『PとJK』の廣木隆一監督こそ、日本映画界&キラキラ映画の名匠だ!

PとJK 土屋太鳳

(C)2017 「PとJK」製作委員会

いわゆる思春期男女のキュートな恋を描いた漫画やライトノベル、アニメなどを原作とするキラキラ映画が現在花盛りではありますが、そんな中でブームが起きるはるか前からキラキラ映画を連打し続けてきた日本映画界の名匠がいます……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.217》

その名も、『PとJK』の廣木隆一監督です!

シティ派感覚を貫きつつ多彩なジャンルを手掛けてきた俊英監督

三次マキの少女漫画を原作に、警察官(P)と女子高生(JK)が結婚してしまったことから起きるさまざまな騒動を可愛くも切なくキュートに描いた映画『PとJK』ではありますが、巷の大人たちが良く「最近は高校生の恋愛映画ばかりで、予告を見ても区別がつかん」などと愚痴るのはあまりにももったいないというか、この人たちは廣木隆一監督のキラキラ映画をちゃんと見てきてない人たちなのだなと痛感するのみです。

まずは、廣木監督のプロフィールをざっと紹介していきますと……1954年1月1日生まれ。福島県出身。数々のピンク映画の現場に就いて映画演出を学び、82年『性虐!女を暴く』で映画監督デビュー。一見いやはやなタイトルですが(ピンク映画の場合、もともと普通のタイトルで脚本が記されていても、その後会社のほうで勝手にエロく変えられるのが常なのです)、実は当時バブルに突入しかけていた日本社会を背景に、独自の空間センスで男女の機微を見据えた快作として評価され、その後も80年代はSMから同性愛、フェチシズム、またコメディからシリアスなものまで多彩なジャンルにわたり、シティ感覚で捉えた快作を撮り続けていきました。

(なお、80年代のピンク映画は、黒沢清や周防正行、磯村一路、そして『おくりびと』でアカデミー賞外国映画賞を受賞した滝田洋二郎などなど、数多くの俊才映画監督を輩出したことも付記しておきます)

80年代末から、一般映画やオリジナルビデオの分野に進出。特に『魔王街 サディスティック・シティ』(93)『夢魔』(94)『君といつまでも』(95)のシュールな映像美に裏打ちされたエロティックOV3部作(一部劇場公開もされました)は今もファンの間で語り草となっており、また800メートル走に挑む高校陸上部の男女の姿を描いた思春期群像劇『800TWO LAP RUNNERS』(94)は高崎映画祭若手監督グランプリを受賞するなど高く評価されました。

その後も青春映画から『不貞の季節』(00)『美脚迷路』(01)『M』(07)のようなフェチシズムに満ちたエロティック映画、『機関車先生』(04)のようなヒューマン感動映画、時代劇『雷桜』(10)など多彩なジャンルに挑戦。

中でもヨコハマ映画祭&高崎映画祭監督賞を受賞した2003年の『ヴァイブレータ』は名作の誉れも高い彼の代表作です。

秋葉原無差別殺傷事件によって恋人を殺されたヒロインの心の傷を描くべく制作された『REVER』(12)は、撮影途中で東日本大震災が勃発したことから、急遽後半の展開を大幅に変更し、故郷・福島にキャメラを持ち込んでその惨禍を撮影しながら、人災と天災の双方と対峙しつつ、それでも人は生き続けていかなければならない苦悩と覚悟を静かに描出していきました。

PとJK

(C)2017 「PとJK」製作委員会

キャメラと自転車と少女がいれば“映画”は作れる

さて、そんな廣木監督ですが、最初に記した通り、実はキラキラ映画の名匠といった一面も備えています。

その最初は彼が撮った初の一般映画『童貞物語4・ぼくもスキーに連れてって』(89)からといってよいでしょう。これはやんちゃな少年少女の思春期を瑞々しく描いた快作で、その後も清水美砂や大沢たかおら時の若手俳優を総動員し、広瀬香美の主題歌も大ヒットした群像劇『ゲレンデがとけるほど恋したい。』(96)を手掛け、従来のエロティック路線とは異なるさわやか青春映画としての描出にこちらは驚かされたものでした。

当時はまだキラキラ映画という言葉はありませんでしたが、現在に至るその手のジャンルの巨匠としての片鱗をのぞかせたのは、堀北真希主演『恋する日曜日 私。恋した』(07)で、これは不治の病に侵された少女のひと夏を描いたものですが、徹底的な引き画の長廻しショットの連続で対象を冷徹に見据えながら、まもなくこの世を去るのであろうヒロインに映画的慈悲の救いを与えていました。
(ちなみにこの映画を見ていれば、その後の実話を映画化下2009年の『余命一ヵ月の花嫁』が偽善でも何でもない廣木映画そのものであることに気づくことができるかと思います)

そう、廣木監督作品の大きな特徴として、どんなジャンルでも引き画の長回しを主軸とし、対象にべったりよりそうことなく、どこか冷めた目で、それでいて優しく真摯に見守るといった特徴があります。

その後『きいろいゾウ』(13)『100回泣くこと』(13)『ストロボ・エッジ』(15)『オオカミ少女と黒王子』(16)『夏美のホタル』(16)などのキラキラ映画を含む青春映画群を多く彼が任されるようになっていった所以てましょう。

要するに廣木映画は観客に媚びず、おもねず、あくまでも自身のキャメラ・アイを信じて、それが“映画”であることを、常に若い観客に伝え得るものに仕上げてくれるのです。

もちろん『PとJK』も例外ではありません。

ここではやはり引き画と長廻しを主軸に、時折アップショットをインサートするなどのファン・サービスもしながら(?)、若いキャスト陣の息吹を伝えることに成功しています。

(タイトルは伏せますが、これと同時期公開の某作品を見ながら、きっと原作は面白いのだろうけど、演出が全然映画っぽくなくて、若いキャストの熱演がもったいないと思ってしまいました。当然のことではありますが、やはりキラキラだろうが何であろうが、映画は演出によって大きく左右され、キャストの魅力にも大きく影響を及ぼしてしまうのです)

ちなみに廣木映画に出演した若手俳優は、それを機に大きくステップアップを果たした者が多数います。何人か取材で聞いた話では、廣木監督の撮影現場の面白さによって、映画そのものの面白さに目覚めたと語ってくれます。おそらくは本作の亀梨和也も土屋太鳳も、高杉真宙(私は今回、特に彼が活き活きしているように見えました)、玉城ティナも同じでしょう。

そういえば本作も含めて廣木映画には自転車がアイテムとして登場することが多々ありますが、「キャメラと自転車と少女がいれば映画は撮れる」と語ったジャン=リュック・ゴダール監督の言葉に倣うわけではありませんが、廣木監督はキャメラと自転車と少女を駆使して映画を作り続けています。

廣木監督のキラキラ映画が“映画”である所以です。

(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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