映画コラム

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2021年06月11日

『ブラックバード 家族が家族であるうちに』レビュー:自ら死を選んだ母をどう受け止めるかを問う美しく濃密なヒューマンドラマ

『ブラックバード 家族が家族であるうちに』レビュー:自ら死を選んだ母をどう受け止めるかを問う美しく濃密なヒューマンドラマ



重い病におかされた母親が自ら人生を終えると決めたとき、あなたならどうしますか。

スーザン・サランドンとケイト・ウィンスレットのアカデミー賞受賞2大女優の初共演でも話題の『ブラックバード 家族が家族であるうちに』。誰もが直面する死への問いを描いた静謐でディープな物語です。 

優しい波が打ち寄せる海沿いの家にある日、娘たちとその夫や恋人、友人が集まってきます。再会を喜び、テーブルを囲む様子は一見、楽しい週末のワンシーンのように見えます。しかし休日が終われば、母親は命を断つと決めています。彼女には二度と会えず、触れることもできないことを、誰もがわかっているのです。

ガラスを積み重ねるように、慎重に時間を過ごす家族たち。しかし、心のほころびは隠しきれず、押さえ込んできたそれぞれの気持ちが少しずつ溢れ出すのでした。



注目したのはスーザン・サランドン演じる母・リリーと長女ジェニファー(ケイト・ウィンスレット)、次女アナ(ミア・ワシコウスカ)との関係でした。

強く賢く、おそらく子育てにも自信のあるリリーは、今までと同様に今回の決断を受け入れるよう求めます。しかし「強くなれ、自由に生きなさい」と育てられた娘たちであっても、心が揺れないことはないはず。一方で二人はこれまで自分のために全力を尽くしてくれた母の望みに応えたい気持ちはあるでしょう。娘たちはどう決断はするか、そして結果は今後の二人にどんな影響をもたらすのか興味を惹かれるところです。 

孫にあたるジェニファーの息子・ジョナサン(アンソン・ブーン)と、リリーとのやりとりも印象的でした。リリーは孫の中に続く自分の命をみたのではないでしょうか。今はティーネイジャーのジョナサンですが、いつかあの時間が宝物になることも想像できます。 



家族だから許せることってあります。
でも家族だからこそ許せないこともあるのです。

それは稀に故人の葬儀に直面した際などに家族間で表出するものですがこの映画の場合、舞台は生前です。その点においても、ほとんど誰もが体験したことない世界が描かれた作品といってもよいかも知れません。

シーンの一つ一つに、自分だったらどうするだろう?と立ち止まって考えずにいられない美しい映画でした。

(文:山本陽子)

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