『三度目の殺人』、真実とはなんでしょう?

三度目の殺人

(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

こんにちは、八雲ふみねです。
今回ご紹介するのは、9月9日から公開される『三度目の殺人』。

八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.121

殺人の前科がある三隅が解雇された工場の社長を殺害、火をつけた容疑で起訴された。
犯行も自供し、死刑はほぼ確実。
そんな彼の弁護を担当することになったのは、“勝つ”ことにこだわる弁護士、重盛。
無期懲役に持ち込むために調査を進めるうちに、重盛の中にある違和感が生まれていく…。

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是枝裕和監督が新境地に挑む、法廷心理サスペンス

これまで日本の家族の在り方を描き続けてきた是枝裕和監督が最新作に選んだのは、法廷劇。

弁護にあたり、裁判で勝つためには真実を知る必要はないと考えている主人公が、犯人と交流していくうちに事件の真実を知りたいと思うようになる。その心の動きをサスペンスフルに描き出しています。

本作の制作にあたり、弁護士や検事たちに入念な取材を行い、さらには劇中の裁判シーンさながら、弁護側、検事側、裁判官、犯人、証人役に分かれて、模擬裁判を実施。

その模擬裁判から出てきたリアルな反応や行動、言動までも脚本に落とし込んだとのこと。
元々ドキュメンタリー番組のディレクター出身の、是枝監督ならではの鋭い視点が光ります。

一方で、濃い陰影を落としたショットや生々しいほどのクローズアップを効果的に使用することで圧倒的な緊迫感を生み出し、観客の目と心をつかんで離さない作品となりました。

本作は第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に正式出品。現地時間5日の公式上映され、上映終了後は6分間に及ぶスタンディングオベーションが続きました。

日本での公開に先駆け、海外での反応は上々のようです。

(C)2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ

思わずスクリーンを覗き込みたくなる?!
俳優たちの繊細な表情がよりミステリアスに作品世界を盛り上げる。

見どころは何をおいても、弁護士・重盛と殺人犯・三隅のやり取り。

重盛を演じるのは、是枝監督とは『そして父になる』以来2度目のタッグとなる福山雅治。その重盛と対峙する三隅を演じるのは、これが是枝組初参加となる役所広司。二人が拘置所の面会室でアクリル板越しに向かい合うシーンは日本映画史上屈指とも呼べる緊迫感に満ちています。

とにかく圧巻なのが、役所広司の驚異的な演技力。
真相が分からず接見の度にコロコロと証言を変え、一体彼は天使なのか悪魔なのか、その本当の“顔”が読めず、思わずスクリーンに映る役所広司の顔を覗き込んで真実を確認したい衝動に駆られるほど。

三隅とはどんな人間なのか、何が目的なのか。
そもそも、この三隅という男は本当に犯罪を犯したのか…。
重盛が三隅に翻弄されるように、観客までも翻弄する怪演です。

そんな役所広司の芝居を受ける福山雅治の表情も、実に繊細。
三隅との接見で自らの“方針”さえ見失いそうになる微妙な心の揺れを、見事に表現しています。

そして表情と言えば、殺害された社長の娘・咲江役の広瀬すずの哀しみを宿した瞳が魅力的。
事件について語れば語るほど、登場人物それぞれの視点があり、なかなか真相にたどり着くことが出来ない。
そんな全編に漂う不気味さが、俳優たちの演技からジワジワと伝わってきます。

是枝作品に見る“父親の不在”について再考する

本作を観ながら思い出したのが、昨年の東京国際映画祭、細田守監督特集での出来事。

細田監督と是枝裕和監督のトークセッションで、細田監督がお互いの作品の共通点に「父親の不在」を挙げたのです。なるほど確かに、細田監督の『おおかみこどもの雨と雪』しかり是枝監督の『海街diary』『そして父になる』しかり、父親はいなかったり、存在が希薄だったり。

それぞれの作品世界から幼少期の体験まで語り合う両監督のお話を、私も司会を務めながらとても興味深く伺ったものです。

そういった視点も含めて『三度目の殺人』に触れてみると…。
接見での会話から垣間見える重盛、三隅の“父親”としての姿。
そして咲江が発する言葉の端々から伝わる“家族”の形。

“人は人を裁けるのか”という大テーマが重くのしかかってくると同時に、これまでも描き続けてきた“家族”というテーマが底辺にしっかりと流れていることに気付かされます。

是枝裕和監督の新境地、是非スクリーンでご堪能下さい。

作品情報

三度目の殺人
2017年9月9日からTOHOシネマズスカラ座ほか全国ロードショー
監督・脚本:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功 ほか
©2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ
公式サイト http://gaga.ne.jp/sandome/

(文:八雲ふみね)

八雲ふみね fumine yakumo

八雲ふみね大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
「シネマズ by 松竹」では、ティーチイン試写会シリーズのナビゲーターも務めている。

八雲ふみね公式サイト yakumox.com

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