『シークレット・ジョブ』動物園を着ぐるみで再建?単なるコメディじゃない「3つ」の見どころ!

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第17回:『シークレット・ジョブ』

Amazonプライム・ビデオで配信中の作品から、普段はオススメの韓国映画を紹介しているこの連載ですが、今回も趣向を変えて、7月24日公開の新作映画『シークレット・ジョブ』をご紹介したいと思います。

日本版タイトルやポスターデザインからは、先に公開された『エクストリーム・ジョブ』のような内容を連想する本作。

経営不振の動物園を立て直すため、なんと人間が着ぐるみを着て動物に扮装する! というストーリーからは、もはや面白そうな予感しかしないのですが、気になるその内容と出来は、果たしてどのようなものなのでしょうか?

ストーリー

有名法律事務所の見習い弁護士テス(アン・ジェホン)に訪れた、一世一代の大チャンス。それは廃業寸前で企業に売却された”ドンサンパーク動物園”の経営を、たった3ヶ月で立て直すことだった。
ところが現地に着いたテスを待っていたのは、客を呼べる動物がほとんど残っていない空の檻と、たった4人のスタッフたち。苦肉の策として新園長のテスが考え出したのが、着ぐるみを着て動物に扮したスタッフたちが檻に入るという奇想天外な計画だった。ホッキョクグマ、ゴリラ、ライオン、ナマケモノの着ぐるみに身を包んだ動物園のスタッフたちは、危ない橋を渡りながらもなんとか観客の目を欺くことに成功する。
そんな中、のどが渇いたテスはホッキョクグマに扮していることも忘れ、思わず観客の前でコーラを飲んでしまうのだが…。

予告編

見どころ1:動物園の檻の中にいるのは着ぐるみの人間!?

倒産した”ドンサンパーク動物園”を、わずか1ウォンで買収したイギリスの投資ファンド、ガブリエル。

動物園の来場者を増やして経営再建すれば高値で売却できるため、次の転売先を決めるまでの3ヶ月間だけ経営を維持できればよい。そう言われて経営の全権を任されたテスですが、現地に着いた彼が見たものは、動物のいない空の檻と次々にトラックで運び出されていく、トラやキリンなどの大型動物の姿!

客を呼べる動物は借金返済のために全て処分され、残ったのはミーアキャットやアライグマといった小動物だけという絶望的な状態で、3ヶ月の間、どうやって動物園の営業を維持するのか?

必要な動物は新たに購入すればいいじゃないか、そうテスは考えるのですが、実はワシントン条約の存在により、簡単には動物を購入できないということが分かってきます。

例えば、ライオンやゾウは絶滅危惧種のため、他の動物園から譲り受けるにしても繁殖や研究目的といった特別な理由による許可が必要で、環境庁に必要書類を提出して売り手が現れれば購入できるという、厳しい現実が立ちはだかることになるのです。

順調に行けば3ヶ月後にトラの一匹くらいは買えるだろう、という前園長の説明に、それでは期限に間に合わないと途方にくれるテス。

ところが、夜の動物園で目にした”ある光景”と過去の動物園のイベント写真から、テスは従業員が着ぐるみで動物に扮装する! という、トンでもないアイディアを思いつくことに。

絶対にお客さんにバレる! そんなスタッフからの猛反対に対して、3ヶ月後には本物の動物を連れて来るから、というテスの説得もあって、ついに前代未聞の”シークレット・ジョブ”が展開することになるのですが…。

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やはり本作の最大の見どころは、果たして着ぐるみの動物でお客さんをダマせるのか? この一点に尽きます。

この非常に高いハードルを、いかに観客に納得させるか? この部分に対する配慮や説明が、本作では実によく考えられているのです。

例えば、海外のドッキリ番組で着ぐるみの動物に騙される映像を見せながら、動物園には本物しかいないと皆信じ込んでいる、そうスタッフを説得するテスの姿に始まって、最も重要な「本物の動物に見える精巧な着ぐるみを、どうやって調達するのか?」という問題にも、ちゃんと解決法が用意されているのは見事!

加えて、動物の鳴き声や着ぐるみに入っている間の水分補給の問題など、細かい部分までちゃんと設定が施されているので、観る側が安心して物語に集中できるのです。

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こうして完成した、ゴリラ、ナマケモノ、ライオン、ホッキョクグマの計4体の着ぐるみ動物を檻に入れて、ついに動物園はリニューアルオープンの日を迎えるのですが、果たしてこの作戦が成功して動物園は再建できるのか?

実は、この4体以外にキリンの着ぐるみも登場するのですが、その意外な使われ方と事態の結末は、ぜひ劇場で!

見どころ2:あの俳優が意外な役柄で登場!

従業員がほとんど辞めてしまった上に、肝心の動物たちも処分された廃業寸前の動物園に、最後まで残った4人のスタッフたち。開園当初から動物園を守ってきた前園長や、彼氏とのLINEに夢中でスマホが手放せない女性飼育係のヘギョンなど、自分たちの居場所と残された動物たちを守るため、新園長テスの無謀な計画に協力する彼らの個性的なキャラクターも、本作成功の大きな要因となっています。

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中でも注目して頂きたいのが、この連載の初回でご紹介した『少女は悪魔を待ちわびて』の凶悪な殺人鬼役で、観客に強烈な印象を残したキム・ソンオが、全くイメージの違うコメディ演技を見せてくれる点!

例えば、リアルな着ぐるみが完成する前に、ちゃんと各人が担当する動物の動きを練習する様子も笑わせるのですが、ここでもキム・ソンオ演じる飼育係キムの普段の動きが、自然とゴリラに似ているという描写で大いに楽しませてくれるのです。

実は本作以外にも、オールスターキャストのパニック映画『ザ・タワー 超高層ビル大火災』や、ヒョンビン主演のドラマ『シークレット・ガーデン』での役柄など、コメディ演技も得意とするキム・ソンオだけに、『少女は悪魔を待ちわびて』や『アジョシ』の悪役イメージが強い方は、きっとそのギャップに驚かれるのでは?

彼氏にフラれたヘギョンのためにキムが取った男気あふれる行動は、ぜひご自分の目でご確認を!

見どころ3:この映画が本当に描きたかったものとは?

弁護士事務所の実習生として働くテスは、動物園を再建させれば正式な弁護士として採用されるため、従業員が着ぐるみで動物に扮するという、トンでもないアイディアで危機を乗り切ろうとします。

苦肉の策で営業を再開した動物園ですが、平日の入園者数が以前よりも減るなど業績は悪化。しかし、あるアクシデントをきっかけにホッキョクグマがSNS上で話題となり、次第に来園者数も増加するのですが…。

動物園の動物を着ぐるみで代用するという突飛な設定以外にも、残されたスタッフと協力して動物園の危機に立ち向かうテスの人間的成長や、創立当初から頑張ってきた前園長やスタッフたちとの間に芽生える絆など、人間ドラマの部分でもよく出来ている本作。

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それだけに、着ぐるみの秘密が世間にバレるかどうか? や、動物園の危機を一発逆転で立て直す! といった痛快な内容を求めて鑑賞に臨むと、期待と違ったり物足りなさを感じる方も多いかもしれません。

確かに”着ぐるみ動物”という突飛なアイディアで観客を引きつけて、思わず客の声に反応したり、着ぐるみの中で体がかゆくてたまらないといった、スタッフたちの悪戦苦闘ぶりで笑わせてくれるのですが、実は人間の都合で動物を売買したり檻に閉じ込めてしまうことや、環境破壊を招くリゾート開発の是非、更には利益を優先する大企業の存在など、現代社会が抱える問題を描いている本作。

実はこの映画で気になったのが、檻の中にコーラを投げ込んだり動物をからかうといった、お客さんたちの非常識とも取れる行動が登場する点でした。実際、こうした描写に嫌悪感を抱いたという感想もネットで散見できたのですが、実はこの部分にこそ、本作が描こうとしたテーマが隠されているのです。

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例えば、大型動物で唯一動物園に残されたホッキョクグマのクロ鼻と獣医のハン先生との関係性や、クロ鼻が動物園の生活で精神的に不安定になっている描写など、動物園の動物たちが体験しているストレスを、人間側が身をもって知るための”着ぐるみ”という設定であることを踏まえれば、突飛な設定に頼らない本作の内容も、きっと理解して頂けるのではないでしょうか。

このように視点を変えて鑑賞することで、実は人間たちの方が檻の中にいて、ガラス越しにホッキョクグマから見られているのでは? そんなラストの問題提起に気付かされる作品なので、全力でオススメします!

最後に

倒産した動物園を再建させるため、新園長として送り込まれた弁護士が考えた起死回生のアイディア。それは檻の中の動物を着ぐるみで代用するという、あまりにも無謀な計画だった!

このストーリーだけでも十分に面白そうですが、同時に「この設定で大丈夫か?」、そんな不安も捨てきれずに鑑賞に臨んだ、この『シークレット・ジョブ』。

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確かに、着ぐるみ動物で営業再開してからの描写が予想外に長く、そのぶん主人公や動物園のスタッフ、更には敵側の大企業など、肝心な人間側の背景やキャラクターの描きこみが十分でないため、全体的に平坦で盛り上がりに欠ける印象が強いのも事実。

ただ前述した通り、着ぐるみ偽装がバレるかどうか? のサスペンスや、動物園の危機を救う大逆転の展開といったエンタメ要素よりも、動物愛護や人間の利益目的による環境破壊といった現実的な問題を色濃く反映した内容が、鑑賞前の不安を見事に解消してくれるのです。

寝そべっているだけで本物に見えるライオンや、動かないのが普通なナケモノに比べて、演技力が必要とされるゴリラやホッキョクグマなど、もしも自分が入るならどの動物がいいか? そんな楽しみ方もオススメな、この『シークレット・ジョブ』。

奇抜な設定に頼った単なるコメディには終わらない、作品に込められた動物愛護のメッセージを、ぜひ感じ取って頂ければと思います。

(文:滝口アキラ)

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