『咲-Saki-』は漫画原作実写映画の大きな指針となる美少女麻雀映画の快作!

■「キネマニア共和国」

(C)小林立/SQUARE ENIX・「咲」プロジェクト

漫画やアニメを原作とする実写映画の数は増え続けていく一方ですが、原作ファンが真に喜ぶに足るものがいくつあるかは、まあ皆さんご承知の通り。

そんな折、実に実験的かつ野心的でユニークな効果を醸し出している快作を見ました……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.201》

高校生麻雀バトル映画『咲-Saki-』です!

麻雀をスポーツ競技とみなした世界観での美少女20人の熾烈なバトル!

『咲-Saki-』は言うまでもなく小林立の人気コミックを原作にしたもので、TVアニメ化もされ、こちらも好評を博しています。

これまで麻雀を題材にした漫画や小説、映画といえば、どちらかといえばギャンブル性やちょっとブラックな世界を垣間見せるものが多く、その伝での映画の代表格は和田誠監督の『麻雀放浪記』かと思われます。

しかし『咲-Saki-』の中では、麻雀はあくまでも競技であり、あたかもスポーツのごとく学校に麻雀部が存在し、他校と競い合いながら己の腕を磨いていく。そんな世界観なのです。
(ああ、まるでガルパンとも共通するものがある!)

また本作は最初に全4話のテレビシリーズを作り、そこで舞台となる長野県の清澄高校麻雀部に咲が入部する羽目になり、仲間たちと交流の輪を深めていく姿を描き、その上で今回の映画版を制作。

映画版では、全国高校生麻雀大会長野県決勝大会における清澄高校を始め各強豪校との激烈なバトルを描いていきます。

もちろん先にTVシリーズを見ているば、清澄高校麻雀部の面々の細かいキャラ設定などわかりやすくはなるでしょうが、本作の主眼は各校5人ずつ、総勢20人の美少女が繰り広げる麻雀バトルなので、TV未見のイチゲンさんでも十分楽しめるものになっています。

徹底的に原作の世界観を醸し出させるキャストたちそれぞれの存在感!

では、本作のどこが実験的なのかというと、漫画原作の実写映画化は原作に寄り添うにしても突き放すにしても、大抵は作り手独自の感性が如実に表れ、それゆえに賛否の嵐が吹き荒れてしまうわけです。

しかし本作の場合、まずは原作のキャラクターのイメージに合う女優をピックアップし、原作と同じ空気感を見事に醸し出すことに成功しているのです。

さすがに20人の若手女優たちすべての演技が達者であるとは言い切れませんが、その域を超えて原作の役になりきろうとする気迫に関しては、名優顔負けのものがあると断言できます。

特にヒロイン咲を演じる浜辺美波は、本当に原作から飛び出してきたかのような存在感で、天才的な麻雀の腕の持ち主であるかのような牌さばきもお見事ですが、それ以上に、とにもかくにもそんな彼女のアップを真正面から捉えたときの線対象となる画の力強さは比類ないほどで、まさにこの映画のために生まれてきた女優ではないかと、感嘆せずにはいられません。

また原作が漫画の場合、どうしても漫画チックなキャラも登場し、台詞廻しひとつとってもおよそ生身の人間が使わなさそうなものになりがちですが、本作はあえてそれを原作通りに言わせており、それが上手くいっているのも驚異的な事象です。

その意味でも、清澄高校麻雀部のアニメチック・キャラ優希(言葉尻に必ず「~だじぇ」といった言い回しをする)を何ら違和感なく演じきった廣田あいかは、その代表格として讃えたいところです。

要は原作に対していかにリアルに対応していくか、そのことによって現実のリアルとは一線を画した本作独自のリアリズムが生まれているのです。

さらにこの作品、テレビアニメ版の声優たちの声質まで再現させているかのような節もうかがわれ、しかもそれは単なる物真似ではなく、彼女たち自身の個性としてきちんと輝くように演出がなされています。

とにかくとことん漫画とアニメに近づける演出を施し、しかもそこから実写ならではの妙味を体感させてくれるのが、小沼雄一監督です。

これまでにも『nude』(10)『スクールガール・コンプレックス〜放送部篇〜』(13)などで知られる気鋭の監督である彼は、今回はあたかもヨーロッパ映画のようなしらじらとした画のトーンを一貫させながら、麻雀シーンのダイナミズムと、少女たちの交流を不思議なエロティシズムで包み込みながら(まるでデヴィッド・ハミルトンのごとき世界観の中で、美少女たちが麻雀をやっているかのよう!)、結果として原作に相応しながら自身の持ち味を発揮するといった離れ業を披露してくれています。

いまどきのキラキラ映画とはどこか一線を画し、また単なるスポーツ映画の域をも優に超えた『咲-Saki-』は、今後の漫画&アニメ原作映画のひとつの大きな指針となるべき存在でしょう。

ちなみに私、麻雀のルールも何も知りません。しかし、全篇まったく飽きることなくスリリングかつエモーショナルな面持ちで堪能することができました。

本作が「映画」そのものとして屹立している見事な証です。

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(文:増當竜也)

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    ライタープロフィール

    増當竜也

    増當竜也

    増當竜也 Tatsuya Masutou

    鹿児島県出身。映画文筆。

    朝日ソノラマ『宇宙船』『獅子王』、キネマ旬報社『キネマ旬報』編集部を経て、フリーの映画文筆業に就く。

    取材書に『十五人の黒澤明』(ぴあ刊)、『特撮映画美術監督・井上泰幸』(キネマ旬報社刊)など。

    編集書に『40/300 その画、音、人』(佐藤勝・著)『神(ゴジラ)を放った男/映画製作者・田中友幸』(田中文雄・著)『日記』(中井貴一・著)『日記2』(中井貴一・著)『キネ旬ムック/竹中直人の小宇宙』『同/忠臣蔵映画の世界』『同/戦争映画大作戦』(以上、キネマ旬報社刊)

    その他、パンフレットやBD&DVDライナーノートへの寄稿、取材など多数。

    ノヴェライズ執筆に『狐怪談』『君に捧げる初恋』『4400』サードシーズン(以上、竹書房刊)
    現在『キネマ旬報』誌に国産アニメーション映画新作すべてのレビューをめざす『戯画日誌』、『衛星劇場プログラムガイド』誌に、毎月オンエアされる松竹映画名作群の見どころなどを紹介する『シネマde温故知新』を連載中。

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