『ブラック・シー』に見る新たな潜水艦映画の魅力

極限状況の中、欲望に狂わされていく男たち

Black Sea
潜水艦とは海に閉ざされた密室空間であり、ふとした事故で命を奪われる危険な場所でもあります。当然、乗組員の精神状態は緊迫し、そのストレスがスリリングなドラマを生む。これが潜水艦映画の醍醐味のひとつでもありますが、本作も国を違える者たちの、時に言葉が通じないことでのイライラも含めたストレスなどが閉塞空間とともに高まって、やがて大きな確執へと発展していきます。

ネタバレは避けたいので、これ以上は劇場でじかに確認していただきたいところですが、あらくれ男たちのプライドやエゴ、そして欲望が狂おしく交錯していく艦内のおぞましくも赤裸々な様子は実にリアルで、早くこの場から脱出したくなるほどの臨場感を伴っています。

堕ちた男の野心をリアルを体現するジュード・ロー

Black Sea
監督はドキュメンタリー映画出身で、ウガンダ大統領アミンの狂気を描いた初の劇映画『ラストキング・オブ・スコットランド』(06)で主演のフォレスト・ウィテカーにアカデミー賞主演男優賞をもたらしたケヴィン・マクドナルド。本作の男たちの赤裸々な描写もまた、この鬼才ならではのものでしょう。

主演はイギリスの人気スター、ジュード・ロウ。ここでは落ちぶれた男の悲哀と、名誉回復に焦る野心の両面を見事に体現していますが、もともと二枚目ながら最近は中年の熟した男ならではの危険な香りなど、先輩でもあるマイケル・ケインに似てきたなと思わされるものもあります。

この夏、ハリウッド超大作や日本のアニメ映画などで盛り上がる映画界ではありますが、こういった一見地味ながらも映画通を唸らせる秀作・佳作・快作もたくさん公開されています。情報をキャッチして、ぜひあなただけの新たな名作を見つけてみてください。

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(文:増當竜也)
提供:カルチュア・パブリッシャーズ 配給:プレシディオ

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou 鹿児島県出身。映画文筆。 朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。 取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。 編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊) その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。 ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊) 現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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