けませんが、“ある事実”を知った時のジェニファー・ローレンスの表情の変化には、激しく感情を揺さぶられました。主演2人のファンはもちろん、まったく知らないという方にも「こんなにすごい俳優(女優)だったのか!」と驚けることでしょう。

ちなみに、クリス・プラットは宇宙遊泳のシーンをよりリアルなものにするべく、“中に入ると方向感覚が失われるボックス”に入ったり、ワイヤーで吊り上げられながら手足が重力でひっぱられるフリをするためにすさまじい腹筋運動をしたりと、精神的にも肉体的にも過酷な演技が求められたのだとか。

ジェニファー・ローレンスも、“無重力空間でプールの水の塊に飲み込まれる”シーンのために、長時間にわたり鼻まで水に浸かることを余儀なくされたため、「今までの映画で一番苦労した撮影だったわ」と振り返っています。

主要登場人物がたった2人であるからこそよりわかる、クリス・プラットとジェニファー・ローレンスの妥協のない名演技。それを十二分に感じて欲しいです。

パッセンジャー メイン

3:もう1人の主人公?マイケル・シーンの“ロボットの演技”も要チェック

本作には、前述した2人の主人公だけでなく、もう1人“バーテンダーのアンドロイド”という重要なキャラクターが登場します。彼を演じているのは、『アンダーワールド』シリーズや『フロスト×ニクソン』のマイケル・シーン。その演技は、まさに“アンドロイドそのものなのです。

本作の監督であるモルテン・ティルドゥムは、このマイケル・シーンの役について「人間性を加えながらも、一皮むけば機械であることを観客に理解して欲しかった」、「彼がアンドロイドであることに疑いを持つことはない。その一方で、つい彼のことが好きになる」などと語っています。

その通りで、彼は質問に対して理路整然とした回答をするという知性を見せながらも、人工知能ならではの“細かいニュアンスの不理解”や、“人間との関わりの経験不足”を感じさせます。主人公2人の“孤独感”を煽るような存在でもある一方で、茶目っ気のある態度を見せたりもする……そんな“人ならざる存在だけど、憎めない”という役柄を、マイケル・シーンは見事に表現していました。

なお、このアンドロイドは“史上最高のバーテンダーになるようにプログラムされている”のだそうです。その事実が、時に主人公2人を楽しませ、そして苦しめる存在にもなる……その“関係性の変化”にも驚けますよ。

4:これは『君の名は。』?“セカイ系”の物語が好きな人もぜひ!

※この項目は『君の名は。』のネタバレに少しだけ触れているのでご注意ください!

本作は“宇宙版タイタニック”という触れ込みの宣伝がなされています。確かに“沈みゆく(宇宙)船”や“身分違いの恋”など、『タイタニック』と『パッセンジャー』には多くの共通点がありますね。

その触れ込みも正しいのですが、個人的に本作は、超ヒットを遂げたアニメ映画『君の名は。』を思わせました。その理由の1つが、どちらも“セカイ系”の物語であることです。

セカイ系の定義はあいまいで一概には言えませんが、乱暴に表現するのであれば“主人公たちの行動が、そのまま世界の危機の解決とシンクロしている”作劇のことです。『君の名は。』の後半の展開と同じように、『パッセンジャー』でも主人公2人のラブストーリーがやがて“(宇宙船で眠っている)災害で死ぬかもしれない人々を救う”物語になっているので、セカイ系と定義してよいでしょう。

この“ラブストーリーと世界の危機を結びつける”セカイ系の物語は『君の名は。』と『パッセンジャー』における大きな魅力である一方で、ご都合主義的な印象が否めない、小さな問題をあまりに壮大に描きすぎている、などの理由で賛否両論を呼びがちです。『君の名は。』は大絶賛の声が相次いだ一方で、激烈な否定的意見もあるのはご存知の通り。『パッセンジャー』も基本的には好評であるものの、批評家からは一部の設定やプロットに不満の声があがっているようです。

しかし、ごく個人的な意見を言えば、こうしたセカイ系の物語は“フィクションでしかできない”ことでもありますし、脚本家およびスタッフ一同の「俺たちはこの展開がどうしてもやりたいんだ!」という気概を感じるので、大好きなのです。

ぜひ、『君の名は。』のロマンティックさ、セカイ系の物語が好きな人に、この『パッセンジャー』をおすすめします。そして、そうした物語が苦手だ、という方にとっても“ネタバレ厳禁部分”は気に入るかも……?

パッセンジャー メイン

5:なるべく早く観に行こう!ネタバレを踏みやすい作品だ!

本作には、事前情報や予告編で“隠されている”ことがあります。

『シックス・センス』や『イニシエーション・ラブ』のラストであれば、公式で“これから観る人のために秘密にしておいてください”と提言されていますし、そうでなくても観た人は「ラストに驚いた!このどんでん返しはネタバレしないほうがいいだろう!」と想像はつきます。

しかし、本作『パッセンジャー』の“ある理由”により“ついついネタバレを言ってしまいがち”な作品なのです(そのある理由さえも、ネタバレになるので書けません)。

その証拠に、マスコミ試写では上映終了後に、「ここはネタバレしないでください」との旨の用紙が配られました。この時に筆者は「それはそうだろう!」と思ったと同時に、後で調べてみて「公式の資料や予告編や公式サイトに、どこにもそのことが触れられていない!」と驚きました。

これは公式でも“絶対に隠しておきたい箇所”なのです。そして用紙を配って“ネタバレしないでください”と注意しないといけないほどに……(繰り返しますが)“言ってしまいがち”でした。

筆者は、そのネタバレ厳禁部分が“わかった”瞬間に「うわー!!!」と心の中で叫びました。その“提示の仕方の仕方”も見事と言うしかない!この時は、試写会が体験したことのない“緊張感”に包まれました!

とにかく言えることは、“SNSなどでネタバレを踏んでしまう前に、早めに観に行って欲しい”ということです。“知らない”ことこそが、『パッセンジャー』の魅力を何倍にも大きくしてくれるのですから!

ちなみに、ベストな鑑賞方法は“カップルで劇場へ観に行く”ことだと断言します(もちろん家族や友だち、1人でも楽しめます)。極上のSF×ラブストーリーを、ぜひ劇場で堪能してください!

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(文:ヒナタカ)

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